秩父市の南東部にある岩山。秩父市街地の背後にそびえ,どっしりとした山容から,関東の名山の一つとされてきた。古くからの信仰の山で,武甲県立自然公園の中心でもある。北斜面には厚さ450mに達する石灰岩の岩層が5kmにわたって露出しており,大正期から石灰およびセメントの原料として採掘され,山麓には太平洋セメント(旧,秩父セメント)の工場が立地する。採掘は頂上部にまで達し,かつて1336mあった山の標高を40mほど低下させた。むき出しになった山肌は自然保護の見地から大きな問題となっている。北斜面の高度800m付近には,チチブイワザクラ,ミヤマスカシユリ,イチョウシダなどの好石灰岩植物が生育し,〈武甲山石灰岩地特殊植物群落〉として天然記念物に指定されている。秩父市街などから登山路がある。
執筆者:小泉 武栄
武甲山の名は,日本武尊が〈その勢い鎧武者の怒り立つ体なり〉と賛美したと伝えられるように,武人の兜に似ていることに由来するといわれる。しかし一方で,武光山,秩父岳ともいわれるように,秩父盆地の南東に位置し,奥秩父連峰の前立の山であることからすれば,岳光(たけひかる)の山,すなわち太陽の光り輝く山,神奈備(かんなび)の山とする信仰が原初的形態であったといえる。その意味で知々夫(秩父)国の神である知々夫彦命をまつった山が武甲山で,その遥拝所,里宮が秩父神社のはじまりとする見解は注目される。また山頂の御岳神社跡からは,室町時代のものとみられる大規模な磐座(いわくら)が発掘されており,かつてあつい信仰が寄せられていた状況がうかがい知られる。
執筆者:宮本 袈裟雄
石灰岩層が形成された時代については論議があり,かつては秩父古生層に属するものとされていたが,最近では中生代のものとする説も有力である。下盤に輝緑凝灰岩が,上盤にケツ岩,ケイ岩などの互層がある。武甲山全体で10億~20億tの鉱量があるとされ,山麓から山頂へかけていくつもの企業の鉱区が存在しているが,これらの企業間および地元との間に協定ができており,武甲山の自然を保護しながら山頂から掘り下げる方式の採掘が行われている。現在,山頂ベンチをはじめ,東部,西部の各鉱区で採掘される石灰石の総量は年間1000万tに達している。
執筆者:山口 梅太郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
秩父盆地の南東隅にそびえる独立峰で、遠く関東平野からも望める。標高一二九五・四メートル。山域は東西約五・五キロ、南北三・五キロに及び、西側は秩父市、東側は秩父郡
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
埼玉県西部、秩父市(ちちぶし)と秩父郡横瀬町の境にある山。標高1295メートル。古来信仰の対象の山で、山頂に御嶽神社(みたけじんじゃ)を祀(まつ)る。山名の由来については日本武尊(やまとたけるのみこと)が東征のおり、戦勝祈願にこの山に武具、甲冑(かっちゅう)を奉納したためとか、秩父の向こうに見えるのでムコウサンと名づけたとかいう説がある。秩父中・古生層の山で、石灰岩が多いので有名。標高800メートル付近にはチチブイワザクラ、ミヤマスカシユリなどの群落があり、武甲山石灰岩特殊植物群落として国の天然記念物に指定されている。石灰岩はセメントの材料として、秩父セメント、日本セメント(前記2社は1998年合併により太平洋セメントとなる)、三菱(みつびし)セメント(現、三菱マテリアル)など各社による採掘が進み、山容が変化し、景観や自然保護のうえから問題がおきている。
[中山正民]
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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