犯す(読み)オカス

デジタル大辞泉 「犯す」の意味・読み・例文・類語

おか・す〔をかす〕【犯す】

[動サ五(四)]
法律規則倫理などに反した行為をする。「罪を―・す」「誤りを―・す」
女性に対して力ずくで肉体関係強制する。「暴漢に―・される」
権威あるものに逆らう。
「今はよもかみを―・さんと好み、乱を起こさんとする者はあらじ」〈太平記一六
[可能]おかせる
[類語](2強姦暴行婦女暴行レイプ輪姦凌辱強淫強制猥褻手込め姦する辱めるけが

ぼん・す【犯す】

[動サ変]《「ぼんず」とも》戒律などをおかす。
「いまだ禁戒を―・ぜず」〈平家・一〇〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「犯す」の意味・読み・例文・類語

おか・すをかす【犯・侵・冒】

  1. 〘 他動詞 サ行五(四) 〙 物理的・心理的に抵抗して、作用するものを排除する行ないをとる。
  2. じゃまになる物事を乗り越える。押し切って行なう。しのぐ。
    1. [初出の実例]「其の女弟(いろと)玉依姫を将(ひき)ゐて直に風波を冒(ヲカシ)て、海辺(へた)に来到る」(出典:日本書紀(720)神代下(水戸本訓))
    2. 「強(しひ)て殺して仕舞ふほどの無理を冒(ヲカ)さない以上は」(出典:坑夫(1908)〈夏目漱石〉)
  3. 法律、規則、道徳などに背いたことをする。悪事を行なう。目的語をとる場合は、「定められた範囲(法律、道徳など)を侵す」の形と、「よくないこと(罪、悪、あやまちなど)を犯す」の形の両方が用いられる。
    1. [初出の実例]「菩薩の律儀の於に、極重の悪を犯(ヲカセ)る」(出典:西大寺本金光明最勝王経平安初期点(830頃)三)
  4. 他のものの権利や権限を自分のものにする。侵害する。
    1. (イ) 他人や他国の領分や土地などに不法にはいり込む。侵犯する。侵略する。
      1. [初出の実例]「多く他方の怨賊有りて侵(ヲカシ)(かす)まむ」(出典:西大寺本金光明最勝王経平安初期点(830頃)六)
    2. (ロ) 他人の姓を名乗る。
      1. [初出の実例]「取真人朝臣字、以氏作字。是近姓」(出典:続日本紀‐神護景雲二年(768)五月丙午)
      2. 「高橋の姓は養家のを冒(ヲカ)したので、僕の元の姓は大塚といふのです」(出典:運命論者(1903)〈国木田独歩〉三)
  5. 神聖なもの、威厳のあるもの、信仰しているものなどをけがし、そこなう。冒涜(ぼうとく)する。
    1. [初出の実例]「阿師、既に天威を触(ヲカシ)つ」(出典:天理本金剛般若経集験記平安初期点(850頃))
  6. 人や生物を襲って危害を加える。特に、肉体関係を女性に強制する。姦淫する。
    1. [初出の実例]「穴穂部皇子、炊屋姫皇后を姧(ヲカサム)と欲して」(出典:日本書紀(720)用明元年五月(図書寮本訓))
  7. 風雨寒気などが物事を損ずる。侵食する。また、病気や眠け、ある感情などがとりつく。
    1. [初出の実例]「諸の悪事、をりにつけつつ皆身をおかす」(出典:発心集(1216頃か)七)
    2. 「甍(いらか)は雨露にをかされて、仏壇さらにあらはなり」(出典:平家物語(13C前)五)
  8. 他人に逆らう。反対する。
    1. [初出の実例]「あまり其上を干(ヲカ)して諫るによりて」(出典:史記抄(1477)一一)
  9. 下の人が上の人に願い求める。
    1. [初出の実例]「斎院をも猶きこえをかしつつ、しのびに御ふみかよはしなどして」(出典:源氏物語(1001‐14頃)賢木)

ぼん‐・す【犯】

  1. 〘 他動詞 サ行変 〙 ( 「ぼんず」とも ) 戒律などをおかす。
    1. [初出の実例]「未だ禁戒をも犯(ボン)せず」(出典:高野本平家(13C前)一〇)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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