根室(読み)ネムロ

デジタル大辞泉 「根室」の意味・読み・例文・類語

ねむろ【根室】

北海道旧国名。現在の根室振興局
北海道東部の振興局。局所在地は根室市
北海道、根室半島を占める市。根室振興局所在地。北洋漁業基地で、サケ・マスカニなどの水揚げが多い。人口2.9万(2010)。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「根室」の意味・読み・例文・類語

ねむろ【根室】

  1. [ 一 ] ( アイヌ語「ニムオロ」(樹林の意)の音写 ) 北海道本島最東端の地名。根室支庁所在地。元祿年間(一六八八‐一七〇四)に開発が始まり、寛政一一年(一七九九)には幕府直轄地となり、運上屋(会所)が置かれた。根室湾に面し、明治(一八六八‐)初年の移民以来漁港として発展。サケ・マス・イカなどの一大漁業基地であり、水産加工業が盛ん。昭和三二年(一九五七)市制。
  2. [ 二 ] 明治二年(一八六九)北海道に置かれた一一か国の一つ。根室半島から知床半島南部に至る区域と歯舞(はぼまい)諸島を含む。
  3. [ 三 ] 北海道本島の東端を占める支庁。明治五年に設置され、同一五年根室県の設置に伴い廃止。同三〇年に再設置。支庁所在地は根室市。
  4. [ 四 ] 北海道の東部にあった郡。明治二年根室国の一郡として成立。同三〇年根室支庁に所属。昭和三二年根室市が成立して消滅。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「根室」の意味・わかりやすい解説

根室(市)
ねむろ

北海道東端にある水産都市。根室振興局所在地。太平洋に突き出た根室半島の全域を占める。市名はアイヌ語「ニムオロ」(樹木の繁茂する所)に由来。1957年(昭和32)根室町と和田村が合併して市制施行。1959年歯舞(はぼまい)村を編入。JR根室本線、国道44号が通じ、西部の厚床(あっとこ)で243号が分岐する。JR標津線(しべつせん)は1989年(平成1)廃止。中心市街地は半島中央部の北岸で根室湾に面し、漁港がある。

[進藤賢一]

歴史

開発は1754年(宝暦4)に、松前藩珸瑶瑁水道(ごようまいすいどう)の航路を開き、根室港を交易地としたことに始まる。1869年(明治2)開拓使庁根室出張所が設置され、1882年には根室県が置かれ、また1886年和田には屯田兵440戸が入植した。1897年の根室支庁(現、根室振興局)開設で、根室地方だけでなく千島列島一円の行政の中心地となった。産業面では、明治期以降漁業と水産加工業が行われ、また千島、知床(しれとこ)方面への航路も開設されて物資輸送の基地、海産物集散地として繁栄した。第二次世界大戦末期には戦災で市街地の80%が焼失、さらに千島、歯舞、色丹(しこたん)の島々を失い、引揚者の多くを抱えることになった。現在、北方領土返還運動の拠点となっているのはこのためである。

[進藤賢一]

産業

産業は水産業が中心で、根室港と花咲港(はなさきこう)を基地として沖合・遠洋漁業のサケ、マス、サンマ、タラ、カニ漁など、沿岸漁民のコンブ漁やサケ漁が行われる。2013年(平成25)の漁業経営体は787戸、水揚高は約250億円に達し、缶詰、水煮、干物、塩蔵などの水産加工業が事業所の中心をなしている。ウニ種苗生産センター(1991年完成)、水産研究所(1996年完成)などを設置して水産資源の増大と有効利用を図っている。半島の段丘性丘陵面から根釧(こんせん)台地にかけては、「新酪農村」など、日本を代表する大型で近代的な酪農地帯が出現した。なお、乳牛頭数約1万1000頭、農用地は約9600ヘクタールに及ぶ(2015)。

[進藤賢一]

観光資源

東端の納沙布(のさっぷ)岬からは北方領土の歯舞群島を眼前に望むことができる。花咲岬根室車石(くるまいし)、落石岬(おちいしみさき)のサカイツツジ自生地はともに国指定天然記念物。西浜地区の西月ヶ岡遺跡は擦文時代の集落跡で国指定史跡。風蓮湖(ふうれんこ)はオオハクチョウ飛来地で、東の温根沼(おんねとう)とともに野付(のつけ)風蓮道立自然公園域に含まれる。風蓮湖・春国岱(しゅんくにたい)はラムサール条約登録湿地。面積506.25平方キロメートル(歯舞群島を含む。風蓮湖を含まず)、人口2万4636(2020)。

[進藤賢一]

