汚す(読み)ケガス

デジタル大辞泉 「汚す」の意味・読み・例文・類語

けが・す【汚す/×穢す】

[動サ五(四)]
大切なもの、清らかなものをよごす。「美しい心を―・す行為」「聖地を―・す」
恥ずべき行為などをして名誉・誇りを傷つける。「名を―・す」
能力身の程を越えた地位につくという謙遜気持ちから、ある地位や席につく。「末席を―・す」「会長職を―・す」
暴力で、女性をはずかしめる。「身を―・される」
手をつける。食べる。味わう。
「いま二巻きは―・さで置きてさぶらふ」〈宇治拾遺・二〉
[可能]けがせる[サ下一]
[類語](4強姦暴行婦女暴行レイプ輪姦凌辱強淫強制猥褻手込め姦する犯す辱める

よご・す【汚す】

[動サ五(四)]
きたなくする。「水を―・す」「泥で服を―・す」
不正なことなどをする。けがす。「心を―・す」「手を―・す」
あえものにする。あえる。「ごまで―・す」
[可能]よごせる
[類語]けがれるよごれる薄汚れるすすける垢じみるまみれる油染みる食べ汚す汗染みる

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「汚す」の意味・読み・例文・類語

けが・す【汚・穢】

  1. 〘 他動詞 サ行五(四) 〙
  2. きたなくする。よごす。醜くする。
    1. [初出の実例]「赭(そほに)を以て掌(たなうら)に塗り、面に塗りて其の弟(なせのみこと)に告(まう)して曰く、『吾れ、身を汚(ケカス)こと此の如し』」(出典:日本書紀(720)神代下(水戸本訓))
    2. 「血出でて土を穢かす」(出典:観智院本三宝絵(984)上)
  3. (名誉、神聖さなど)尊ぶべきものを損なう。きずつける。
    1. [初出の実例]「軽き天威を触(ケカシ)て、伏して戦(かしこ)まり」(出典:大唐三蔵玄奘法師表啓平安初期点(850頃))
    2. 「ここにて対面し奉らば、道場をけがし侍るべし」(出典:徒然草(1331頃)一一五)
    3. 「褻(ケガ)すとは神に対するの犯罪を云ふなり」(出典:基督と其の事業(1902)〈植村正久〉)
  4. 女子の貞操をやぶる。
    1. [初出の実例]「武彦、皇女を姧(ケカシ)まつりて任身(はらま)しめたり」(出典:日本書紀(720)雄略三年四月(前田本訓))
  5. ( 相応の才能がなくて位を汚すというへりくだった気持から ) 不相応な地位につく。その才能がないのに職につく。
    1. [初出の実例]「此の国の奴婢の娘の子也。何でか忝く此の座を穢(けが)すべき」(出典:今昔物語集(1120頃か)二)
    2. 「其人ならではけがすべき官ならねども」(出典:平家物語(13C前)一)
  6. ( 尊いものをまねて損なう気持から ) まねをする。ならう。
    1. [初出の実例]「すみかはすなはち、浄名居士の跡をけがせりといへども」(出典:方丈記(1212))
  7. 食物などに口をつける。
    1. [初出の実例]「いにしへにくすりけかせるけだものの雲にほえけんここちして」(出典:桂宮丙本忠岑集(10C前))
  8. 不正に多くとる。
    1. [初出の実例]「キンセンヲ kegasu(ケガス)。コメヲ kegasu(ケガス)」(出典:改正増補和英語林集成(1886))

汚すの語誌

「けがす」「けがれる」は多く抽象的・精神的な汚れについて言い、具体的・物質的な汚れに関しては「よごす」「よごれる」が用いられる傾向がある。また、古くは「けがる」「けがす」が訓読語をはじめとする文章語的表現に、「よごる」「よごす」が卑俗な日常口頭語的表現に用いられるという、文体上の使い分けも存在したと考えられる。


よご・す【汚】

  1. 〘 他動詞 サ行五(四) 〙
  2. きたなくする。けがす。
    1. [初出の実例]「皆灰水と為(な)して浸爛(ヨコシ)て銷(け)し尽して余有ること无くあらしめむ」(出典:地蔵十輪経元慶七年点(883)一〇)
  3. 名誉や貞操などをきずつける。
    1. [初出の実例]「よしやゐんぐよかりのわざおっとの名をも我身をも、けがさじすてじよごさじとそもや勤のはじめより」(出典:浄瑠璃・用明天皇職人鑑(1705)三)
  4. へたな字で紙をきたなくする意から、書くことを謙遜していう。
    1. [初出の実例]「拙い筆をふるって書幅や色紙をよごしているのだが」(出典:彼の歩んだ道(1965)〈末川博〉一)
  5. あえる。まぶす。「胡麻でよごす」
  6. て(手)を汚(よご)す

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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