(読み)じき

精選版 日本国語大辞典「直」の解説

じき ヂキ【直】

[1] 〘名〙
② 「じきい(直位)」の略。
書紀(720)武一四年三月(北野本南北朝期訓)「京職大夫(みさとのつかさのかみ)(チキ)大参(たいさん)巨勢の朝臣辛檀努卒」
※高野山文書‐久安二年(1146)六月二八日・阿闍梨寂然田畠売券「右件田畠、乗薀房七間二面房一宇為直、限永代沽却也」
※金(1926)〈宮嶋資夫〉一一「そりゃ当り前のことやないか、定期を張ったかて直(ヂキ)を張ったかて、客はちゃんと口銭を払ふとる」
[2] 〘形動〙
① まっすぐであるさま。一直線であるさま。
※太平記(14C後)一三「両の耳は竹を剥で直(ヂキ)に天を指し」
② 時をあまりおかないで物事が実現するさま。→じきに(一)。
③ 間に人や物などを入れないでするさま。直接であるさま。じか。
※平家(13C前)六「ぢきの御返事を承はらで帰りまいらん事こそ、よに口おしう候へ」
大塩平八郎(1914)〈森鴎外〉一「お奉行様にぢきに差し上げる書付があるのだな」
④ 関係が近接しているさま。また、弟姉妹などで、すぐ上または下であるさま。
※婦系図(1907)〈泉鏡花〉前「第一の姉が医学士さね、直(ヂキ)の妹の縁付いて居るのが理学士。其の次のが工学士」
⑤ 性質などがすなおであるさま。正直であるさま。
※今昔(1120頃か)二〇「其の女、遂に心直(ぢき)なる故に、神仙此を哀て、神仙に仕ふ」
[3] 〘〙 あまり時間や距離をおかないさまを表わす語。すぐ。すぐに。まもなく。
(イ) (体言を修飾して) 空間的に隔たりの少ないさまを表わす。
※洒落本・南極駅路雀(1789)「ぢきとなりのむら田の内へあがる」
(ロ) (動詞を修飾して) 時間的に隔たりの少ないさまを表わす。
※滑稽本・八笑人(1820‐49)二「かう手をかけて、ヤ、かうねぢるとぢきはなれらア」
[語誌](1)漢語「直」の呉音に由来する。現在は、和語の「すぐ(直)」が即刻を表わすのに対して、「じき」はいくらか時間があるという差異がある。
(2)「すぐ」「じき」とも、本来、時間的な味はなかったが、即刻・即時の意味を表わす「やがて」に代わって用いられた。「すぐに」は中世に入って発生したが、「じきに」は江戸時代中期ごろから使われたか。江戸時代前期の近松作品では、「じき(に・の)」を直接・じかにの意味に、「すぐに」を即刻・即時の意味に使用している。

すぐ【直】

[1] 〘形動〙 まっすぐで曲がっていないさま。
① ものが図形的に直線的で曲がっていないさま。
※平仮名古活字三巻本宝物集(1179頃)中「麻の中の蓬は、撓(た)めざるにすぐなり」
② 比喩的に、まっすぐで、曲がっていないさま。
(イ) 心がまっすぐで正しいさま。すなお。正直。
※浜松中納言(11C中)三「おほやけの御ため、すぐならぬうれへをおひ給ひて」
※夜明け前(1932‐35)〈島崎藤村〉第一部「古代の人に見るやうなあの直(ス)ぐな心は」
(ロ) 政治や世の中などが公平で正しいさま。
※新後撰(1303)雑中・一四三五「梓弓心のひくにまかせずは今もすぐなる世にやかへらん〈平宗宣〉」
(ハ) 倫理的に正しいさま。
※どちりなきりしたん(一六〇〇年版)(1600)七「すぐなるだいもくありとても、ゆみやをとるべからず」
(ニ) 物事のでき具合、姿が、まっすぐで正しいさま。
※古今連談集(1444‐48頃)下「いかなる人も堪能の座に身を置かずしてはすぐなる方に入がたし」
③ やり方に曲折がなく、まっすぐなさま。
(イ) やり方に変化が少なく、自然で、すなおなさま。いやみのないさま。
※風姿花伝(1400‐02頃)六「すぐなる能には〈略〉音曲の懸りだに確やかならば、これよかるべし」
(ロ) 変化を加えず、ありのままのさま。そのまま。
※平家(13C前)二「すぐにしらせ奉てはあしかりなんとやおもひけむ」
(ハ) 簡単で手間がかからないさま。通り一遍なさま。多く、打消の形で用いる。
※浄瑠璃・本朝二十四孝(1766)一「村上左衛門義清直(スグ)では行かぬ頬(つら)魂」
[2] 〘副〙 (「と」「に」「の」「から」を伴って用いることもある。→すぐとすぐに)
① 時間を置かないさまを表わす。ただちに。即刻。
※浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉一「一口いふ二口目にゃ速(ス)ぐ悪たれ口だ」
② 距離を置かないさまを表わす。
※門三味線(1895)〈斎藤緑雨〉五「店から直(ス)ぐの梯子を登れば」
③ 間にほかのものをはさまないさまを表わす。直接。じか。→すぐに②。
※薄明(1946)〈太宰治〉「その男の子のすぐ上の姉で」

