1556年(弘治2)下総国結城の領主結城政勝が制定した代表的な分国法。1巻。前文に〈新法度〉の文言があるので《結城氏新法度》とも呼ばれる。原本は太平洋戦争の戦火で焼失したため,東京大学史料編纂所影写本松平基則氏所蔵文書所収の写し以外に見ることはできない。冒頭に制定趣旨を述べた前文を置き,ついで104ヵ条に及ぶ本文と政勝の次代晴朝の追加3ヵ条がある。つごう107ヵ条に及ぶ条項は,戦国家法としては伊達氏の《塵芥集》についで長大なものである。前文で政勝は家臣統制を主目的としてこの法度を制定したと述べている。44,82,83条にはその条文を定めるにあたり,あらかじめ家臣に諮問しその結論を得て立条した由が記されており,部分的な制定手続を知ることができるが,それ以外のほとんどの条文は政勝個人の強い主導の下で制定されている。本文は家臣間の刑事・民事関係の訴訟裁判手続,軍事・警察取締り,貸借・商取引関係,年貢納付など諸般の事項を含み,内容的にも分国法の中で最も多彩なものの一つとなっている。しかしその適用範囲は結城氏の直接支配下にあった結城領が中心であって,結城氏の目下の同盟関係にあった山川氏(山川城主),水谷氏(下館城主),多賀谷氏(下妻城主)の支配領域には及ばなかった。また直接の規制対象は結城氏の家臣であり,領民の基本となる百姓はこの法度に一度も現れず,随所に見られる下人・悴者もその主人である家臣とのかかわりにおいて登場するにすぎない。百姓は里・村という共同体の中に埋没しその地を知行する家臣の支配を受け,下人・悴者は主人である家臣の私的従属下に置かれていた。政勝はこうした自立的小世界の主として存在する家臣の動向を規制し,結城領の支配を強化するためにこの法度を制定したのであり,その基本的性格は家中法と規定される。《中世法制史料集》《中世政治社会思想》所収。
執筆者:市村 高男
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下総(しもうさ)国結城(茨城県結城市)城主結城政勝(まさかつ)が1556年(弘治2)に制定した家法。本文中に「新法度」とみえるので結城氏新法度ともいう。結城氏の末裔(まつえい)松平基則(もとのり)所蔵の写本一巻は第二次世界大戦の戦火で焼失したが、東京大学史料編纂(へんさん)所にその影写本がある。前文、本文104条、追加3条、家臣連署請文(うけぶみ)からなり、質量ともに伊達(だて)氏の「塵芥(じんかい)集」に比肩される。戦国家法の代表である。内容は家臣、商人、下人などについての人身規定、刑事・民事の訴訟・裁判手続、領内支配など多岐にわたるが、とくに緊迫した軍事状況のなかでの家中統制に関する規定が多い。この法度は規制対象が家中に限定され、適用範囲もほぼ結城城領に限られている点に最大の特色がある。
[市村高男]
『佐藤進一・池内義資・百瀬今朝雄編『中世法制史料集 第三巻』(1965・岩波書店)』▽『石井進・石母田正・笠松宏至・勝俣鎮夫・佐藤進一編『中世政治社会思想 上』(1972・岩波書店)』
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