柏崎(読み)カシワザキ

デジタル大辞泉 「柏崎」の意味・読み・例文・類語

かしわざき〔かしはざき〕【柏崎】

新潟県南西部の市。日本海に面し、宿場町として発展。明治時代、石油を産出し、工業が発達。人口9.1万(2010)。
謡曲。四番目物。柏崎の領主の妻が夫の死と一子花若の出家を聞き、狂乱して諸国を巡り、善光寺で花若と再会する。

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精選版 日本国語大辞典 「柏崎」の意味・読み・例文・類語

かしわ‐ざきかしは‥【柏崎】

  1. [ 1 ](ぜに)の異称。
    1. [初出の実例]「青銅鳥目のおさな名を削り助六といひ文七と名乗柏崎(カシハザキ)と呼れ松風と号し〈略〉料足(とうそく)といひ御あしと名つけしは」(出典:浮世草子・新玉櫛笥(1709)三)
  2. [ 2 ]
    1. [ 一 ] 謡曲。四番目物。各流。榎並左衛門五郎原作。世阿彌改作。越後国柏崎某の妻は、行方不明になったわが子を探して狂女となり、信濃国善光寺で母子が再会する。狂女物の一つ。
    2. [ 二 ] 新潟県南西部の地名。北国街道の宿駅、縮(ちぢみ)布行商の中心地として繁栄した。明治期の油田開発を基礎に工業都市として発展。昭和一五年(一九四〇)市制。
    3. [ 三 ] 明治四年(一八七一)の廃藩置県により成立した県。越後国の西部に設置された。同六年新潟県に合併。

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改訂新版 世界大百科事典 「柏崎」の意味・わかりやすい解説

柏崎[市] (かしわざき)

新潟県中央部,日本海に臨む市。2005年5月旧柏崎市が高柳(たかやなぎ)町,西山(にしやま)町を編入して成立した。人口9万1451(2010)。

柏崎市中央部の旧市。米山(993m)北東麓にあり,柏崎平野の中心をなす商工業都市。1940年柏崎町と比角(ひすみ),大洲,枇杷島(びわじま),鯨波(くじらなみ)の4村が合体,市制。人口8万8418(2000)。市街地は鵜川の河口に臨み,4列の海岸砂丘に立地している。北陸街道の宿駅に起源をもち,中世は越後上布,青苧(あおそ)の集散地として重きをなした。近世は佐渡鉱山の金の輸送路の宿駅として,また縮(ちぢみ)行商の中心地として栄えた。近代都市としての発展は西山油田の開発とともに始まり,油田が全盛期を迎える明治中期から昭和初期にかけて精油業が急速に発達し,日本石油(現,新日本石油)の製油所,理研ピストンリング(現,リケン)の工場などが誘致された。また1897年に信越本線が開通し,1913年には越後線(柏崎~新潟)が全通した。第2次大戦後は機械工業が発展し,62年柏崎機械金属工業団地が形成され,次いで柏崎臨海工業団地,北斗機械金属工業団地が誕生した。68年発見の吉井ガス油田,東柏崎ガス油田は市に活気を与えた。北陸自動車道が開通し,近年は電気機器工業が盛んになり,95年の工業出荷額で一般機械を抜いて,市の35%を占めている。工業の発展は港の整備を促進し,71年番神岬の柏崎港が国際貿易港として開港し,木材,石油,鉱物を輸入,精製・加工して移出している。北陸自動車道のインターチェンジがある。米山とその北麓の福浦海岸福浦八景)は佐渡弥彦米山国定公園に含まれ,自然休養村,国民休養地が設けられ,また鯨波を中心とする海岸へは中越地方などから多くの海水浴客が訪れる。6月14~16日の閻魔市は馬市から始まったと伝えられるが,草花商,金魚商が集まり,市最大の年中行事である。市北部の頸城(くびき)砂丘で東京電力の原子力発電所(柏崎刈羽原子力発電所)が85年9月運転を開始した。
執筆者:

中世以降は北陸街道の宿駅として栄え,《廻国雑記》《梅花無尽蔵》に見えている。戦国期には守護上杉氏の被官,宇佐美氏によりその居城として琵琶島城が築かれた。近世初めには高田藩の刈羽郡奉行の支配所が置かれた。1681年(天和1)松平光長の改易後は一時天領となったが,その後は酒井・松平両氏の高田藩領,白河藩領,桑名藩領の飛地として大久保に置かれた柏崎陣屋の支配を受けた。桑名藩領時代の1837年(天保8)6月には生田万(よろず)の乱がおこり陣屋が襲撃されている。文化・文政期(1804-30)以降,縮行商によって町に活況を生じ,明治維新後柏崎県が置かれた。
執筆者:

柏崎市南端の旧町。旧刈羽郡所属。人口2502(2000)。東頸城(ひがしくびき)丘陵中にあり,旧柏崎市で日本海に注ぐ鯖石川上流に位置する。中心地岡野町は近世,柏崎と信州を結ぶ街道の宿場町であった。山間の棚田に依存した農山村で,農業就業者は3割強を占める。県内でも有数の豪雪地のため出稼ぎが多い。過疎化も著しく,1960-80年に人口は半減した。1972年に柏崎市と小出町(現,魚沼市)を結ぶ国道252号線の山中トンネルが完成し,無雪道路化もすすめられ,工場も進出している。近年は旧柏崎市等への通勤者が増加している。岡野町の貞観園はもと大庄屋村山家の庭園で,薬師如来像(重要文化財)など美術品も多く所蔵し,国の名勝に指定されている。

柏崎市北端の旧町。旧刈羽郡所属。人口6976(2000)。西山丘陵の南西部にあり,中心集落西山は柏崎平野北端に位置する。明治末から昭和初期にかけて,日本最大級の西山油田が全盛を極め,最盛期には国産石油の50%を占めた。油田は別山川と日本海にはさまれた砂丘地帯に分布し,1881年には町内の石地に日本石油会社が設立され,日本の近代石油業発祥の地となった。現在は天然ガスの採集が行われ,町内のみならず旧柏崎市,刈羽村の一部にも供給している。別山川沿いの内陸平野部には兼業農家が多く,八珍柿が特産。木材加工,電子部品工場が誘致されている。灌漑用の溜池ではニシキゴイの養殖も盛んである。日本海に面した石地はかつては北陸街道の宿場町で,大崎とともに海水浴でにぎわう。北陸自動車道の西山インターチェンジがあり,JR越後線,国道116号線が通じ,旧柏崎市,長岡市への通勤者も多い。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「柏崎」の意味・わかりやすい解説

柏崎(市)
かしわざき

新潟県の南西部、日本海岸にそびえる米山山麓(よねやまさんろく)にある商工業都市。1940年(昭和15)県下で第4番目に市制施行。1950年上米山村、1954年西中通(にしなかどおり)、荒浜の2村、1955年北鯖石(きたさばいし)、田尻(たじり)、高田の3村、1956年米山村、1957年中鯖石、南鯖石の2村と高浜町、1968年黒姫(くろひめ)村、1971年北条(きたじょう)町を編入して柏崎平野全域が市域となる。2005年(平成17)刈羽(かりわ)郡高柳町(たかやなぎまち)、西山町(にしやままち)を編入。JR信越本線が通じ、越後線(えちごせん)を分岐する。また国道8号、116号、252号、291号、352号、353号も走り、北陸自動車道の柏崎、米山、西山の各インターチェンジもある。中心市街は鯖石川、鵜(う)川の河口間の3列の刈羽砂丘上に広がり、中世は越後上布(じょうふ)、青苧(あおそ)の集散地であり、縮(ちぢみ)の行商で栄えた。近世は北国街道の佐渡金山の御用金輸送路にあたる宿場町として重きをなした。また桑名藩の越後領5万3000石支配のため柏崎陣屋が置かれ、その陣屋町でもあった。1871年(明治4)の廃藩置県後は柏崎県の県庁所在地として上(かみ)越後の中心をなす。面積442.03平方キロメートル、人口8万1526(2020)。