なおし なほし【直】

〘名〙 (動詞「なおす(直)」の連用形の名詞化)
① なおすこと。まっすぐにすることや、正しくすること、修理すること、などをいう。
※栄花(1028‐92頃)初花「造物所のものども御覧じては、なをしせさせ給へるを」
② 広く器物の修理を業とする者を呼ぶ。「傘なおし」「錠前なおし」など。
※雑俳・柳多留‐一六(1781)「直しよとよべば錠まへはらをたち」
※雑俳・羅衣(1834‐44)初「盛り・朝っぱらから直しを引っかけ」
④ 江戸時代、芸娼妓をあげて、一定の時間遊んだあと、さらに遊びの時間を延長すること。普通「おなおし」という。
※洒落本・部屋三味線(1789‐1801頃)「昼仕舞のお客は暮迎に帰りそびれてぜひ直しになるものさ」
⑤ 歌舞伎で、狂言方が開幕前に知らせの拍子木を打ちながら舞台に行き、大道具その他が整ってから、下座の前で間を短く二つ打つことをいう。これを合図に開幕の音楽が始まる。
※歌舞伎・月梅薫朧夜(花井お梅)(1888)二幕「此時うしろにて幕明きの、直(ナホ)しの拍子木聞えて」
⑥ 「いろなおし(色直)」の略。
梓巫(あずさみこ)のことをいう。
※物類称呼(1775)一「梓巫〈略〉中国にて、なおしと云」

あたい あたひ【直】

〘名〙 大化前代、県主(あがたぬし)などの地方豪族に与えられた(かばね)の一種。あたえ。あたいえ。
※書紀(720)雄略二三年八月(前田本訓)「大伴室屋大連、東漢掬直(やまとあやのつかのアタヒ)とに遺詔(のちのみことのり)して曰く」
[語誌](1)五~六世紀と見られる和歌山県隅田八幡宮蔵人物画像鏡銘に「開中費直」とあり、「書紀‐欽明二年七月」に河内直の中に「百済本記」を引用して「加不至費直(内閣本訓あたひ)」が見えるところから、この語は遅くとも六世紀の初めまで遡ることができる。
(2)「書紀」では普通「直」が用いられるが、法隆寺金堂の四天王像の銘文には「費」ともあり、「続日本紀‐神護景雲元年三月乙丑」には「追注凡費。情所安。於改為栗凡直」と「費」の字を「直」に改めてほしいとの記述が見える。
(3)「書紀」では前田本、北野本など院政期の古訓に「あたひ」「あたひえ」が見られるが、「あたえ(へ)」の確例は時代がずっと下る。最近まで「あたえ」が主に用いられていたのは、あるいは本居宣長「古事記伝」によるものか。

ちょく【直】

〘名〙
① (形動タリ) まっすぐなこと。また、そのさま。
※小学読本(1884)〈若林虎三郎〉二「君は輪を急に廻せ。余は毬を直に投げん」
※純情小曲集(1925)〈萩原朔太郎〉大渡橋「ここに長き橋の架したるはかのさびしき惣社の村より直(チョク)として前橋の町に通ずるならん」
② (形動) 心、考えなどがまっすぐなこと。正しいこと。また、そのような人やさま。⇔
※玉葉‐治承四年(1180)一二月三日「不時勢直言、感而有余、誠是諫諍之臣也。可直可直」
※滑稽本・浮世風呂(1809‐13)四「一体の性根は直(チョク)なお方ぢゃナ」 〔書経‐舜典〕
③ (形動) 安直なこと。手軽なこと。安価ですむこと。また、そのさま。
※師郷記‐応永三二年(1425)八月一四日「余焔一条面北頬於在家火止了、事之次第非直也。天下之驚歎、只在此事者也」
④ (━する) 当番で任務につくこと。
※続日本紀‐大宝三年(703)八月甲子「大宰府請、有勲位者作番直軍団

