◎消化器系の薬とは
口から食道、胃、腸、肛門にいたる臓器(消化管)と、消化液の分泌に関係する唾液腺、膵臓、肝臓、胆嚢などの臓器を消化器と総称します。
消化器の病気には、食欲不振、胃炎、消化性潰瘍(胃・十二指腸潰瘍)、消化不良、下痢、便秘、肝炎、胆嚢炎、胆石症、膵炎など、さまざまなものがあります。
食欲不振の原因は、胃腸の病気のほか、感染症、神経症などの病気や、薬の副作用などのこともあります。こうした食欲不振の治療に用いられる薬を健胃消化剤といいます。
胃炎は、消化器の病気の中ではもっともポピュラーなもので、胃痛、吐き気・嘔吐、食欲不振などの症状をおこします。食べ過ぎや消化の悪い食物の摂取などが原因になりますが、ストレスが誘因になっているケースも少なくありません。胃炎の治療には、制酸剤、健胃消化剤のほか、抗不安剤、鎮吐剤なども用いられます。
消化性潰瘍(胃・十二指腸潰瘍)も、ひじょうに多い病気です。いろいろな消化性潰瘍治療剤が開発され、薬物による治療が主流になっています。
下痢は、細菌の感染、食中毒、胃腸の病気などが原因となっておこりますが、精神的ストレスによるケースもあります(過敏性腸症候群)。原因によって、細菌の感染であれば抗生物質、ストレスであれば抗不安剤、消化不良であれば健胃消化剤などが使用されますが、激しい下痢や長く続く下痢には止痢剤、腸粘膜保護剤、整腸剤、抗コリン剤などが用いられます。
便秘は、本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態で、原因には胃腸の病気のほか、神経症、薬の乱用や副作用、ストレス、不規則な食生活などがあげられます。とくに高齢者の便秘が多くなっていますが、薬の服用による影響も見逃せません。便秘の治療に用いる薬を下剤といい、腸の運動を刺激したり、水分の吸収を抑制して、便の排泄を容易にします。現在使用されている下剤は、おだやかな作用で刺激の少ないものが中心ですが、習慣性や依存性があるので、安易に薬に頼らない生活態度も大切です。
胆嚢炎、胆石症は、日本人の食生活の欧米化に伴って増加しています。これらの病気は激しい痛みを伴うので、痛みを抑える目的で強力な催眠鎮静剤や膵・胆道系鎮痙剤が使用されます。
また、発熱を伴うときには抗生物質が、黄疸を伴うときには利胆剤、健胃消化剤などが、さらに一部の胆石症には、結石を溶かす胆石溶解剤も使用されます。
肝炎には急性肝炎と慢性肝炎があり、原因はほとんどがウイルスですが、アルコールや薬物によるものもあります。治療には、肝臓病治療剤が使用されますが、薬物療法は、以前に比べて確実な治療効果をあげるようになってきました。
膵炎は、膵臓内で活性化された消化酵素が膵臓自身を消化してしまう病気で、上腹部に激しい痛みを伴い、重症になると肺、腎臓、心臓など多くの臓器に障害を引きおこします。治療には、鎮痛剤、抗生物質などの化学療法剤、抗酵素剤などが使用されますが、脂肪食の制限、アルコール飲料やコーヒーなどの禁止といった食事療法も必要です。
健胃消化剤
消化性潰瘍治療剤(抗潰瘍剤)
整腸剤・止痢剤
下剤(便秘治療剤)
利胆剤
肝臓病治療剤
膵臓病(膵炎)治療剤