東京金融市場(読み)とうきょうきんゆうしじょう

改訂新版 世界大百科事典 「東京金融市場」の意味・わかりやすい解説

東京金融市場 (とうきょうきんゆうしじょう)

金融市場とは,通貨や資金が金融取引によって流通する場である。そこでは短期・長期の金融資産が取引され,金融資産ごとに部分市場が成り立つ。日本の場合,金融取引のうち相対取引(預金,貸出し),とくにリテールバンキングは広く全国で行われるが,ホールセール・バンキングや,市場取引(価格が競争的に決まる,狭義の金融市場)は,大半が東京に集中している。

日本の金融制度は明治以来間接金融すなわち銀行優位のもとに築かれたうえ,第2次大戦後は久しく人為的低金利政策がとられたため,狭義の金融市場は発達が遅れた。短期市場はインターバンク(銀行間)の資金需給調節の取引が中心で,伝統的なコール市場のほか,昭和40年代後半に手形市場手形売買市場),ドルコール市場の創設など多様化が図られた。しかし内外の個人投資家,機関投資家も参加できる公開市場は未発達であった。長期の証券が取引される資本市場も昭和40年代まで補完的存在で,とくに公社債市場は未成熟であった。しかし金融市場は昭和50年代に入って,発展契機となる変化に直面した。第1に,国債流通市場という自由金利の公開市場が急拡大した。第2に,金融資産の蓄積が進み,個人投資家,機関投資家の市場参加と金利選好が強まった。第3に,経済取引の国際化,変動為替相場制移行などから,国際資金移動が著しくなった。こうした動きに促されて,昭和50年代前半から金利規制の緩和,市場の多様化,公開市場の育成など,市場の整備が進められた(コール・レート自由化,現先取引(現先市場)の公認CD創設,国債発行条件の弾力化,中期国債の入札発行)。東京市場では,金利裁定取引も活発となり,漸次市場らしい機能を備えることとなった。

 国際金融取引面では,1979年非居住者の現先,CD取引への参加が認められ,また80年には新外為法(外国為替及び外国貿易管理法)の施行により対外取引が原則自由に改められた。こうした制度の整備により内外資金移動には一段と拍車がかかった。昭和50年代後半から,日本の資本輸出力の強化を背景に円建外債の発行,円建てシンジケート・ローンの組成が盛んとなり,また日本経済に対する長期的信認から対日証券投資も本格化し,東京市場は資金調達・運用の国際金融市場の一センターとして登場することとなった。しかし金融市場の本格的発展という点からみると,80年代前半にはさまざまの問題を抱えていたが,86年オフショア・マーケット創設をはじめ,預金金利の自由化,短期金融市場の整備(コマーシャル・ペーパーの導入と有価証券としての位置づけ,短期国債市場の拡充,インターバンク市場の整備など),米ドル・日本円通貨先物取引の開始などが90年代前半までになされた。こうした状況のもとで海外から東京金融資本市場のいっそうの市場開放の要求が強まっており,円の国際化推進,業態間の垣根や有担保原則の見直しなど,金融システムの枠組みにふれる事項が問われている。これらの点について基本的には,金融市場の効率化は,国際的相互依存の強まるなかで,日本経済の活性化のため必須の課題であるという視点から取り組むことが必要である。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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