け‐だ‐もの【獣】
〘名〙
※
書紀(720)皇極元年五月(岩崎本訓)「慈
(うつくしび)無きが甚だしきこと、豈
(あに)禽獣(ケタモノ)に別
(ことならむ)や」
② 特に、
家畜をいう。〔十巻本
和名抄(934頃)〕
③ (
人間のもっている
信義、
情け、
理性などが無い生き物の意) 人間的な
情味のない人をののしり、あざけっていう。また、
遊女や
高利貸しなどを卑しめたり、一般的に他人をあざけり卑しめていう場合にも用いられる。人でなし。
※雑俳・柳多留‐一三(1778)「いろいろな
けだものの来る親の留守」
[語誌](1)同様の意味を表わすケモノの形と平安時代初期以来今日に至るまで
共存している。共存の理由も含めて両者の意味の
相違はよく解明されていない。
(2)
語源は「毛ダ物」であろうが、連体格表示に用いられる助詞ダについてはクダモノのほかは例を見ない。
け‐もの【獣】
※書紀(720)神代上(水戸本訓)「
顕見(うつしき)蒼生(あをひとくさ)、及ひ
畜産(ケモノ)の為
(ため)は、則ち、其の病
(やまひ)を療
(をさ)むる方
(さま)を
定む」
じゅう ジウ【獣】
〘名〙 全身が毛におおわれている四足の哺乳
動物。けだもの。けもの。〔
書経‐武成〕
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
デジタル大辞泉
「獣」の意味・読み・例文・類語
しし【▽獣/×猪/▽鹿】
《「肉」と同語源で、それをとる獣をいう》
1 けもの。けだもの。特に、肉の美味な、猪・鹿。《季 秋》
2 「猪狩り」の略。
「ことに―の上手にて、力のつよきこと」〈曽我・四〉
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けもの【獣】
毛物の意味で《和名抄》は毛皮ある動物の総称とし,そのうち家畜を〈けだもの〉としており,《伊呂波字類抄》《和漢三才図会》もこれにならっている。これに対して《和訓栞》は,獣類の総称を〈けだもの〉,家畜を〈けもの〉という俗言のほうが,《日本書紀》の訓のとおりであるから,このほうがむしろ当たっていると論じ,結局両者同じものを指すとした。《古事記伝》も同じ結論をとっている。この点で《大祓詞》に家畜を殺すことを〈けものたおしの罪〉と述べていることは,これが家畜をとくに指すことばであった証例のように思われ,〈けだもの〉のほうを野獣までを含めた四つ足の毛皮獣の総称とする《和訓栞》の説が適当なものと判断される。
出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報