止る(読み)トマル

デジタル大辞泉 「止る」の意味・読み・例文・類語

とま・る【止(ま)る/留(ま)る/停まる】

[動ラ五(四)]
動いていたものが動かなくなる。動きをそこでやめた状態になる。停止する。「時計が―・る」「特急の―・る駅」「エンジンが―・る」
続いていたものが続かなくなる。通じていたものが通じなくなる。「成長が―・る」「道はそこで―・っている」「水道が―・る」
飛んでいた虫・鳥などが物につかまって静止した状態を保つ。「蝶が花に―・る」「小鳥が枝に―・る」
動かないように固定される。「画鋲がびょうではうまく―・らない」
心・目・耳に感じられる。印象が消えずに残る。「目に―・る」「耳に―・った話」
(「お高くとまる」の形で)えらそうな態度をとる。「お高く―・っていて返事もしない」
とりやめになる。中止される。
「いつしか思ひたることの、さはることで来て、にはかに―・りぬる」〈能因本枕・一〇三〉
行き着く。
「ことわりも何もいづこに―・るべきにか」〈・若菜上〉
そこに残る。とどまる。
「行くも―・るもみな泣きなどす」〈更級
10 生き残る。この世にとどまる。
「―・りゐる身も老いらくののちなればさらぬ別れぞいとどかなしき」〈新勅撰・雑三〉
[可能]とまれる
[下接句]お高くとまる御目に留まる耳に留まる目が留まる目に留まる目にも留まらぬ
[類語]とめるとどまる停滞する停止するストップする踊り場横ばい足踏み渋滞難航難渋停頓

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精選版 日本国語大辞典 「止る」の意味・読み・例文・類語

とま・る【止・留・停・泊】

  1. [ 1 ] 〘 自動詞 ラ行五(四) 〙
    1. [ 一 ] 動かないでいる。そこに位置して離れないでいる。
      1. 動いていたものが、動かなくなる。停止する。立ちどまる。
        1. [初出の実例]「吹く風の 見えぬが如く 行く水の 登麻良(トマラ)ぬ如く」(出典万葉集(8C後)一九・四一六〇)
        2. 「簾のもとにとまりて見たる心地こそ、飛びも出でぬべき心地すれ」(出典:枕草子(10C終)九五)
      2. とりやめになる。中止になる。
        1. [初出の実例]「いとなみ、いつしかと待つことの、さはりあり、にはかにとまりぬる」(出典:枕草子(10C終)九八)
      3. 続いていた物事がとだえる。
        1. [初出の実例]「さて夢さめて、涙とまらずして」(出典:宇治拾遺物語(1221頃)五)
      4. 通じなくなる。「水道がとまる」
        1. [初出の実例]「ヲヲ其侍は今の先渡った。が、俄の大水で川が留った」(出典:浄瑠璃・生写朝顔話(1832)宿屋の段)
    2. [ 二 ] 一定の位置に固定する。
      1. 付着する。固着する。つく。
        1. [初出の実例]「とまりたる匂などもなべてならずと」(出典:栄花物語(1028‐92頃)暮待つ星)
      2. 目・耳・心などに印象が残る。
        1. [初出の実例]「よきあしき事の、目にも耳にもとまる有様を」(出典:源氏物語(1001‐14頃)帚木)
      3. 落着する。終結する。決着する。終わる。
        1. [初出の実例]「ましてことはりも何も、いづこにとまるべきにか」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若菜上)
      4. つかまる。特に、鳥や虫などが枝の上などでからだを安定させる。
        1. [初出の実例]「トリガ キノ エダニ tomaru(トマル)」(出典:日葡辞書(1603‐04))
        2. 「とまらんと水にも望むとんぼ哉〈鼓舌〉」(出典:俳諧・俳諧新選(1773)三)
      5. ( 「高くとまる」の意 ) えらぶっている。
        1. [初出の実例]「ヘンおつうとまりたがるやつだの」(出典:人情本・仮名文章娘節用(1831‐34)前)
      6. 妊娠する。「腹に宿る」意と「月経が止まる」意と両方からいう。
        1. [初出の実例]「六はらをさすりあぐれば心の臓〈未学〉 たった一夜でとまると覚て〈西似〉」(出典:俳諧・天満千句(1676)八)
    3. [ 三 ] 行かないでいる。残る。
      1. あとに残る。とどまる。
        1. [初出の実例]「み越路の雪降る山を越えむ日は留有(とまれる)吾れを懸けて偲はせ」(出典:万葉集(8C後)九・一七八六)
      2. 生き残る。とどまる。
        1. [初出の実例]「今までとまり侍るがいと憂きを」(出典:源氏物語(1001‐14頃)桐壺)
    4. [ 四 ] ( 泊 ) ある場所に、ある時間、継続してとどまる。
      1. 船が港で夜を過ごす。停泊する。
        1. [初出の実例]「廿九日、おほみなとにとまれり」(出典:土左日記(935頃)承平四年一二月二九日)
      2. 出先で宿をとる。宿をかりる。宿泊する。やどる。
        1. [初出の実例]「つば市。大和にあまたある中に、長谷に詣づる人のかならずそこにとまるは、観音の縁のあるにや」(出典:枕草子(10C終)一四)
      3. 宿直する。とのいする。
        1. [初出の実例]「御とのゐ所に、やがてとまり給ひぬるやうにて、夜ふかして、おはしたり」(出典:源氏物語(1001‐14頃)末摘花)
  2. [ 2 ] 〘 他動詞 ラ行四段活用 〙
    1. やめる。よす。
      1. [初出の実例]「われ思ふ子細ありて思ひたちぬる事なれば、いかにとどめ給ふとも、とまるべきにてあらず」(出典:御伽草子・木幡狐(室町末))
    2. 停止させる。くいとめる。
      1. [初出の実例]「野口のみぞの水氷滑るをとまる高足駄」(出典:浄瑠璃・冥途の飛脚(1711頃)下)

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