化学式CaSO4。天然には,セッコウCaSO4・2H2Oおよび硬セッコウCaSO4とよばれる鉱物として多量に産出する。また岩塩や海水,硬水の中の不純物としても含まれ,アルカリ金属の硫酸塩との複塩をなす鉱物,たとえばグラウバーライトNa2SO4・CaSO4のようなものも知られる。
カルシウムイオンCa2⁺を含む水溶液に硫酸イオンSO42⁻を含む水溶液を加えると硫酸カルシウムが沈殿するが,このとき66℃以下の温度ではセッコウに当たる2水和物が,66℃以上では硬セッコウに当たる無水和物が得られる。2水和物は無色柱状の結晶(単斜晶系)で,比重2.32。天然に産出するものには美しい大きな結晶(透明セッコウ)をなすものもあるが,多くは細かい結晶の集合体(雪花セッコウ)で,ごく軟らかい(モース硬度1.5~2)。水にはわずかに溶け,溶解度は42℃で0.210g/100gH2Oとなるが,温度がそれより高くても低くても減少する。セッコウを約120℃に数時間加熱すると,CaSO4・0.5H2Oの組成の白色粉末(焼セッコウ)となるが,これは常温で容易に水分を吸ってセッコウ(2水和物)に戻り,この際発熱,膨張する。セッコウで彫像その他の細工物を作るときには,まず焼セッコウを作り,これを水で泥状にこねて鋳型に入れたり,押しつけたりすると,泥状の塊は速やかに固化し,かつ膨張して型のすみずみまで広がるから,正確に型どおりのものが再現できる。しかしセッコウを200℃以上に長時間熱して完全な無水和物(硬セッコウに当たるが,こうして作ったものは焼殺(しようさい)セッコウと呼ばれる)にしたものは,水を加えても容易にセッコウに戻らない。無水和物は無色,斜方晶系の結晶,比重2.96,Ca2⁺,SO42⁻の両イオンから成る岩塩NaCl型構造で,1193℃で比重2.45の単斜晶系の結晶に転移する。モース硬度3.5,融点1450℃。無水和物をさらに1000℃以上に強熱すると,その一部は次のように分解する。
CaSO4─→CaO+SO3
できた酸化カルシウムは硫酸カルシウムとの混合物(固溶体)となる。固溶体は少量の水分で固化して水酸化カルシウムと硫酸カルシウムの混合物となり,なめらかな硬い表面をつくるので,壁材(プラスター)として使われる。セッコウはこのほか,セメントや陶磁器の製造,製紙などにも利用される。
執筆者:曽根 興三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
CaSO4(136.14).天然にはセッコウCaSO4・2H2Oおよび硬セッコウCaSO4として産出する.また,海水中にも含まれている.石灰を用いた排煙脱硫で大量に副生される.塩化カルシウム水溶液に希硫酸を加えると66 ℃ 以下では二水和物が,それ以上では無水物が析出する.無水物は無色の斜方晶系結晶.密度2.96 g cm-3.融点1450 ℃.水に難溶,酸に可溶.濃硫酸とは硫酸水素カルシウムをつくる.乾燥剤に用いられる.二水和物はセッコウといわれる.無色の単斜晶系結晶.密度2.32 g cm-3.水に難溶,酸に可溶.128 ℃ で0.5水和物と無水物の混合物となる.この混合物は焼きセッコウとよばれ,水を加えて泥状として型に流せばセッコウとなって固化する.163 ℃ 以上に加熱すれば無水物となる.これは硬セッコウとよばれ,水を加えてもセッコウに戻らず,徐々に水酸化カルシウムと無水硫酸カルシウムの混合物となって固化する.建築物の壁塗料,セメント,陶磁器,塑像の製造,鋳型,歯科用,医療用(ギブス材料),医薬品,食品添加物,豆腐凝固剤,乾燥剤,製紙,土壌の中和などに用いられる.[CAS 7778-18-9:CaSO4][CAS 10034-76-1:CaSO4・0.5H2O][CAS 10101-41-4:CaSO4・2H2O]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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…化学式CaSO4・2H2O。天然に産する硫酸カルシウム二水和物の鉱物名。二水セッコウあるいは結晶セッコウともいう。…
※「硫酸カルシウム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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