中・近世の古文書様式の一つ。発給者自身が直接差し出す文書の総称。直状(じきじよう),直札(じきさつ)ともいう。奉行などの家臣が主人の仰せを奉じて出す奉書あるいは副状(そえじよう)などの間接的な文書と対比される。古文書学上,書状と称してはやや不適切な文書をこの名称で呼ぶ。また判物(はんもつ),書下(かきくだし)との区別も必ずしも明確ではない。佐藤進一によれば,直書は文章のおわりが〈……也,仍状如件〉とか〈……之状如件〉と終わり,日付を月日だけでなく年月日すべてで示すのが書状との違いであるとする。広義に解すれば,差出者の花押,もしくは印の据えられた,奉者の存在しない中世・近世文書で上記の条件を備えたものといえよう。書状が純粋に私用の文書で十分な効力をもたぬのに対し,直書は差出者の命令を下へ向かって伝達し,権利の付与,その執行などの機能をもつ文書といえる。
執筆者:高橋 正彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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