『『根室市史』全3巻(1968・根室市)』『高原一隆・増田洋編『地域問題の経済分析――転機にたつ北洋漁業基地・根室市の場合』(1986・大明堂)』



根室(支庁)
ねむろ

北海道東部、根室海峡に面する羅臼(らうす)、標津(しべつ)、中標津、別海(べつかい)の4町を所管区域とした北海道庁の出先機関。2010年(平成22)、支庁制度改革によって根室振興局に改称・改組された。支庁所在地は根室市。原則として市域は所管外であるが、根室市を含む地域を意味する場合もあり、実務上も同市を含めて管内とされることが多かった。なお、いわゆる「北方領土」に含まれる色丹(しこたん)島の色丹村、国後(くなしり)島の泊(とまり)村と留夜別(るよべつ)村、択捉(えとろふ)島の留別(るべつ)村、紗那(しゃな)村、蘂取(しべとろ)村については、北海道支庁設置条例(昭和23年9月27日・条例第44号)の附則で「当分の間これ(条例)を適用しない」こととされている。

 旧管内は標高100メートル前後の根釧台地(こんせんだいち)が広範囲を占める。洪積台地上は火山灰が被覆し、泥炭が露出する劣悪土壌のため、開発は遅れた。1957年(昭和32)に始まる別海町のパイロットファームによる酪農業は、その後、周辺の中標津町、根室市などにも及び、「新酪農村」とよばれる広大型酪農業へと発展した。農家1戸当りの経営農地56.8ヘクタールは日本最大であり、設備の近代化や機械化が一段と進んだ。5~8月は濃霧日数が多く、また夏季は日本での最低温地域であり、結実作物はほとんど栽培されない。農家の約93%が酪農を営み、バターや粉乳に加工する森永、雪印メグミルク、明治の三大乳業資本の加工場が配置されている。

[進藤賢一]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「根室」の意味・わかりやすい解説

根室[市] (ねむろ)

北海道最東端の根室半島全域を占める市。1957年市制。人口2万9201(2010)。市街地は根室湾に面する根室港を中心に発達し,JR根室本線の終点根室駅があり,国道44号線が通じる。また半島南部,太平洋岸に冬も結氷しない花咲港があり,78年根室港と合わせて重要港湾根室港に指定された。開拓は元禄年間(1688-1704)に始まり,1869年(明治2)開拓使の開設により移民130人が来住して町の基礎が築かれた。82年には根室県庁が設置され,以後,千島列島近海の豊かな水産資源を背景に発展し,明治末期には道東第1の都市となった。1921年根室本線が全線開通し,千島,知床方面への物資輸送基地,海産物集散地として発展したが,第2次大戦で千島列島を失い,経済的にも大きな打撃をうけた。その後北洋漁業が再開され,現在は花咲港を中心にサケ・マスの流し網漁やサンマ,イカ漁などが操業され,日本でも有数の水揚げを誇っている。水産加工,漁船建造も盛んである。農業は6~7月に濃霧が発生するため不振であるが,旧和田村では戦前は牛馬の放牧が行われ,戦後は酪農に転換して乳牛の飼育が盛んである。花咲岬突端にある最大6mに及ぶ放射状節理の根室車石,納沙布(のさつぷ)岬風蓮湖,落石(おちいし)岬のサカイツツジ自生地(天)など景勝地が多い。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「根室」の意味・わかりやすい解説

根室[市]【ねむろ】

北海道東端の根室半島を占める市。1957年市制。北岸はオホーツク海に面して根室港が,南岸は太平洋に面して花咲港があり,根室本線終点の中心市街は北岸の根室港を中心に発達。コンブ,サケ,タラ,サンマ,カニなどを漁獲,水産加工場や冷蔵工場が多く,特にカニの缶詰業は盛ん。根室港は冬季は結氷するため,南岸の結氷しない花咲港を利用する。酪農が行われるが,冷涼で穀物栽培には不適。風蓮湖,根室車石(天然記念物)があり,南端の落石岬はサカイツツジ自生地(天然記念物)。2005年に風蓮湖・春国岱がラムサール条約登録湿地となる。東日本大震災で,市内において被害が発生。506.25km2(歯舞群島94.84km2を含む)。2万9201人(2010)。
→関連項目根室[支庁]

根室[支庁]【ねむろ】

北海道東部の支庁。野付,標津(しべつ),目梨の3郡がある。歯舞(はぼまい),色丹(しこたん),国後(くなしり),択捉(えとろふ)には行政権が及んでいない。コンブ,サケ,マスの漁業や,根釧(こんせん)台地の開拓に力が注がれている。支庁所在地は根室市。支庁制度改革に伴い2010年4月,根室振興局となる。
→関連項目北海道

根室[駅]【ねむろ】

北海道根室市にある,日本最東端の有人(駅舎のある)駅。1921年開業,根室本線が乗り入れる。北方領土を望む納沙布岬へバス路線が通じるが,かつてはその途中にあたる歯舞まで,根室拓殖鉄道が鉄路を延ばしていた。ホームは1本のみで,構造は簡素である。なお,駅舎のない日本最東端の駅は隣の東根室駅となる。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android