硫酸カルシウム(読み)リュウサンカルシウム(英語表記)calcium sulfate

デジタル大辞泉 「硫酸カルシウム」の意味・読み・例文・類語

りゅうさん‐カルシウム〔リウサン‐〕【硫酸カルシウム】

カルシウム硫酸塩無色の結晶。天然には二水和物石膏せっこう、無水和物が硬石膏として産出化学式CaSO4

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精選版 日本国語大辞典 「硫酸カルシウム」の意味・読み・例文・類語

りゅうさん‐カルシウムリウサン‥【硫酸カルシウム】

  1. 〘 名詞 〙 ( カルシウムは [オランダ語英語] calcium ) カルシウムの硫酸塩。化学式 CaSO4 白色の結晶。水に溶けにくい。天然には二水和物の石膏、または無水物の硬石膏として産出する。加熱すると〇・五水和物の焼き石膏に変わる。硫酸石灰
    1. [初出の実例]「石膏は硫酸『カルシュム』、骨中の土分は燐酸『カルシュム』なり」(出典:小学化学書(1874)〈文部省〉三)

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改訂新版 世界大百科事典 「硫酸カルシウム」の意味・わかりやすい解説

硫酸カルシウム (りゅうさんカルシウム)
calcium sulfate

化学式CaSO4。天然には,セッコウCaSO4・2H2Oおよび硬セッコウCaSO4とよばれる鉱物として多量に産出する。また岩塩や海水,硬水の中の不純物としても含まれ,アルカリ金属の硫酸塩との複塩をなす鉱物,たとえばグラウバーライトNa2SO4・CaSO4のようなものも知られる。

 カルシウムイオンCa2⁺を含む水溶液に硫酸イオンSO42⁻を含む水溶液を加えると硫酸カルシウムが沈殿するが,このとき66℃以下の温度ではセッコウに当たる2水和物が,66℃以上では硬セッコウに当たる無水和物が得られる。2水和物は無色柱状の結晶(単斜晶系)で,比重2.32。天然に産出するものには美しい大きな結晶(透明セッコウ)をなすものもあるが,多くは細かい結晶の集合体(雪花セッコウ)で,ごく軟らかい(モース硬度1.5~2)。水にはわずかに溶け,溶解度は42℃で0.210g/100gH2Oとなるが,温度がそれより高くても低くても減少する。セッコウを約120℃に数時間加熱すると,CaSO4・0.5H2Oの組成の白色粉末(焼セッコウ)となるが,これは常温で容易に水分を吸ってセッコウ(2水和物)に戻り,この際発熱,膨張する。セッコウで彫像その他の細工物を作るときには,まず焼セッコウを作り,これを水で泥状にこねて鋳型に入れたり,押しつけたりすると,泥状の塊は速やかに固化し,かつ膨張して型のすみずみまで広がるから,正確に型どおりのものが再現できる。しかしセッコウを200℃以上に長時間熱して完全な無水和物(硬セッコウに当たるが,こうして作ったものは焼殺(しようさい)セッコウと呼ばれる)にしたものは,水を加えても容易にセッコウに戻らない。無水和物は無色,斜方晶系の結晶,比重2.96,Ca2⁺,SO42⁻の両イオンから成る岩塩NaCl型構造で,1193℃で比重2.45の単斜晶系の結晶に転移する。モース硬度3.5,融点1450℃。無水和物をさらに1000℃以上に強熱すると,その一部は次のように分解する。

 CaSO4─→CaO+SO3

できた酸化カルシウムは硫酸カルシウムとの混合物(固溶体)となる。固溶体は少量の水分で固化して水酸化カルシウムと硫酸カルシウムの混合物となり,なめらかな硬い表面をつくるので,壁材(プラスター)として使われる。セッコウはこのほか,セメント陶磁器製造,製紙などにも利用される。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「硫酸カルシウム」の意味・わかりやすい解説

