熨斗目(読み)ノシメ

デジタル大辞泉 「熨斗目」の意味・読み・例文・類語

のし‐め【熨斗目】

練貫ねりぬきの平織り地。また、これで仕立てた腰替わり小袖。腰のあたりに多くは筋や格子を織り出したもので、江戸時代、武士礼装の大紋や麻裃あさがみしもの下に着用した。現在は宮参り七五三男児の祝い着に用いられている。
能および狂言装束の一。水衣みずごろも素袍すおうの下に着付けとして用い、身分の高くない男役が着る。藍・白・茶などの横段のある段熨斗目、紺無地の無地熨斗目、全体が格子縞縞熨斗目の3種がある。

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精選版 日本国語大辞典 「熨斗目」の意味・読み・例文・類語

のし‐め【熨斗目】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 練緯(ねりぬき)で生地を平らにのして縮みのない綾。
    1. [初出の実例]「宿老の人はしじらなき熨斗目の綾をも着するなり」(出典:桃花蘂葉(1480)束帯色目)
  3. 地質腰替り着物。腰のあたりに、縞や格子を織り出したもので、江戸時代には武士の小袖として麻上下(あさがみしも)の下に着用した。
    1. 熨斗目<b>②</b>〈南紀徳川史〉
      熨斗目〈南紀徳川史〉
    2. [初出の実例]「ことさら俄か目見えの熨斗目(ノシめ)、いそぎの羽織などは」(出典:浮世草子・日本永代蔵(1688)一)
  4. 能装束狂言装束の一つ。身分の高くない男役で、水衣(みずごろも)素襖(すおう)の下着に用いる小袖。紋はつけない。段熨斗目、無地熨斗目、縞熨斗目の三種がある。

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改訂新版 世界大百科事典 「熨斗目」の意味・わかりやすい解説

熨斗目 (のしめ)

本来は経(たて)に生糸,緯(よこ)に半練糸を用いて,縞あるいは段文様を織りだした平地あるいは縬(しじら)地の絹織物をさすが,これらの織物で仕立てた小袖も〈熨斗目小袖〉,略して〈熨斗目〉と称する。熨斗目小袖には〈無地熨斗目〉と,〈腰替り〉といって,腰の部分だけに格子や段,縞,絣などの文様を織りだしたものとがある。熨斗目小袖は室町時代のころから,大紋や素襖(すおう)の下に着用されるようになり,江戸時代には武家の男子の礼装である大紋,素襖,裃(かみしも)の下に必ず着用されるようになった。また能装束の着付として用いられる熨斗目は,形態は武家のものと変わりがないが,舞台衣装としての性格上いくぶん派手な意匠となっている。例えば腰替りは,機織前に経糸をその部分,糸で括って染め分ける,いわゆる締切りの技法によるものであるが,同じ技法で腰だけでなく,全体に大胆な色どりの段をくり返したり,全体を格子とした華やかなものなどもある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「熨斗目」の意味・わかりやすい解説

熨斗目
のしめ

腰の部分だけに縞(しま)や格子模様を織り出した絹織物の小袖(こそで)を熨斗目小袖、あるいは単に熨斗目という。これは元来、武士が大紋・素襖(すおう)あるいは裃(かみしも)の下に着用した小袖で、室町時代に始まったものといわれている。

 なお、こうした熨斗目のほかに染熨斗目とよばれるものがある。これは白生地(きじ)に後染めで熨斗目風な模様を染め出したもので、明治以後、男子の産着、または七五三の祝い着などに用いられているものである。今日、熨斗目といえば染織に関係なく、広く腰替りの意匠をさすようになった。

村元雄]

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百科事典マイペディア 「熨斗目」の意味・わかりやすい解説

熨斗目【のしめ】

着物の模様の一種。袖(そで)下から腰にかけて横一文字に模様をあらわしたもの。経(たて)に生糸,緯(よこ)に半練糸を用いて縞(しま)や段の模様を表した絹織物。また,この織物で仕立てられた小袖のこともさす。熨斗目小袖は江戸時代には士分以上の者の礼服として麻(かみしも)の下に用いられたが,現在では男児の祝着などに用いる。能装束の場合は模様の位置や幅は一定していない。
→関連項目素襖

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世界大百科事典(旧版)内の熨斗目の言及

【絣】より

…平安時代には絣糸を装束の平緒の唐組(からぐみ)などの組紐に使った例が認められる。室町時代中期以降になると絣糸による織物が熨斗目(のしめ)風な腰替りや,段文様の小袖などに見られるようになる。この絣は今日俗に〈締切(しめきり)〉といわれている手法で,織幅いっぱいの経糸をまとめて縛って染め分け,織るときに経糸の染分けに従って同色の緯糸を織り込む,いわば織幅いっぱいの経緯絣である。…

【着物】より

…ことに江戸時代初期のころは,はっきり区別され,支配者である武士社会の内部でも将軍,大名から下士,若党にいたるまで数多くの段階にわかれ,町人社会も大店(おおだな)の主人と番頭と手代,職人は棟梁(とうりよう)と弟子,農民は地主と自作と小作など,それぞれ服装に相違があった。たとえば白無垢(しろむく)の肌着は四位以上,それも大名は嫡男とかぎられ,熨斗目(のしめ)(腰に横縞または縦横縞のあるもの)は身分ある武士の式服であり,綸子(りんず)は一般武士には許されないなどである。地質(じしつ)の順位は綸子,羽二重(はぶたえ),竜文絹,二子(ふたこ)絹,紬(つむぎ)の順で,以下,麻および木綿となる。…

※「熨斗目」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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