結社の自由(読み)ケッシャノジユウ

改訂新版 世界大百科事典 「結社の自由」の意味・わかりやすい解説

結社の自由 (けっしゃのじゆう)

特定の多数人(自然人または法人)が,特定の共通目的のために継続的な結合をなし,組織された意思形成に服するものを結社といい,その自由とは,人がそのような結社をつくることまたはつくらないこと,結社に加入することまたは加入しないこと,結社の成員としてとどまることまたは脱退すること,および,結社が結社として意思を形成し,その意思実現のための諸活動を行うことについて公権力による干渉を受けないことをいう。結社は継続的・組織的であって必ずしも場所を前提としない結合体である点において,一時的な会合である集会と異なる。また,結社は表現活動と結びつくことも多いが,表現活動にはつきないそれ独自の意義を有する。日本国憲法21条は,集会の自由,表現の自由と並んで,結社の自由を保障している。日本国憲法がその自由を保障する結社の目的は,政治的,経済的,宗教的,学問的,芸術的,社交的等を問わないと一般に解されているが,宗教的結社については,さらに別に憲法20条(信教の自由)の規定があり,労働組合についてはさらに別に憲法28条(団結権)の規定がある。

 近代主権国家は社会におけるもろもろの集団に対するみずからの至上性を確立しようとするものであったが,近代市民革命を契機に成立した,なによりも個の主張と確立をその課題とする近代立憲主義の下にあっては,結社は個人の確立と発展の前に立ちふさがる存在として,必ずしも好意的にはみられない傾向があった。しかし,結社は個人の自由の拡大という側面をもち,また,社会的弱者にとって自己の立場を守る盾となりあるいは主張を貫く媒体ともなりうるのであり,実際19世紀後半より大企業や労働組合など各種の強大な結社が生まれ,今世紀に至ってその傾向はいっそう顕著となり,今世紀はときには〈組織の世紀〉などと呼ばれる。しかし,今日,そのような組織が,同時に政治や社会のあり方を大きく規定し,また個人の生活を左右し自由を脅かす存在であることも強く自覚されるに至っている(いわゆる〈社会的権力〉の問題)。〈社会的権力〉への参加(例えば,マス・メディアへの〈アクセス権〉)や〈社会的権力〉による新たな権力分立の構想が語られたり,憲法の保障する基本的人権の私人相互間における妥当性が問われたりするのは,そのような自覚の現れである。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「結社の自由」の意味・わかりやすい解説

結社の自由
けっしゃのじゆう
freedom of association

結社の結成,不結成,結社への加入,不加入,結社の成員の継続,脱退について個人が,また結社が団体としての意思を形成し,その意思実現のための諸活動を行うについて公権力による干渉を受けないことをいう。結社とは多数人が特定の共通目的のために継続的な結合をなし,組織された意思形成に服するもののことである。日本国憲法は 21条で集会の自由,表現の自由と並んでこの自由を保障している。結社は,とりわけ今日の大衆社会状況において,個人の自由の強化,拡大をはかるうえで枢要なものであるが,同時に巨大な結社が個人の自由にとり桎梏となっている面も否定できない。日本で結社を包括的に規律した法律はないが,破壊活動防止法は結社の自由にさまざまな問題を投げかけている。 (→公安審査委員会 )  

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

苦肉の策

敵を欺くために、自分の身や味方を苦しめてまで行うはかりごと。また、苦しまぎれに考え出した手立て。苦肉の謀はかりごと。「苦肉の策を講じる」...

苦肉の策の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android