検非違使庁(けびいしちよう)で雑用に使われた下部(しもべ)。元来は罪人の釈放を意味したが,使庁が彼らを用いたことからこの名称がおこった。検非違使庁の官人の指揮に従って,犯人の追捕(ついぶ),囚禁,流人(るにん)の護送,死体の処理などに従事した。賀茂の祭に華美な服装で行列に加わり,新制で過差(過度に華美なこと)禁断の対象になったりしたが,《江談抄》によれば放免の華美な服装は贓物(ぞうぶつ)(盗品)を着用したものであった。絵巻物には,護送にあたる放免は派手な狩衣を着て異形の杖をもった姿で描かれている。放免の収入源としては贓物もあるが,南北朝期には紺年預得分料足が与えられていたことが《師守記》にみえる。室町幕府の侍所(さむらいどころ)に検非違使庁の機能が移るとともに放免もなくなった。
執筆者:清田 善樹
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検非違使庁(けびいしのちょう)の下部(しもべ)で、放免された罪人を追捕(ついぶ)、囚禁(しゅうきん)の事に従わしめた。罪人あがりで犯罪について知悉(ちしつ)しており、追捕にあたり有用であった。しかし、放免自ら罪を犯すことが珍しくなく、『小右記(しょうゆうき)』長和(ちょうわ)3年(1014)4月21日条に、狼藉(ろうぜき)を行い、看督長(かどのおさ)らとともに京中を横行し市女笠(いちめがさ)を切るなどの行為があったとみえ、『長秋記(ちょうしゅうき)』大治(だいじ)4年(1129)12月6日条には、追捕の間に放免が東大寺聖宝僧正五師子(ごしし)の如意(にょい)を盗取したとある。『今昔(こんじゃく)物語』にも、強盗などの悪事を働く話がみえる。賀茂祭のときは美服をつけて事に従ったが、『江談抄(ごうだんしょう)』によれば、贓物(ぞうぶつ)を用いたという。
[森田 悌]
『谷森饒男著『検非違使ヲ中心トシタル平安時代ノ警察状態』(1921・私家版/復刻版・1980・柏書房)』
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…したがって,下部の一般的な職務内容は,野盗・山賊等の追跡・逮捕,獄囚に対する拷訊,流罪人の配所への護送などであった。この下部をその職務の性格によって分類すると,走下部(はしりしもべ)と放免の2種類になる。走下部とは,いわゆる走使いのことであり,放免とは,罪人の罪をゆるして,その代償に犯罪人の探索や密告収集活動に従事させたものである。…
※「放免」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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