私田(読み)シデン

デジタル大辞泉 「私田」の意味・読み・例文・類語

し‐でん【私田】

私有の田。個人所有の田地
律令制で、位田職田しきでん賜田しでん口分田くぶんでん墾田など、個人に給された田。⇔公田

わたくし‐だ【私田】

しでん(私田)

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精選版 日本国語大辞典 「私田」の意味・読み・例文・類語

し‐でん【私田】

〘名〙
令制で、有主田の意。無主田を意味する公田に対する語。口分田、墾田、位田、職田など。⇔公田
令義解(833)田「謂。位田。賜田。及口分田。墾田等類。是為私田。自余者。皆為公田也」
② 私有の田地。
類聚国史‐七九・禁政・延暦一六年(797)八月丙辰「庄長多営私田、仮威乗勢、蠹民良深」 〔後漢書‐済南安王康伝〕

わたくし‐だ【私田】

〘名〙 令制で、個人に占有を許された田。位田・賜田・口分田・墾田などの類。狭義には、墾田などの私有田をいう。また、一般に私有の田地。しでん。
万葉(8C後)七・一二七五「住吉(すみのえ)小田を刈らす子奴かも無き奴あれど妹が御為と私田(わたくしだ)刈る」

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「私田」の意味・わかりやすい解説

私田
しでん

律令制(りつりょうせい)下において「公田」に対して用いられた語。令本来の用法では、私田は有主田(田主(でんしゅ)のいる田)という意味であり、位田、功田、賜田、墾田、口分田(くぶんでん)などが私田とされていた。しかし743年(天平15)の墾田永年私財法が発令されると、しだいに私田=墾田という観念が一般化し、公私田概念に変化が生じ、永年私財田として認められた田のみが私田、それ以外の田(その中核は口分田)は公田とよばれるようになった。

[村山光一]

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改訂新版 世界大百科事典 「私田」の意味・わかりやすい解説

私田 (しでん)

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旺文社日本史事典 三訂版 「私田」の解説

私田
しでん

律令制下,私的に耕作使用する権利が認められた土地
公田に対するもの。位田・賜田・職田などのほか,口分田もこれに当たった。輸租田不輸租田の別があった。

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普及版 字通 「私田」の読み・字形・画数・意味

【私田】しでん

私有田。

字通「私」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の私田の言及

【公地公民】より

…大化改新によって私地私民を廃止し,公地公民の政策が打ち出され,約半世紀後の大宝律令の施行によって公地公民制が確立したというのが通説である。しかし,すでに中田薫が指摘しているように,律令においては,口分田(くぶんでん)は私田とされていた。口分田を公民に班給する班田収授制は,公地公民制の中心的な施策と考えられてきたが,その口分田が律令においては公田でなく私田とされていたのである。…

【公田】より


[中国]
 私田の対立概念で公有の田土をいう。周の井田制では井字に区切られた中央の一画を,まわりの8区画を保有耕営する8戸が共同で耕作し,その収穫を領主に提供したと伝えられる。…

【へそくり(臍繰)】より

…しかし多くの私財は公にも認められ公然と行われていた。たとえば飛驒白川村のかつての大家族では,シンガイと呼ばれる公的な労働に従事しない日が決まっていて,家族員はその日各自のシンガイ田(私田)を耕した。このシンガイ田の収穫はまったく私的に用いることができたという。…

【律令制】より

…口分田以外の田種としては,畿内4ヵ国に合計100町置かれた天皇供御料田としての官田(屯田(みた)),五位以上の有位者に位階に応じて与えられた位田(親王・内親王にも品位に応じて与えられる),国家に功労あるものに与えられる功田(こうでん),大納言以上に与えられる職分田(職田),大宰府および諸国司の史生以上に与えられる在外諸司職分田(公廨田(くがいでん)),郡司の主帳以上に与えられる郡司職分田(職田),および賜田,神田,寺田などがあった。当時は諸種の田地に対し公田・私田の区別がなされていたが,私田とは私人によって用益される有主田(口分田,位田,功田,各種職分田,賜田など),公田とは公的な機関によって用益される無主田(官田,神田,寺田など)のことで,ほぼ田租の輸不に対応していた。公田のうち最大のものは各種の田地を割き取った残りの乗田で,これは1年を限って農民に賃租(ちんそ)され,その地子(じし)が太政官の雑用に充てられた。…

※「私田」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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