出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
江戸時代の医家。桂川家では4代、7代が甫周を通称とする。
[末中哲夫]
(1751―1809)江戸の生まれ。名は国瑞(くにあきら)、字(あざな)は公鑑、月池と号した。弟甫粲(ほさん)(森島中良(なから)、万象(まんぞう)亭)とともに才知にあふれ、歴史上著名な事績に関与した。1769年(明和6)には蘭学(らんがく)創始の端緒となった『解体新書』の翻訳事業に最年少者として終始参加。また幕命を受けしばしばオランダ商館長らと対話し、1776年(安永5)にはツンベルクを中川淳庵(じゅんあん)とともに訪れて対話、その英才ぶりがツンベルクの著『日本紀行』に紹介されている。1777年奥医師、1783年(天明3)法眼(ほうげん)。1793年(寛政5)大黒屋光太夫(幸太夫)がロシアから松前に送還されたとき、光太夫らの口述をまとめ『北槎聞略(ほくさぶんりゃく)』12巻を著し、そのほかに『魯西亜誌(ろしあし)』1巻を訳編、また『魯西亜略記』を編纂(へんさん)した。1794年幕府医学館教授、外科担当となり、顕微鏡を医学に初めて応用した。著作は『和蘭(おらんだ)薬選』『海上備要法』『万国図説』『地球全図』『漂民御覧記』など多方面にわたる。文化(ぶんか)6年6月21日没。墓所は神奈川県伊勢原(いせはら)市の上行(じょうぎょう)寺。
[末中哲夫]
(1826―1881)江戸の生まれ。名は国興(くにおき)、幼名甫安、字は禎卿、月池と号した。1843年(天保14)胸部打撲疾患のおり、戸塚静海・伊東玄朴(げんぼく)の洋方治療を受けた。1844年家督を相続。1846年(弘化3)将軍家慶(いえよし)の侍医。1847年西洋医学所教授となり、中村正直(まさなお)に蘭学を教授。1853年(嘉永6)法眼。1855~1858年(安政2~5)『和蘭字彙(じい)』10冊を刊行。1861年(文久1)再来日のシーボルトに面接。1863年成島柳北(なるしまりゅうほく)と英学研究に着手。1868年(明治1)奥医師を辞退して森島新悟と改名し、浅草に薬局を開いた。明治14年9月2日没。著作に『太平春詞』『随身巻子(かんす)』などがある。墓所は神奈川県伊勢原市の上行寺。
[末中哲夫]
『今泉源吉著『蘭学の家 桂川の人々 最終篇』(1969・篠崎書林)』
(吉田厚子)
(鳥井裕美子)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
江戸後期の蘭方医。江戸出身。名は国瑞(くにあきら),字は公鑑,月池と号した。幕府の医官桂川家4代目で,同家代々の中でも最も傑出した一人であった。若くして《解体新書》翻訳グループの一員に加わり,蘭館医ツンベリーらオランダ人と学術上の交渉をもち,江戸蘭学の後継者を育成,とくに西洋本草学に秀で,また顕微鏡を日本で最初に医学に応用した。《和蘭薬選》《顕微鏡用法》《海上備要方》等の医薬関係訳書のほか,漂流民大黒屋光太夫らの陳述をまとめた《漂民御覧之記》《北槎聞略(ほくさぶんりやく)》等と,それに関連した《魯西亜志》等の海外事情関係訳書がある。なお,桂川家7代目国興(くにおき)(1826-81・文政9-明治14)も甫周を名乗り,蘭和辞書《和蘭字彙》(1855-59・安政2-6)の刊行で知られる。
執筆者:宗田 一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
1751~1809.6.21
江戸後期の蘭方外科医。桂川甫三(ほさん)の子で桂川家4代目。名は国瑞(くにあきら),字は公鑑,号は月池。江戸生れ。天性の鋭敏さとすぐれた才能をうたわれ,1769年(明和6)19歳で奥医師,94年(寛政6)医学館教授。1775年(安永4)来日の植物学者ツンベリと親交を結ぶ。前野良沢・杉田玄白らとともに「解体新書」の翻訳に参画。世界地理にも深い関心をもち,92年に送還された大黒屋光太夫の陳述から「北槎聞略(ほくさぶんりゃく)」を著し,「魯西亜(ロシア)志」を訳述。弟子に吉田長淑。実弟は森島中良(ちゅうりょう)。医学館多紀元孝の長男道訓を養子に迎えた。顕微鏡をはじめて医学に応用し「顕微鏡用法」を著す。ほかに翻訳「地球全図」「和蘭薬選」。なお「和蘭字彙」の編著者である桂川家7代国興(くにおき)も甫周を称した。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報
…稲村三伯によって作成された《ハルマ和解(わげ)》を《江戸ハルマ》と称したのに対して,本書は《道訳ハルマ》とも《長崎ハルマ》とも呼ばれる。のち幕府の医官桂川甫周によって改訂され,《和蘭字彙(オランダじい)》として,前編は1855年(安政2),後編は58年に完成,江戸で出版された。【片桐 一男】。…
…全12巻。著者は桂川甫周。1794年(寛政6)成稿。…
※「桂川甫周」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
自動車税は自動車(軽自動車税の対象となる軽自動車等および固定資産税の対象となる大型特殊自動車を除く)の所有者に対し都道府県が課する税であり、軽自動車税は軽自動車等(原動機付自転車、軽自動車、小型特殊自...
4/12 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
4/12 デジタル大辞泉を更新
4/12 デジタル大辞泉プラスを更新
3/11 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
2/13 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新