ひた【直】

〘語素〙 名詞、またはこれに準ずる語、まれに動詞の上に付いて、それに徹したさまを表わす。
① 直接であるさま、じかにそれが接しているさまをいう。「ひた土」「ひたおもて」など。
② まっすぐであるさま、一方的であるさまをいう。「ひた使い」「ひた道」など。
③ ある物の全面にわたっているさまをいう。「ひた白」「ひた黒」など。
④ 純粋な、他のものをまじえないさまをいう。「ひたさお」「ひたかぶと」など。
⑤ 主として、動詞連用形から変化した名詞の上に付いて、そのような動作がもっぱら行なわれているさまをいう。「ひた照り」「ひたおもむき」など。
⑥ ⑤に、同じ動詞を重ね、「…に…する」の形で、もっぱらその行為をする、はなはだしくする意を表わす。「ひた押しに押す」「ひた泣きに泣く」など。また、これを動詞化して「ひた走る」「ひた泣く」などとも用いる。
[補注]語源は「一(ひと)」の交替形というが有力。

なお なほ【直】

[1] 〘形動〙 折れ曲がりや曲折のないさま。まっすぐなさま。→なおなおまなお
[2] 〘副〙
① とり立てて見るべき所のないさまを表わす。特にどうということなしに。平凡に。ありきたりに。
伊勢物語(10C前)三九「天の下の色好みの歌にては猶ぞありける」
② とり立てて言うべき、言動工夫をしないさまを表わす。何もしないでむなしく。まったく工夫をこらさないで。
万葉(8C後)七・一三四九「斯くしてや尚(なほ)や老いなむみ雪降る大荒木野の小竹(しの)にあらなくに」
[補注](一)の実例は「万葉集」に「なおなお」「まなお」の形で見られ、これは形容詞「なほし」の形に発展した。

なお‐・し なほ‥【直】

〘形ク〙
① 物がまっすぐであるさま。
※彌勒上生経賛平安初期点(850頃)「世尊の鼻は高く長くしてまた直(ナホシ)
② 整って乱れていないさま。端整なさま。
※彌勒上生経賛平安初期点(850頃)「世尊の容儀は洪きに満ちて端直となほし」
③ 心、性格など事柄がゆがんでなく正常であるさま。公明である、正直であるさま。
※続日本紀‐文武元年(697)八月一七日・宣命「明き浄き直(なほキ)誠の心を以ちて」
[補注](1)和文系の資料には「なおなおし」の方が多く見られる。
(2)シク活用の例も見られる。→なおし(直)〔形シク〕

じか ヂカ【直】

〘名〙 (「じき」の変化した語)
① (形動) 間にへだてるものがないこと。他の語に付いて語素のように使われることが多い。「じか談判」「じかばき」など。→じかに
※雑話筆記(1719‐61)上「その仕方はづんどぢかな言語をつつしむと云様な上から仕て出ることにて候」
※木乃伊の口紅(1913)〈田村俊子〉八「直(ヂカ)な畳の上に寝転んでゐる義男の姿が」
② 鶏、また、鶏肉をいう。
※当世花詞粋仙人(1832)「かしわ、じか」

あたいえ あたひへ【直】

〘名〙 「あたい(直)」の古訓。→「あたい(直)」の語誌。
※書紀(720)皇極三年一一月(図書寮本訓)「大臣長直(アタヒエ)を使して大丹穂(おほにほ)山に桙削(ほこぬきの)寺を造る」
[補注]「あたひ‐え(兄)」と考えられるが、あるいは、「書紀‐神武即位前」「直部(日本紀私記丙本・熱田本訓あたひへ)」と関係があるか(この「部」は「等(ら)」の意味とされる)。

ひった【直】

〘副〙 (「と」を伴って用いることもある) =ひたと(直━)
申楽談儀(1430)拍子の事「是よりかかりを体にして、ひったと音曲にかかるべし」
※浄瑠璃・義経千本桜(1747)一「家内をひった見廻して、ヲヲ是はしたり」

じっき ヂッキ【直】

〘副〙 「じき(直)」の変化した語。
※雑俳・柳筥(1783‐86)二「京女郎だと島田とはじっき切れ」
※団団珍聞‐五一八号(1885)「直(ヂッキ)其処に御温習がありました故」

あたえ あたへ【直】

〘名〙 =あたい(直)
※書紀(720)舒明一一年七月(寛文版訓)「書直県(ふむのアタエあかた)を以て大き(たくみ)とす」

すぐ‐・い【直】

〘形口〙 すぐ・し 〘形ク〙 まっすぐである。曲がっていない。正しい。〔和英語林集成(初版)(1867)〕

なお‐なほ‥【直】

日蓮遺文‐三沢鈔(1278)「仏教をなをしく習ひうる事かたし」

すぐ‐・し【直】

〘形ク〙 ⇒すぐい(直)

