司法裁判所の中で通常裁判所の系列の外に置かれ,特別な事件についてだけ裁判権を有する裁判所。大日本帝国憲法は,行政事件処理のために行政裁判所を司法裁判所の外に設けるとともに,法律によって特別裁判所を設けることをも許した(大日本帝国憲法60,61条)。その結果,陸海軍の軍人・軍属の刑事事件を扱う軍法会議や皇族間の民事訴訟を管轄する皇室裁判所が特別裁判所として設けられた。しかし,特別裁判所は法の下の平等に反し,法の解釈の統一を妨げるので,現行憲法は特別裁判所の設置を禁止し,また,行政機関は終審として裁判することはできないこととした(日本国憲法76条2項)。その結果,現在では,あらゆる民事・刑事・行政事件が通常裁判所に属することになっている。通常裁判所とは,最高裁判所を頂点に,それと,高等裁判所,地方裁判所,家庭裁判所および簡易裁判所をいう。家庭裁判所は,特定の種類の事件(家庭事件,少年事件)のみを扱うが,その裁判に対しては高等裁判所,最高裁判所に不服申立てができる。そこで,これは通常裁判所の系列に属するということができ,特別裁判所ではない。
→行政裁判
執筆者:青山 善充
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
一般的に司法権を行う裁判所(通常裁判所)の系統の外にあって、特殊の人、特殊の地域、特殊の事件だけについて裁判をする特別の系統の裁判所をいう。たとえば明治憲法下での、皇族についての皇室裁判所、軍人についての軍法会議、外地にだけ裁判権をもつ外地裁判所、行政事件についてだけ権限をもつ行政裁判所などがこれであった。現行日本国憲法では、「特別裁判所は、これを設置することができない」(76条2項)として、その設置が禁じられている。しかし、特別の種類の事件だけを扱う裁判所であっても、最高裁判所の下にある下級裁判所として裁判所法により設置されたもの(例、家庭裁判所)は、特別裁判所ではないと解されている。
[内田武吉]
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[裁判所の類型]
裁判所という用語の示す概念を要説すると,次のような分化が指摘できよう。まず,憲法上に特別裁判所の概念が示されており,これは通常裁判所と対立するものである。非常の事件が起きたときにその事件だけのために臨時に設置される裁判所や,常設でも特殊な性質の事件のみ,あるいは特別身分の者にかかわる事件のみを対象とする裁判所を特別裁判所という。…
※「特別裁判所」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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