横浜市南部の区名、および中心市街地。JR根岸線、京浜急行電鉄、金沢シーサイドラインが通じ、国道16号、357号、首都高速湾岸線が走る。地形上は多摩丘陵南端部の東斜面で、臨海の根岸湾岸は第二次世界大戦後、横浜市の大規模な根岸湾埋立事業によって、いまは新磯子町をはじめ新森町、新中原町、新杉田町の直線状埋立海岸線に変貌(へんぼう)している。国道16号沿いの臨海地域はもとは半漁村で、丘陵にはウメが植えられ、とくに杉田梅林はウメの名所として江戸初期から観梅客でにぎわい、文人たちの詩材となっていた。いまも妙法寺(みょうほうじ)の紅梅、白梅はともにみごとである。大正から昭和初期にかけては、丘陵部は京浜の高級住宅地として開かれ、夏の海浜は海水浴客でにぎわっていた。根岸湾埋立地には現在火力発電、鉄工、製油などの大工場が集中し、工業埠頭(ふとう)も多く、京浜工業地帯の南部をなす。杉田の東漸寺(とうぜんじ)は鎌倉末期の創建、梵鐘(ぼんしょう)は鎌倉時代の作で、永仁(えいにん)6年(1298)の銘があり国指定重要文化財。北東の岡村の展望の広い台上には三殿台遺跡(さんとのだいいせき)がある(国指定史跡)。
[浅香幸雄]
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