ふつうの浅発地震では,地震動は震央の付近でもっとも強く,震央から離れるにつれて弱くなり,遠い地点では人体に感じられない。ところが深発地震では,震央の付近では無感であるのに,数百kmも離れた地域で感じられ,震度3~4に達することもある。このように地震動が異常に強く感じられる地域を異常震域という。たとえば,岐阜県下に深発地震が起こると,富山,岐阜,愛知県以西では無感であるが,東京,宇都宮,水戸,福島,仙台などでは人体感覚があり,時には八戸,釧路などでも感じられる。このように関東・東北・北海道地方の太平洋側が異常震域になるのは,日本海やロシア沿海州あるいは東海道南方沖などに起こる深発地震の際も同様である。九州や南西諸島方面の深発地震では,九州・四国の太平洋側が異常震域になる。深発地震に際して島弧の海溝側に異常震域が現れることは,ニュージーランドなどでも認められている。
異常震域の原因はプレートテクトニクスによって説明される。島弧地域では,大洋プレートが海溝付近から上部マントル中に斜めに潜り込んでいる。深発地震の地震波は,地震波の吸収の少ない大洋プレートの中を伝わって,島弧の海溝側の地域に到達する。一方,島弧の大陸側の地域には,吸収の大きい上部マントルを通過した地震波が到達する。潜り込んだ大洋プレートとその周辺の上部マントルの地震波の吸収の差が異常震域を生じさせる主因である。
執筆者:宇津 徳治
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地震動は一般に震央に近いほど強い。しかし震央から比較的遠いにもかかわらず広い範囲で異常に大きな震度が観測されることがある。この地域を異常震域という。異常震域をおこす地震は深い震源をもつ地震に多く、北海道、東北、関東地方の太平洋岸の地域は異常震域になりやすい。減衰の少ない物質が震源付近に存在し、ある特定の方向へ広がっているとすると、その方向へ放射された波は減衰されないで遠くまで伝わり、震央付近であるにもかかわらず減衰の大きい物質内を通った波より強い振動を引き起こす。これが異常震域をつくりだす原因であると考えられている。この減衰の少ない物質は日本海溝付近で日本列島の下に沈み込んでいる厚さ100キロメートル程度の太平洋プレートであるといわれている。
[山下輝夫]
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(2019-7-30)
(阿部勝征 東京大学教授 / 2007年)
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