日本大百科全書(ニッポニカ) 「洋紅石」の意味・わかりやすい解説
洋紅石
ようこうせき
carminite
鉛(Pb)と三価の鉄(Fe3+)の含水ヒ酸塩鉱物。モービ石mawbyite(化学式Pb(Fe3+,Zn)2[OH|AsO4]2)と同質異像関係にある。自形はb軸に扁平(へんぺい)、c軸方向に伸びた長板状~針状。これが放射状集合をなす。熱水鉱脈あるいは気成鉱脈型鉱床の酸化帯に他の鉛の二次鉱物と共存し、複雑な二次鉱物の組合せをつくることが多い。日本では宮崎県西臼杵(うすき)郡高千穂(たかちほ)町黒葛原(つづら)鉱山(閉山)、大分県佐伯(さいき)市木浦(きうら)鉱山(閉山)などから産する。
共存鉱物は、ビューダン石、スコロド石、ミメット鉱、アーセニオシデライトarseniosiderite(Ca2Fe3+3[O2|(AsO4)3]・3H2O)、白鉛鉱、硫酸鉛鉱、黄鉛鉱などがある。同定はその特徴的な深赤色による。ときに赤褐と記載されたものもあるが、モービ石が混入したものを観察した可能性がある(モービ石の発見は1989年)。条痕(じょうこん)はやや黄色味を帯びる。劈開(へきかい)が通ったものはやや真珠光沢となる。英名は、深赤色名(カーマイン・レッドcarmine red)による。
[加藤 昭 2018年10月19日]