法然上人絵伝(読み)ホウネンショウニンエデン

デジタル大辞泉 「法然上人絵伝」の意味・読み・例文・類語

ほうねんしょうにん‐えでん〔ホフネンシヤウニンヱデン〕【法然上人絵伝】

法然上人生涯行状を描いた伝記絵。絵巻や掛幅などに系統を異にする多様の作品がある。特に、鎌倉末期ごろに作られた絵巻「法然上人行状絵図」48巻(知恩院蔵)はそれ以前のものを集大成したもので、法然・浄土宗・知恩院の三位一体関係を明らかにしている。

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精選版 日本国語大辞典 「法然上人絵伝」の意味・読み・例文・類語

ほうねんしょうにん‐えでんホフネンシャウニンヱデン【法然上人絵伝】

  1. 〘 名詞 〙 法然の一代記を中心に絵解きしたもの。法然賛仰と浄土信仰宣揚のために種々作られた。嘉禎三年(一二三七)に耽空が撰し、図絵は源光忠の手になる、原名「伝法絵流通」が最も古いが、原本は伝わっていない。そのほか増上寺本、琳阿本、弘願本などがあり、さらに従来の法然伝を集大成したのが後伏見上皇の勅修によると伝える「法然上人行状画(絵)図」四八巻(京都、知恩院蔵。国宝)である。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「法然上人絵伝」の意味・わかりやすい解説

法然上人絵伝
ほうねんしょうにんえでん

浄土宗の開祖、法然(源空)の生涯を説いたもので、絵巻、掛幅の形式がある。絵巻は法然没後25年目の1237年(嘉禎3)につくられた『法然上人伝法絵』(原本伝存せず)が初例で、その後、増上寺本二巻、琳阿(りんあ)本、弘願(ぐがん)本、また1301年(正安3)覚如(かくにょ)の撰(せん)になる『拾遺古徳伝』(1323年作の茨城・常福寺本が現存)など、浄土宗の発展とともに諸種の作品が数多くつくられた。とくに京都・知恩院に伝わる48巻本(法然上人行状絵図)は従来の法然伝を集大成したもので、法然、浄土宗、知恩院の三位(さんみ)一体の関係を明らかにしている。後伏見(ごふしみ)上皇の勅命により、叡山(えいざん)の舜昌(しゅんしょう)法印が起草集成し、詞書(ことばがき)は上皇はじめ天皇、法皇、公卿(くぎょう)ら八筆が分担執筆、絵は絵所に命じ、1307年(徳治2)から10年余りを費やして完成したとされる(『勅修吉水円光(きっすいえんこう)大師御伝縁起』による)。しかし実際には、鎌倉末から南北朝初期にかけて(14世紀前半)多数の画家が参与してつくられたものと思われる。法然絵伝のみならず、絵巻の歴史上でも最大の規模を誇り、またこの時期の大和(やまと)絵正系の画風を伝える意味でも重要である。国宝。このほか掛幅画の遺品としては、愛知・妙源寺本、三重・西導寺本などがあり、一般の布教に供されたことがわかる。

[村重 寧]

『小松茂美編『続日本絵巻大成1~3 法然上人絵伝』(1981・中央公論社)』


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改訂新版 世界大百科事典 「法然上人絵伝」の意味・わかりやすい解説

法然上人絵伝 (ほうねんしょうにんえでん)

新宗派浄土宗を立て,専修念仏を説いて念仏信仰を広めた,法然上人の生涯の行状を描いた絵巻。法然没後25年の1237年(嘉禎3)に作られた《法然上人伝法絵》(2巻,原本は遺らず)が最も早く,しだいに内容を増大させ,〈増上寺本〉,九巻本《法然聖人伝絵》(琳阿本),1301年(正安3)撰の《拾遺古徳伝》,《法然聖人絵》(弘願本,4巻が知られる)などの諸本,さらに全48巻の浩瀚な《法然上人行状絵図》(知恩院)に至るまで,浄土宗の発展とともに多種多様な傑作が生み出され広まっていった。それとともに鎌倉末期ころよりはじまる,絵巻の小画面を大画面に移した掛幅絵伝(妙源寺本,西導寺本など)にも見るべきものが多い。48巻本は先行の諸本を集大成する一方,さらに多くの場面を加えて総場面数230余にも及ぶ大規模なもので,法然の事跡を説くだけでなく,多くの弟子,帰依者のエピソードを収録し,知恩院を浄土教の総本山として教勢を拡大した鎮西派が強調されている。この絵巻はほぼ3期に分かれて増補・改変が加えられながら,半世紀近い年月を費やして14世紀半ばころに成立したと考えられる。したがって各巻,各段さまざまな作風が入り混じって,画家の数も10人以上にのぼり,14世紀前半ころの絵画表現の変遷がたどれる点,絵画史的に興味深い作例である。
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百科事典マイペディア 「法然上人絵伝」の意味・わかりやすい解説

法然上人絵伝【ほうねんしょうにんえでん】

浄土宗の開祖,法然の伝記絵巻。教説や弟子の伝記も含む。京都知恩院蔵。48巻。紙本着色。比叡山の舜昌法印が後伏見帝の勅により編集し,1307年から1310年にわたり製作したという。画は土佐吉光・行光,姉小路長隆・長章らの合作といわれ,当時の各種の画風を一望することができる。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「法然上人絵伝」の解説

法然上人絵伝
ほうねんしょうにんえでん

正しくは「法然上人行状絵図」。浄土宗の開祖,法然の伝記絵巻。48巻。後伏見上皇の勅命により,1307年(徳治2)に制作が開始されたと伝えるが,増補・改変が加えられ,最終的に完成したのは14世紀中頃と推定される。法然の伝記絵は,1237年(嘉禎3)の「法然上人伝法絵」(現存せず)をはじめとし,絵巻あるいは掛幅(かけふく)形式のものが数多く制作された。本絵巻は,先行する諸作品を集大成し,弟子や帰依者の往生伝をも含む最も大部な作品で,全長約520mにもおよぶ。絵は絵師十数名の合筆で,画風研究の資料として重要。縦約33cm,横各巻829.7~1319.7cm。知恩院蔵。国宝。

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旺文社日本史事典 三訂版 「法然上人絵伝」の解説

法然上人絵伝
ほうねんしょうにんえでん

浄土宗の始祖法然の行状と門弟たちの伝記を描いた絵巻物
数種類があり,いずれも上人を讃仰し浄土宗布教の方便となった。鎌倉末期作の京都知恩院蔵の48巻本は絵巻物中の最長編で,「勅修御伝」と呼ばれ有名。

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