(読み)ハツ

デジタル大辞泉 「撥」の意味・読み・例文・類語

はつ【撥】[漢字項目]

[音]ハツ(漢) バチ(慣) [訓]はねる
〈ハツ〉
はねる。はねかえす。「撥音撥弦楽器挑撥反撥
治める。「撥乱
〈バチ〉楽器の弦をはねて鳴らす具。「撥音ばちおと
[補説]1は「」を代用字とすることがある。
難読撥条ばね撥条ぜんまい

ばち【×撥/×桴/×枹】

(撥)琵琶三味線などの弦をはじいて鳴らす、へら状の道具。琵琶の撥は多く黄楊つげ製、三味線の撥は象牙水牛の角などで作り、形は流派や使用目的により異なる。
(桴・枹)太鼓銅鑼どらなどの打楽器類を打ち鳴らす棒状の道具。舞楽の舞具として用いることもある。

ばち【撥】[漢字項目]

はつ

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精選版 日本国語大辞典 「撥」の意味・読み・例文・類語

ばち【撥・桴・枹】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ( 撥 ) 琵琶・三味線などの弦をはじいて音を出させる、へら状の道具。基部は狭くすぼまって厚く、弦をはじく先端は広く扁平で、イチョウの葉の形をしたもの。琵琶の撥は木製、三味線の撥は木・象牙・水牛のほかプラスチック製もある。
    1. [初出の実例]「たをやかにつかひなしたるばちのもてなしねをきくよりも」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若菜下)
    2. 「琵琶は、ばちのひらなれば、ばちひらの反りて、びはの名となれる也」(出典:名語記(1275)六)
  3. ( 桴・枹 ) 太鼓・銅鑼(どら)などの打楽器類を打って音を出させる、棒状の道具。ぶち。〔十巻本和名抄(934頃)〕
    1. [初出の実例]「教を以て桴(バチ)と為し、理を以て皷と為し」(出典:法華義疏長保四年点(1002))
  4. ( 撥・桴 ) 雅楽で、慣例として太鼓・琵琶を奏する道具と、舞楽「胡飲酒(こんじゅ)」の舞人の持物。また、羯鼓・三鼓・鉦鼓を奏する道具と、舞楽「陵王」「納曾利」などの舞人の持物。前者には「撥」を、後者には「桴」をあてる。〔教訓抄(1233)〕
  5. ( 形状が似ているところからいう ) 船ののみ打ち、すなわち船体の棚板などの結合部に入れる充填材を打ち込む道具で、鉄製のもの。竹製のものはのみ打竹という。〔和漢船用集(1766)〕

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普及版 字通 「撥」の読み・字形・画数・意味


15画

[字音] ハツ・ハチ
[字訓] おさめる・はねる・あばく・ばち

[説文解字]

[字形] 形声
声符は發(発)(はつ)。發は攻撃をはじめる意がある。〔説文〕十二上に「治むるなり」とあり、〔公羊伝、哀十四年〕「亂世を撥(をさ)めて、(こ)れを正に反す」とは「撥乱」、乱を攻めて正に反す意。〔子、正論〕「撥弓曲矢を以てしては、に中(あ)つること能はず」、〔礼記、曲礼上〕「衣は撥(は)ぬること毋(なか)れ」は、形の正しくないことをいう。

[訓義]
1. おさめる、みだれをなおす。
2. はねる、はねかえる、そる。
3. あばく、ひらく、おこす、かきたてる。
4. ばち、ばちでひく、かきならす。
5. はらう、のぞく、たちきる、やぶれる。

[古辞書の訓]
〔名義抄〕撥 ヲサム・ハラフ・スツ・ノゾク・カカグ・コトハル・オコク・オサフ・ヒラク・ハジク・マネク・アバク・シヅム・ヤブル・タフル 〔字鏡集〕撥 ヒラク・シヅム・ハシル・マネク・タフル・トフル・コトハル・ヲサム・カカグ・モト・ツクロフ・ウゴカス・タク・ノゾク・アバク・ヲシハル・スツ・カク

[熟語]
撥衣・撥運・撥捐・撥棄・撥給・撥爾・撥車・撥充・撥条・撥食・撥正・撥兌・撥隊・撥置・撥剔・撥頭・撥派・撥撥・撥無・撥平・撥兵・撥補・撥悶・撥剌・撥乱・撥・撥・撥炉・撥
[下接語]
桓撥・収撥・振撥・挑撥・破撥・擺撥・乱撥・弄撥

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「撥」の意味・わかりやすい解説


ばち

日本の楽器の付属品名。撥弦楽器の弦を鳴らす道具で,手に握って用いるもの。打楽器の打棒も同じく「ばち」というが,「桴」の字をあてて区別する。また洋楽器ではプレクトラムと総称するのに対して,日本では指にはめたり,指先で持つ小型の義甲を「爪」として区別する。撥は主として琵琶と三味線に用いる。琵琶の撥の材質はおもにツゲで,一般に薄く先端が大きく開いていて,握りの部分が細く,握りの根もとがほぼ直角に開きとがっているが,琵琶の種類,流派によって形状,大きさなどに異同がある。三味線の撥は,琵琶からの進化で,材質もツゲのほか,カシ,象牙,鼈甲,水牛の角,プラスチックなどがあるが,全部が同材質でなく,先端にだけ良質のものを用いたりもする。形状はだいたい一致し,撥先は大きく開いて薄く,才尻 (根もと) に向って次第に細く厚くなり,最後は角棒状となるが,やはり三味線の種類や流派により大小,軽重に差があり,重くするために才尻に鉛を入れたものもある。義太夫節用が最も重く,地歌では撥先直前まで厚く,撥先に向って急に段がついて薄くなっているような津山撥,九州撥なども工夫されている。新内節の高音 (たかね。上調子) 用には極端に小型の小撥を使用する。

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