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デジタル大辞泉「直」の解説

ちょく【直】[漢字項目]

[音]チョク(漢) ジキ(ヂキ)(呉) [訓]ただちに なおす なおる すぐ ただ ひた じか あたい
学習漢字]2年
〈チョク〉
曲がっていない。まっすぐ。「直角直径直進直線直立硬直垂直
正しい。心がすなお。「曲直愚直剛直司直実直率直朴直廉直
じかに。すぐに。「直営直感直後直接直送直通直訳
値段。あたい。「安直
その番に当たる。「宿直当直日直
〈ジキ〉24に同じ。「直参直直直訴直伝直筆高直正直
[名のり]すなお・ただし・ただす・ちか・なお・なおき・なおし・なが・ね・のぶる・ま・まさ
[難読]素直すなお宿直とのい直会なおらい直衣のうし直面ひためん・ひたおもて直垂ひたたれ

ただ【直】

[名・形動ナリ]
曲がっていないこと。また、そのさま。まっすぐ。
「春霞井のゆ―に道はあれど」〈・一二五六〉
隔てるもののないこと。また、そのさま。直接。じか。
「―にはば逢ひかつましじ石川に」〈・二二五〉
時間を置かないこと。また、そのさま。すぐ。
「今宵は―に臥し給へれ」〈落窪・二〉
[副]
まっすぐに。
「磐城山―越え来ませ磯崎の」〈・三一九五〉
直接に。じかに。
「―今日も君には逢はめど人言を繁み逢はずて恋ひ渡るかも」〈・二九二三〉
よく似ているさま。さながら。まるで。
御髪みぐしのかかりたるさま…―かの対の姫君にたがふ所なし」〈・賢木〉

ひた【直】

[語素]

㋐動詞や動詞の連用形名詞の上に付いて、いちずに、ひたすら、の意を表す。「走る」「隠し」
㋑同じ動詞を重ねた句の、上の動詞の上に付き、「ひた…に…する」の形で、もっぱらその行為をする、はなはだしく…する、の意を表す。「隠しに隠す」「押しに押す」「あやまりにあやまる」
名詞の上に付く。
㋐直接である、じかにそれが接している、の意を表す。「おもて」
㋑まっすぐ、一方的、の意を表す。「道」
㋒ある物の全面にわたっている、の意を表す。「黒」「青」
㋓純粋な、他のものを交えない、の意を表す。「兜」

じき〔ヂキ〕【直】

[名・形動]
間に人や物を置かずにすること。また、そのさま。直接。じか。「の兄」
「―にお奉行様に差し出したい」〈鴎外・大塩平八郎〉
まっすぐであること。また、そのさま。一直線。
「両の耳は竹を剝いで―に天を指し」〈太平記・一三〉
直取引じきとりひき」の略。
[用法]
[副]時間的、距離的に近いさま。すぐ。「もう春だ」「学校はそばだ」
[類語](1じか直直じきじき直接・無媒介・ダイレクトじかなまストレート/(すぐもなく程なくそろそろ今にも幾許いくばくもなく・直ちに早速すぐにすぐさま直接今にそのうちやがていつかいずれ追い追い追って追っ付け早晩きた日ならずして遅かれ早かれ近日近近ちかぢか近近きんきん後日他日不日又の日近く遠からず手近い間近すぐ至近近く目前鼻先手が届く指呼しこ咫尺しせき目睫もくしょうかん目と鼻の先身近手近卑近身辺そばかたわわき片方かたえ手もと付近近辺近傍近所最寄り足元座右左右手回り身の回り・ついそこ(述語として)間近い程近い近いもう

なお〔なほ〕【直】

[形動ナリ]まっすぐで、曲折のないさま。→直直なおなお真直まなお
[副]
取り立てて言うべき事もないさま。ありきたりに。
「天の下の色好みの歌にては、―ぞありける」〈伊勢・三九〉
特に何もしないさま。そのまま。
「かうやうに物もて来る人に、―しもえあらで」〈土佐

ちょく【直】

[名・形動]
まっすぐなこと。また、そのさま。
性格・考えなどが素直なこと。率直なこと。また、そのさま。「遠慮のないな言い方」
安直なこと。手軽なこと。また、そのさま。
間に何も入れないで、直接にすること。また、そのさま。じか。「で話す」
[類語]直接的じかじか単刀直入直截ちょくせつ直接率直じきじき露骨ずばりざっくばらんずけずけあけすけストレートダイレクト歯にきぬ着せぬ

