油売(読み)あぶらうり

精選版 日本国語大辞典 「油売」の意味・読み・例文・類語

あぶら‐うり【油売】

〘名〙
① 点灯用の種油を売り歩くこと。また、その行商人藍色綿服に、渋染めの胸当てや前垂れ兼用のものを掛け、油のついた手をふく打ちわらを持ち歩き、油を入れた丸桶を天秤棒でになって、夕刻から売り歩いた。
七十一番職人歌合(1500頃か)七番「宵ごとに都に出づるあぶらうり更てのみ見る山崎の月」
② 無駄話ばかりしている者。怠け者
滑稽本・四十八癖(1812‐18)三「どれもどれも油売(アブラウリ)先生だよのう」

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改訂新版 世界大百科事典 「油売」の意味・わかりやすい解説

油売 (あぶらうり)

油の行商人,とくにその振売商人。古代から中世までは,油の原料はゴマエゴマなどが多く,おもに灯火用とされた。14世紀からは油座によって生産と販売が独占され,油売はこの油座から配給をうけて京をはじめ各地に行商した。近世に入って菜種油,綿実油の生産が増大,油座に代わって生産,流通の中心となった大坂油問屋から各地の問屋小売店に買い取られた。油売はこの卸売,小売から買い受けて,町中の小口の消費者に振売をした。曲物の塗桶天秤でかつぎ,藍木綿の着物に渋染の胸前垂れをしていた。子どもの胸前垂れやよだれかけを〈油屋さん〉〈あぶちゃん〉と呼ぶのはこれに由来する。仕事を怠けることを〈油を売る〉というのも油売の業態からきたことばである。油は曲物の桶にいれて担って売り歩いたので急いで歩くことはできず,また買手の容器に注ぐのにも小さいひしゃくを使ったので,時間がかかり,敏しょうな行動はできなかったからである。
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百科事典マイペディア 「油売」の意味・わかりやすい解説

油売【あぶらうり】

油(主に灯火用)を売り歩く行商人。油は中世まではゴマやエゴマが原料で,これを扱う油座が各地に現れ,なかでも山城大山崎(おおやまざき)の油座はほとんど全国的に活躍し,〈やまざき〉は油売の代名詞となった。近世に入り,菜種油や綿実油が進出し,特に摂津・河内・和泉が主産地となり,大坂に京口問屋,江戸口問屋,出油屋,原料買集めの両種問屋等が設立された。これらは株仲間を組織して販路と桶(おけ)の規格を統制し市場を独占,明治まで続いた。なお油売の風俗は《守貞(もりさだ)漫稿》によれば江戸,京,大坂とも同じ藍(あい)木綿に渋染の胸前垂をつけて,油桶を天びんでかついで歩いた。
→関連項目大山崎[町]

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