日本大百科全書(ニッポニカ) 「當麻」の意味・わかりやすい解説
當麻
たいま
奈良県北西部、北葛城郡(きたかつらぎぐん)にあった旧町名(當麻町(ちょう))。現在は葛城市(かつらぎし)の北部を占める一地区。1966年(昭和41)町制施行。2004年(平成16)新庄(しんじょう)町と合併、市制施行して葛城市となる。旧町域は、金剛(こんごう)山地の二上(にじょう)山・岩橋山東麓(とうろく)から奈良盆地の一隅を占める。大阪府と接し、近畿日本鉄道南大阪線・御所(ごせ)線、国道165号、166号、168号が通じ、南阪奈道路の葛城インターチェンジがある。二上山の南麓、大阪府との境にある竹内(たけのうち)峠は、古代の官道(江戸時代の竹内街道)が通じ、大和(やまと)と河内(かわち)を結ぶ要地であった。二上山一帯は金剛生駒紀泉(こんごういこまきせん)国定公園域。農業が主体で、米作のほか野菜・花卉(かき)栽培が盛ん。とくにキク栽培は有名。アイリス、スイセン、庭木などもある。工業では靴下製造が盛ん。二上山麓の當麻寺(たいまでら)は、東西両三重塔、本堂、本尊の塑像弥勒仏坐像(みろくぶつざぞう)、綴織(つづれおり)當麻曼荼羅(たいままんだら)図、當麻曼荼羅厨子、梵鐘、倶利伽羅竜蒔絵経箱(奥院所有)の国宝8件をはじめ、中之坊庭園(史跡・名勝)ほか数多くの重要文化財などを有する古刹(こさつ)で、5月14日には中将(ちゅうじょう)姫ゆかりの練供養会式(ねりくようえしき)が行われる。また、北方の石光(せっこう)寺とともにボタンの名所として知られ、訪れる観光客が多い。當麻は相撲(すもう)の開祖とされる當麻蹶速(けはや)ゆかりの地で、市立博物館の相撲館「けはや座」がある。
[菊地一郎]
『『當麻町史』(1976・當麻町)』