能楽師。金春(こんぱる)流シテ方。桜間林太郎(桜間伴馬(ばんま)の末弟)の次男。はじめ父に師事し,1913年上京後は伯父の伴馬について修業。堅確な技術をもって早くから実力を評価されていたが,花開いたのは60年代以降で,伯父譲りの巧緻・艶麗な芸風に自己の研鑽と主張を積み重ね,高度な技術を有すると同時に,技術を超えた高い様式を獲得した。あらゆる曲趣に秀でていたが,とくに《定家》《江口》《西行桜》などが名演として知られ,老女物の秘曲《檜垣(ひがき)》を2回,壮者の体力と集中力を要する《道成寺》を70歳と84歳で舞うなど,老いを感じさせぬ意欲と探求心を示した。1960年度・67年度芸術祭大賞,69年度芸術選奨文部大臣賞受賞。70年,重要無形文化財保持者各個指定(人間国宝)に認定された。著書に《能・捨心の芸術》。
執筆者:羽田 昶
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能役者。金春(こんぱる)流シテ方。桜間林太郎の次男。熊本市生まれ。16歳で上京、伯父の桜間伴馬(ばんま)、従兄弟(いとこ)の桜間金太郎(後の弓川(きゅうせん))に師事する。同年生まれで、同じ熊本出身の名手本田秀男、桜間弓川亡きあと、磐石(ばんじゃく)の技術と独特の能の主張で能界に重きをなした。老女能『檜垣(ひがき)』を流儀に復興、三度演じ、84歳で『道成寺』を舞うなど、前人未到の業績を残した。1970年(昭和45)に重要無形文化財保持者に認定される。油絵をよくし、また武智(たけち)鉄二演出の『綾(あや)の鼓』(三島由紀夫作)、『絵姿女房』(矢代(やしろ)静一作)などにも出演している。著書に『能――捨心の芸術』がある。
[増田正造]
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