難渋(読み)ナンジュウ

デジタル大辞泉 「難渋」の意味・読み・例文・類語

なん‐じゅう〔‐ジフ〕【難渋】

[名・形動](スル)
物事処置進行がむずかしくてすらすらいかないこと。また、そのさま。「交渉難渋している」
「風俗史を編成すること頗る―なる業なるのみか」〈逍遥小説神髄
困ること。もてあますこと。また、そのさま。「泥道を歩くのに難渋する」
「脚に―な腫物があった」〈鏡花高野聖
生活が苦しいこと。貧乏なこと。「不景気で暮らし向きが難渋する」
「徒に有産の輩を覆して無産の―に陥れたるに似たれども」〈福沢文明論之概略
人に金品を与えたり、貸したりするのを惜しむこと。
「主俄に欲念おこって、ほうびの金を―せしめんがため」〈仮・伊曽保・上〉
[類語](1渋滞停滞難航停頓踊り場横ばい足踏みとどまる難しいかた困難至難お手上げ難題難問難事難関関門狭き門登竜門懸案/(2てこずる手詰まり苦労困る弱る参るきゅうするこうずる苦しむ困り果てる困りきる困りぬく困却する往生おうじょうする難儀する閉口する困惑する当惑する途方に暮れる手を焼く手に余る持て余す手に負えない手が付けられない手が掛かる世話が焼ける始末に負えない始末が悪い・どうにもならない・如何ともしがたい・度し難い

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「難渋」の意味・読み・例文・類語

なん‐じゅう ‥ジフ【難渋】

〘名〙
① (━する) 物事の処理や進行が困難で渋滞すること。すらすらと事が運ばないこと。なやみしぶること。
※権記‐長徳四年(998)二月一一日「令奏之旨甚雖懇切、猶有難渋之御気色
経国美談(1883‐84)〈矢野龍渓〉前「深き山路に迷ひ入りて〈略〉雨は益々降りしきり其の難渋言ふべからず」
② (━する) (形動) 困ること。もてあますこと。迷惑がること。また、そのさま。
吾妻鏡‐嘉禎二年(1236)九月一〇日「遠江守朝時朝臣加評定衆之後初出仕、此事不庶幾之由、内々難渋」
③ (━する) 暮らし向きが悪くて苦しむこと。また、貧困であること。
※狂詩・二大家風雅(1790)「此仁曾住下宮川、替宿元因難渋多、至極慥成横道者、家賃不払焼根駄
④ 鎌倉・室町時代、裁判所の召喚に応じないなど、訴訟当事者が一方的に手続きを遅怠すること。
※吾妻鏡‐宝治元年(1247)二月一二日「差定奉公人問両方之後、一方致難渋日数、自対決之日廿箇日者、不理非訴人申状御成敗者」
⑤ (━する) ぐずぐずして義務や職務をすみやかに果たさないこと。また、年貢その他の貢租納入をとどこおらせること。
東大寺文書‐文治四年(1181)正月七日・興福寺公文所下文案「若有難渋輩之者、慥可進其交名、為官使等也者」
⑥ (━する) 出し惜しみすること。与えたり、貸したり、返したりするのを惜しみ渋ること。
満済准后日記‐応永二〇年(1413)正月八日「大元本尊今朝自光覚僧正方請取、自旧冬種々難渋、頗沙汰外事也」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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