済所とも書く。平安中期以降の国衙在庁機構である〈所(ところ)〉の一つで,正税(しようぜい),官物(かんもつ)の収納勘会事務を分掌する分課。国司が任命する目代,(惣大)判官代,録事代などの在庁官人によって構成される。990年(正暦1)柞原宮宮師仙照が豊後国司に季供田1町の官物免除を申請した愁状に対する税所の勘申を初見とする。職掌としては(1)郡郷へ所当官物を割り当て,収納使を通して郡郷内の名(みよう)に徴符を配分する,(2)官米押領使などの使を差定し,官物封物を中央諸官衙,封主のもとに進納させる,(3)郡郷ごとに収納使と郡郷司が作成した結解(けちげ)にもとづいて国全体の進未勘会を行う,(4)官物封物の収納に関する訴えや照会に対して,国司の命をうけて勘申する,などがある。税所の有力在庁はやがて世襲化し,税所を氏とするものも現れた。常陸や薩摩の税所氏はその例である。
執筆者:下向井 竜彦
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平安・鎌倉時代に国衙(こくが)に置かれた役所の一つ。済所とも書く。9世紀になると国衙機構の分業組織としての「所(ところ)」が成立し始め、そのなかで税所は一国の租税の収納や管理を任務とした。初めは国司の補任(ぶにん)によって官人が構成されたが、しだいに在地の土豪らに世襲化されていった。常陸(ひたち)(茨城県)や薩摩(さつま)(鹿児島県)には税所を姓とする武士もみられる。また、神社にも年貢や公事(くじ)の収納をつかさどる税所が置かれた例がみえる。
[渡辺正樹]
『吉村茂樹著『国司制度崩壊に関する研究』(1957・東京大学出版会)』▽『竹内理三著『律令制と貴族政権 第Ⅱ部』(1958・御茶の水書房)』
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済所とも。国衙(こくが)機構の所(ところ)の一つ。国内の正税・官物の収納や京への貢進,および部内からの結解(けちげ)などをもとにその数量監査にあたり,職務の重要性から国衙の他の所よりも重視された。在庁のうちでも有力な者が統轄し,判官代・録事代(ろくじだい)など所属する雑色人(ぞうしきにん)の数も多数にのぼった。税所の職を世襲する有力在庁のなかには,常陸国や大隅国の税所氏のように氏の名称として名乗る者もみられた。
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