(読み)シャク

デジタル大辞泉 「爵」の意味・読み・例文・類語

しゃく【爵】[漢字項目]

常用漢字] [音]シャク(漢)
スズメの形をした酒器。さかずき。「罰爵
貴族の身分を示す位。「爵位栄爵襲爵叙爵人爵男爵天爵伯爵
[名のり]くら・たか

しゃく【爵】

中国古代の温酒器。3本足の青銅器で、いん代から代にかけて祭器として盛行した。
中国古代の諸侯またはその臣の身分を表す称号。周代には、諸侯は公・侯・伯・子・男の五等、臣下けい大夫たいふ・士の三等があった。
明治憲法で定められた華族の世襲的身分階級。公・侯・伯・子・男の五等があった。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「爵」の意味・読み・例文・類語

しゃく【爵】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ( 「爵」はスズメの意 ) スズメをかたどった、青銅や木製の三本足の酒器。古代中国の殷・周代に青銅製のものが用いられ、身分によって神酒を受ける順序や量を区別した。
    1. 爵<b>①</b>〈和漢三才図会〉
      〈和漢三才図会〉
    2. [初出の実例]「銀爵壱枚」(出典:大安寺伽藍縁起并流記資財帳‐天平一九年(747))
    3. [その他の文献]〔礼記‐礼器〕
  3. 位。官位。地位。
    1. [初出の実例]「爵我空崇品、官誰只備員」(出典:菅家後集(903頃)叙意一百韻)
    2. 「其の賞皆均しく其の爵(シャク)是同かるべき処に」(出典:太平記(14C後)一三)
  4. 爵位。
    1. (イ) 中国古代の諸侯またはその臣下の世襲の身分階級。諸侯には、公爵侯爵、伯爵、子爵、男爵の五等、臣下には、卿(けい)、大夫(たいふ)、士の三等があった。
      1. [初出の実例]「魏の明元帝の代に法果と云ふ僧、安城公の爵をたまはる」(出典:神皇正統記(1339‐43)中)
      2. [その他の文献]〔書経‐武成〕
    2. (ロ) 日本で、明治憲法による華族の世襲的身分階級。公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵の五等があった。五爵。五等爵。
      1. [初出の実例]「拙者儀苟も華族の爵(シャク)を汚し候限は」(出典:諷誡京わらんべ(1886)〈坪内逍遙〉二)
    3. (ハ) 広く、爵位や身分の称号などをいう。
      1. [初出の実例]「近世は諸王子及羅徳勿吉(ローデウヱーキ)十四世王の裔は、皆此爵に敍せらるを以て」(出典:輿地誌略(1826)六)

さく【爵】

  1. 〘 名詞 〙 位階。位。しゃく。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

普及版 字通 「爵」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 17画

(旧字)
18画

[字音] シャク
[字訓] さかずき

[説文解字]
[甲骨文]
[金文]

[字形] 象形
酒器の爵の形に象る。〔説文〕五下に「禮なり」とし、字の上部を雀の形、中を鬯酒(ちようしゆ)の形、それに(ゆう)(手)を加えた会意の字とし、の音は雀(しやく)、器形を雀に象るものであるという。〔段注〕にも、首尾啄翼など具(つぶ)さに備わるというが、卜文・金文字形に明らかなように、爵の象形である。ただ〔孟子、離婁上〕に「(雀)を(か)る」のように、を雀に通用する例もあるが、それは字の音を借りたものにすぎない。古くは爵酒を賜うことを以て恩賞としたが、のち五等の爵制となった。爵は殷器にすぐれたものが多く、古くは酒礼・酒儀が盛んであったのであろう。爵は一升、(こ)は二升、(し)は三升、角は四升、散は五升を容れ、みな酒器である。

[訓義]
1. さかずき、酒杯、儀礼のとき用いる。
2. 爵位、五等の爵、くらい。
3. 雀と通じ、すずめ。

[古辞書の訓]
名義抄 ツカサ・シナカブル・サカヅキ・スズミ

[声系]
〔説文〕に声としての三字を収める。と同じく、声はその形況を示すものであろう。

[語系]
・雀tzikは同声。またtzik、dzikはtjikと声義の近い字である。

[熟語]
爵位・爵・爵貴・爵穴・爵減・爵号爵釵・爵次・爵耳・爵室・爵主・爵賞爵秩・爵・爵土・爵等・爵頭・爵服・爵弁爵封・爵命爵躍爵邑爵踊爵羅・爵里・爵列・爵禄
[下接語]
栄爵・角爵・官爵・揮爵・挙爵・玉爵・金爵・勲爵・献爵・五爵・公爵・侯爵・子爵・酒爵・授爵・襲爵・叙爵・觴爵・人爵・尽爵・世爵・贈爵・卒爵・尊爵・男爵・鬯爵・滌爵・天爵・爵・伯爵・封爵・列爵・禄爵

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「爵」の意味・わかりやすい解説


しゃく
jue

中国古代の3足の酒器。注口,角,取手がつき,殷,西周初頭に顕著にみられる。青銅製と陶製のものがある。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のの言及

【角杯】より

…ギリシア語ではリュトンrhytonといったが,それは〈獣角〉の義であった。中国では各種の杯(飲酒器)を獣角でつくったことは,杯の名称に觚(こ),觶(し),角(爵)など,角に関係した文字があるので知られる。しかし殷(いん)の青銅器の杯はすでに相当進化していて,獣角のなごりは求めにくい。…

【酒器】より

…土器の出土品には甕,壺,坏(つき)(杯)など酒器として使用されたと推定されるさまざまなものがあるが,これらは酒にかぎらず一般の飲食器としても当然使用されていたであろう。古代中国の青銅器などに見られる爵(しやく),尊(そん)といった酒器が,なによりもまず祭祀のために用いられたことは,酒が神聖な飲料であったことからみて当然であり,今日の日本でも正月や結婚式の慶事に神酒を盛った銚子や坏など,神前の酒器で寿(ことほ)ぐのもその古制によることを示唆している。 現在では徳利を銚子と呼ぶことも多いが,徳利と銚子とはもともと別物であった。…

【青銅器】より

…青銅の使用が盛んになるに従ってその類の器は青銅製に変わってゆく。前2千年紀の中ごろ,青銅の使用が始まると同時に青銅製のものが多数作られ始めるのは大型の酒つぼ(有肩尊(ゆうけんそん)),酒を温めて注ぐための注ぎ口と三足をもった容器(爵(しやく)),酒の燗をするためのものと思われる大型の三足器(斝(か)),肉を煮るための三足のなべ(鼎(てい))である。 この時期の青銅容器は薄手に作られ,文様は凸線ないし版木のように上面の平らな幅広い帯で表され,抽象的な表現の目鼻をもった神像(饕餮(とうてつ)文)を主にし,種類の変化はあまり多くなく,簡素な感じのものである。…

※「爵」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android