[山崎久雄]

産業

明治末期に全盛を極めた西山油田の影響で、近代は信越本線、越後線など交通上の地の利を生かして製油都市に発展、昭和初期には理研柏崎工場、日本石油などの大工場の誘致に成功して工業都市となった。第二次世界大戦後は電気機器、金属、食品、石油製品、一般機械器具などにより、県下でも上位の出荷額をあげている。他に先駆けて中小企業の機械金属工業団地の造成に成功し、また柏崎港の築港に力を注いで、中越の貿易港として発展した。北西の荒浜海岸に東京電力の柏崎刈羽原子力発電所がある。

[山崎久雄]

観光・文化

市の南西岸は福浦(ふくうら)八景とよばれる景勝地。佐渡弥彦米山国定公園(さどやひこよねやまこくていこうえん)に指定され、米山峠越えの国道8号の改修工事によって米山大橋などの観光スポットも整備された。砂丘浜通りには県下有数の体育施設と緑地公園をもち、番神(ばんじん)岬から米山海岸には鯨波(くじらなみ)、青海川(おうみがわ)、笠島(かさしま)などの海水浴場が並び、番神堂は日蓮(にちれん)遺跡としても有名。砂丘浜東端には柏崎温泉があり、そのほか、国指定重要文化財の観音(かんのん)堂を有する大泉寺(だいせんじ)もある。年中行事では7月の「ぎおん柏崎まつり」と、9月の第2日曜日に現地公開される国指定重要無形民俗文化財の綾子舞(あやこまい)が知られる。

[山崎久雄]

『笹川芳三著『柏崎百年』(1969・柏崎週報社)』『新沢佳大他編『柏崎編年史』(1970・柏崎市)』



柏崎
かしわざき

能の曲目。四番目物。五流現行曲。狂女物屈指の大曲。難曲でもある。越後(えちご)国(新潟県)柏崎の領主の妻(シテ)は、臣下の者(ワキ)から、鎌倉での夫の客死と、一子花若の出家の報を聞く。狂女となった妻(後シテ)は、善光寺に詣(もう)で、夫の形見を仏に捧(ささ)げ、舞の名手でもあった夫を恋い慕いつつ追善の舞を舞う。花若(子方)がこの寺で修行をしており、親子は互いに変わる姿にあきれつつも、再会を喜びあって終わる。シテの面は深井または曲見(しゃくみ)。榎並(えなみの)左衛門の作を世阿弥(ぜあみ)が改作した能。「悪き所をば除き、よきことを入られければ、皆世子(ぜし)(世阿弥)の作なるべし」と『鵜飼(うかい)』とともに『申楽(さるがく)談儀』に記述がある。世阿弥自筆能本も現存する。

[増田正造]

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百科事典マイペディア 「柏崎」の意味・わかりやすい解説

柏崎[市]【かしわざき】

新潟県中部,日本海に面する市。1940年市制。中央の柏崎平野(刈羽(かりわ)平野)にある中心市街は北陸街道の旧宿場町で,佐渡の金輸送や縮布行商で繁栄。明治中頃から最近まで西山油田で活気を呈した。1971年柏崎港が国際貿易港として開港,1985年原子力発電所1号機が運転開始,田尻工業団地が完成した。機械・金属・ガラス工業が盛んである。信越本線が通じ越後線が分岐。北陸自動車道が通じる。平野は刈羽米の大産地。南西端に民謡《三階節》で有名な米山(よねやま),東頸城(ひがしくびき)丘陵が広がる南部には名勝の貞観園がある。1971年刈羽郡北条(きたじょう)町を編入。2005年5月刈羽郡西山町,東頸城郡高柳町を編入。442.03km2。9万1451人(2010)。

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