打渡状(読み)ウチワタシジョウ

デジタル大辞泉 「打渡状」の意味・読み・例文・類語

うちわたし‐じょう〔‐ジヤウ〕【打渡状】

中世所領争いで、施行状しぎょうじょう遵行状じゅんぎょうじょうを受けた守護代代官が、所領所職などを正当な当事者に引き渡す際に交付した文書渡状

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精選版 日本国語大辞典 「打渡状」の意味・読み・例文・類語

うちわたし‐じょう‥ジャウ【打渡状】

  1. 〘 名詞 〙 室町時代の武家文書。管領の命をうけた守護が派遣する遵行使(じゅんぎょうし)が、所領所職を正当な知行人に引き渡すときに交付する文書。渡状。打渡。→遵行
    1. [初出の実例]「丹後国河上本庄地頭領家中分事、〈略〉仍打渡状如件」(出典:京都帝国大学文書‐観応元年(1350)七月二日・大江頼広等打渡状)

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改訂新版 世界大百科事典 「打渡状」の意味・わかりやすい解説

打渡状 (うちわたしじょう)

渡状ともいう。南北朝時代,室町時代の武家文書の一つ。幕府より発せられる命令のうち所領,所職に関するものは多くの場合管領が施行状により諸国の守護へ伝え,これをうけた守護は遵行状(じゆんぎようじよう)を作成し守護代などに下付する。守護代がこれらの文書にもとづいて文書を作り現地の当事者に渡す文書が打渡状である。文末を〈仍渡状如件〉と結ぶのが普通であり,文中に〈何月何日の御遵行の旨に任せ〉のような文章がみえることが多い。宛書を書くものと書かぬものとがあり,差出書も1名のときと2名の連署のときがある。打渡状をうけた者は請取状(うけとりじよう)を作成して提出する。打渡状の一例をあげておく。〈東寺雑掌申近江国三村庄嶋郷寺用米事,任去月廿九日御教書,同御施行之旨,市次郎相共莅彼所,打渡下地於東寺雑掌候畢,仍渡之状如件,至徳二年(1385)十一月六日 昌光(花押)沙弥了参(花押)〉(《東寺百合文書》ほ-63)。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「打渡状」の意味・わかりやすい解説

打渡状
うちわたしじょう

中世とくに室町時代の武家文書。渡状ともいう。所領の相論(そうろん)や寄進に際し、施行(しぎょう)状、遵行(じゅんぎょう)状による上からの命令を受けて、所領所職を正当な、または当該の知行(ちぎょう)人に引き渡す旨を記載した文書。普通は幕府管領(かんれい)が守護に施行状を出し、守護は守護代に遵行状を出すから、打渡状は守護代、または、さらに守護代の遵行状を受けた守護使が、最終的に当事者に伝達するために出す。

[久留島典子]

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百科事典マイペディア 「打渡状」の意味・わかりやすい解説

打渡状【うちわたしじょう】

南北朝・室町時代の武家文書の一。室町幕府により裁許された所領相論や寄進・充行(あておこない)など土地にかかわる処分は,幕府から守護・守護代らを通じ,さらに現地へ派遣される使者へと施行状(しぎょうじょう)・遵行状(じゅんぎょうじょう)をもって命じられ,使者により土地の権利者に実際に現地(下地)が引き渡された。この打渡しの時,使者から土地の権利者もしくはその代理人に発給されたのが打渡状で,渡状(わたしじょう)ともいう。打渡状を与えられた者は使者に請取状を提出,これにより遵行の手続きが完了した。なお打渡状・遵行状は幕府の処分状を含め,一連の文書として権利者の手元に保存される例が多い。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「打渡状」の意味・わかりやすい解説

打渡状
うちわたしじょう

中世,特に室町時代,相論の結果,領地や職 (しき) を当事者の一方に引渡すよう守護から命令を受けた守護代や代官が,これを引渡した旨を報告するために作成した文書。単に渡状ともいう。

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