あたえ〔あたへ〕【直/費】

古代のかばねの一。朝廷に服した地方の国造くにのみやつこに多く与えられた。5、6世紀ごろ成立。あたい。

じか〔ヂカ〕【直】

《「じき」の音変化》間に他のものを入れないこと。直接。「の取引」「談判」→じかに
[類語]直直じきじき直接直接的ちょくじか単刀直入直截ちょくせつ率直露骨ずばりざっくばらんずけずけあけすけストレートダイレクト歯にきぬ着せぬ

あたい〔あたひ〕【直/費】

あたえ(直)」に同じ。

じき【直】[漢字項目]

ちょく

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日本大百科全書(ニッポニカ)「直」の解説


あたい

古代の姓(かばね)の一つ。直と記すのが普通だが、古くは費、費直とも記す。443年ないしは503年鋳造の和歌山県隅田八幡宮(すだはちまんぐう)所蔵の鏡銘に「費直」とあるのが初見。語源については諸説あるが、上長を意味する朝鮮語に由来するという説が有力。直姓氏族は210余を数え、大和(やまと)朝廷に服属した地方の国造(くにのみやつこ)に多く授与された。帰化人では漢(あや)氏に与えられた。684年(天武天皇13)の八色(やくさ)の姓(かばね)の制定に際し、直姓の有力氏族は第四位の忌寸(いみき)を賜姓された。

[前之園亮一]

『太田亮著『全訂日本上代社会組織の研究』(1955・邦光書房)』『阿部武彦著『氏姓』(1966・至文堂)』

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百科事典マイペディア「直」の解説

直【なおし】

本直(ほんなおし),柳蔭(やなぎかげ)とも。味醂(みりん)と同じく,焼酎(しょうちゅう),(こうじ),蒸し米を混和,熟成した味醂醪(もろみ)に,さらに焼酎を加え,濾過(ろか)して造った酒。味醂より甘味が少なく,アルコール分が多い(22%)。もっぱら飲用

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「直」の解説


あたい

「あたえ」ともいい,古代の (かばね) の一つ。「費」「費直」とも書く。大化以前の国造 (くにのみやつこ) に与えられた。6世紀前半にはすでにあったことが知られている。

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旺文社日本史事典 三訂版「直」の解説


あたい

大和政権の姓 (かばね) の一つ
大化以前の国造 (くにのみやつこ) や部民統率者に与えられた。後に国造が郡司になったため,郡司に多い。

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世界大百科事典 第2版「直」の解説

あたい【直】

日本古代の(かばね)の一つ。〈あたえ〉ともよむ。費,費直とも表記され,主として大化改新以前の地方豪族である国造(くにのみやつこ)に授けられ,改新以後は,その国造の後裔である郡司とその一族とが,この姓を有している場合が多い。直の語義は諸説あるが,アタヒ(値)と同根で,匹敵するものの意で,かつて天皇と同等の権力を持って地方の政治を行っていた国造を〈あたひ〉と呼んだことに由来するといわれている。〈癸未年〉(503)の年紀のある隅田八幡人物画像鏡銘に〈開中費直穢人・今州利の二人を遣わし〉とあるように,費直(直)の姓の用例みえ,直の姓は6世紀の初葉にすでに存在していたことが知られる。

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世界大百科事典内のの言及

【氏姓制度】より

…連とは,大伴,物部,中臣,忌部(いんべ),土師(はじ)のように,朝廷での職務を氏の名とし,天皇に従属する官人としての立場にあり,朝廷の成立に重要な役割をはたした豪族である。伴造とは,連とも重なり合うが,おもにそのもとで朝廷の各部司を分掌した豪族で,秦(はた),東漢(やまとのあや),西漢(かわちのあや)などの代表的な帰化氏族,それに弓削(ゆげ),矢集(やずめ),服部(はとり),犬養(いぬかい),舂米(つきしね),倭文(しとり)などの氏があり,連,造(みやつこ),直(あたい),公(きみ)などの姓(かばね)を称した。百八十部は,さらにその下位にあり,部(べ)を直接に指揮する多くの伴(とも)をさし,首(おびと),史(ふひと),村主(すくり),勝(すくり)などの姓(かばね)を称した。…

【直】より

…〈あたえ〉ともよむ。費,費直とも表記され,主として大化改新以前の地方豪族である国造(くにのみやつこ)に授けられ,改新以後は,その国造の後裔である郡司とその一族とが,この姓を有している場合が多い。直の語義は諸説あるが,アタヒ(値)と同根で,匹敵するものの意で,かつて天皇と同等の権力を持って地方の政治を行っていた国造を〈あたひ〉と呼んだことに由来するといわれている。…

※「直」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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