硫酸カルシウム
りゅうさんかるしうむ
calcium sulfate

硫酸のカルシウム塩。化学式CaSO4、式量136.1。天然に二水和物(石膏(せっこう))および無水和物(硬(こう)石膏)の鉱床となって大量に産出するほか、岩塩鉱床、海水および硬水に含まれる。工業的には天然物の採取のほか、種々の化学工業で副産物として製造される。カルシウム塩の水溶液に希硫酸、またはアルカリ金属の硫酸塩の水溶液を加えると、66℃以下で二水和物、それ以上では無水和物が析出する。いずれも無色であるが、天然の無水和物は不純物の混入で着色している。一般に水にあまり溶けず、たとえば無水和物の20℃での溶解度は水100グラムに対し約0.3グラムである。二水和物は100℃程度で加熱すると0.5水和物(斜方晶系、比重2.63。焼き石膏、半水石膏ともいう)に変わるが、実際には少量の無水和物を含んでいる。この混合物が焼石膏(しょうせっこう)で、常温で水分を吸収して二水和物に戻る。その際、発熱して体積が増す。二水和物を200℃以上で長時間加熱すると無水和物となるが、これは水を加えてもほとんど二水和物に戻らない。なお空気中200℃以下での加熱、あるいは減圧下60~90℃での五酸化二リンによる脱水によって、可溶性の無水和物(三斜晶系、比重2.45)が得られる。石膏、焼石膏としてきわめて広い用途がある。

[鳥居泰男]

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化学辞典 第2版 「硫酸カルシウム」の解説

硫酸カルシウム
リュウサンカルシウム
calcium sulfate

CaSO4(136.14).天然にはセッコウCaSO4・2H2Oおよび硬セッコウCaSO4として産出する.また,海水中にも含まれている.石灰を用いた排煙脱硫で大量に副生される.塩化カルシウム水溶液に希硫酸を加えると66 ℃ 以下では二水和物が,それ以上では無水物が析出する.無水物は無色の斜方晶系結晶.密度2.96 g cm-3.融点1450 ℃.水に難溶,酸に可溶.濃硫酸とは硫酸水素カルシウムをつくる.乾燥剤に用いられる.二水和物はセッコウといわれる.無色の単斜晶系結晶.密度2.32 g cm-3.水に難溶,酸に可溶.128 ℃ で0.5水和物と無水物の混合物となる.この混合物は焼きセッコウとよばれ,水を加えて泥状として型に流せばセッコウとなって固化する.163 ℃ 以上に加熱すれば無水物となる.これは硬セッコウとよばれ,水を加えてもセッコウに戻らず,徐々に水酸化カルシウムと無水硫酸カルシウムの混合物となって固化する.建築物の壁塗料,セメント,陶磁器,塑像の製造,鋳型,歯科用,医療用(ギブス材料),医薬品,食品添加物,豆腐凝固剤,乾燥剤,製紙,土壌の中和などに用いられる.[CAS 7778-18-9:CaSO4][CAS 10034-76-1:CaSO4・0.5H2O][CAS 10101-41-4:CaSO4・2H2O]

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百科事典マイペディア 「硫酸カルシウム」の意味・わかりやすい解説

硫酸カルシウム【りゅうさんカルシウム】

化学式はCaSO4。比重2.96,融点1450℃。無色の結晶。硬度3.5。水に不溶。カルシウム塩水溶液と硫酸塩水溶液との複分解により,66℃以下では無水和物,それ以上では2水和物CaSO4・2H2Oが得られる。2水塩は比重2.32の無色の結晶。硬度1.5〜2。水に難溶。天然にはセッコウCaSO4・2H2O,硬セッコウCaSO4として産する。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「硫酸カルシウム」の意味・わかりやすい解説

硫酸カルシウム
りゅうさんカルシウム
calcium sulfate

化学式 CaSO4石膏 CaSO4・2H2O ,硬石膏 CaSO4 として産出される。実験室的にはカルシウム塩水溶液に硫酸を加えて製造される。無水塩は無色斜方晶系結晶,比重 2.96,2水塩は単斜晶系で比重 2.32,融点 1450℃。焼石膏の製造,ニッケル製錬の副原料,ゴム,紙などの充填剤に用いられる。

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栄養・生化学辞典 「硫酸カルシウム」の解説

硫酸カルシウム

 苦りとして豆腐製造に使われる.石膏もこの化合物.

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世界大百科事典(旧版)内の硫酸カルシウムの言及

【セッコウ(石膏)】より

…化学式CaSO4・2H2O。天然に産する硫酸カルシウム二水和物の鉱物名。二水セッコウあるいは結晶セッコウともいう。…

※「硫酸カルシウム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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