神野山(読み)こうのさん

日本歴史地名大系 「神野山」の解説

神野山
こうのさん

山添村の西部、大和高原北部中央にある。「こうのやま」とも。標高六一八・八メートル。県名勝。緩やかな円錐形の秀麗な山容を示し、地質角閃石斑糲岩からなる。東北の中腹鍋倉なべくら渓があり、山頂躑躅名所。南麓には飛鳥様式の銅造菩薩半跏像を伝える神野寺がある。山麓の村々には躑躅の咲く九十八夜(最近は五月三日)に「神野山参り」といって一日の宴遊をする慣習がある。

文献上の初見は天平勝宝七年(七五五)一二月二八日の孝謙天皇勅施入文案(東大寺文書)の「小野」、次いで康保元年(九六四)九月二五日の伊賀国板蠅杣四至紕繆記案(同文書)に「尾野」とみえる。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「神野山」の意味・わかりやすい解説

神野山 (こうのさん)

奈良県北東部,山添(やまぞえ)村にある山。標高618m。なだらかなスロープを描く円錐形の山で,県立自然公園に指定されている。地形的には前輪廻の浸食に耐えて残った残丘で,角セン斑レイ岩よりなる。北東の山腹には,長さ500m以上にわたって黒色をした大小の岩が累々と重なり合い,あたかも溶岩流をおもわせる鍋倉渓奇勝がある。山頂近くには神野寺と大塚(王塚)と呼ばれる墳丘があり,その下部の自然林にはカゴノキなど珍しい樹木が繁茂している。春のツツジが美しい。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「神野山」の意味・わかりやすい解説

神野山
こうのさん

奈良県北東部,大和高原北部にある山。奈良市山添村境界にあり,標高 619m。山体は角閃斑糲岩 (かくせんはんれいがん) からなり円錐形をなす。古くから付近の人々の信仰の山としてあがめられてきた。北東の山腹には 500mにわたり黒い斑糲岩帯状に露出する鍋倉渓の奇勝がある。山頂からの眺望もよく,ツツジの名所。南側山腹に神野寺がある。月ヶ瀬神野山県立自然公園に属する。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「神野山」の意味・わかりやすい解説

神野山
こうのやま

奈良県北東部、山辺(やまべ)郡山添村にある山。標高618メートル。大和(やまと)高原北部の角閃斑糲(かくせんはんれい)岩からなる残丘で、緩やかな裾野(すその)を引く円錐(えんすい)形の山である。山頂の展望はよく開け、ツツジの名所として知られる。北東山腹に県指定天然記念物の鍋倉(なべくら)渓の奇勝があり、南麓(なんろく)には古刹(こさつ)神野寺がある。名阪国道(自動車専用道路)神野口インターチェンジから約3キロメートルの距離にある。

[菊地一郎]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

黄砂

中国のゴビ砂漠などの砂がジェット気流に乗って日本へ飛来したとみられる黄色の砂。西日本に多く,九州西岸では年間 10日ぐらい,東岸では2日ぐらい降る。大陸砂漠の砂嵐の盛んな春に多いが,まれに冬にも起る。...

黄砂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android