絞る(読み)シボル

デジタル大辞泉 「絞る」の意味・読み・例文・類語

しぼ・る【絞る/搾る】

[動ラ五(四)]

㋐水などが染み込んだ布などを強くねじって、水分を出す。「ぞうきんを―・る」「袖を―・る(=ひどく泣く)」
㋑強く押して締めつけたり、にぎったりして、そのものに含まれている水分や液を取り出す。「牛乳を―・る」「ぶどうを―・る」

㋐簡単には出てこないものを努力して、また無理に出そうとする。「声を―・って応援する」「ない知恵を―・る」
㋑無理に出させて取る。むごく取り立てる。しぼりとる。「膏血こうけつを―・る」
(「油をしぼる」の略)ひどく責めたりしかったりする。厳しく鍛える。「こってり―・られる」「猛練習で徹底的に―・られた」
(絞る)広がった状態のものを小さくする。
㋐すぼめたり、くくって縮めたり、押し縮めて片寄せたりして、まとめる。「傘を―・る」「袋の口を―・る」「幕を―・る」
㋑範囲を狭める。整理して、取り上げる範囲をごく小さく限定する。「捜査の網が―・られる」「問題点を―・る」「的を―・る」
(絞る)
㋐カメラのレンズの絞りを小さくする。
㋑ラジオなどの音量を小さくする。「ボリュームを―・る」
(絞る)弓を、力いっぱい十分に張る。引きしぼる。「弓を―・る」
(絞る)相撲で、自分わき相手の腕を挟み、相手の重心を浮かせるようにして締めつける。「差し手を―・る」
(絞る)絞り染めにする。
[可能]しぼれる
[下接句]油を絞る膏血こうけつを絞るそでを絞るたもとを絞る知恵を絞る涙を絞る脳味噌のうみそを絞る
[類語](1しぼり上げる引きしぼるしぼり出すしぼり取る/(3絞り上げる油を絞る

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精選版 日本国語大辞典 「絞る」の意味・読み・例文・類語

しぼ・る【絞・搾】

  1. [ 1 ] 〘 他動詞 ラ行五(四) 〙
    1. 締めつけて中の液を出す。また、そのような動作をする。
      1. (イ) 濡れた布類を強くにぎったりねじったりして水分を出す。「袖・袂をしぼる」の形で、泣くさまにいう。
        1. [初出の実例]「いつはりの涙なりせば唐衣しのびに袖はしぼらざらまし〈藤原忠房〉」(出典:古今和歌集(905‐914)恋三・五七六)
        2. 「いとどしぼるばかり尼君の袖も泣き濡らすを」(出典:源氏物語(1001‐14頃)東屋)
      2. (ロ) 強く押しつけたりねじったりして中の液を出す。
        1. [初出の実例]「其の乳を搆(シホリ)て之を一処に致すに及びては」(出典:石山寺本法華経玄賛平安中期点(950頃)三)
        2. 「酒 フネニ イレテ シボッタ サケコソ 清酒」(出典:交隣須知(18C中か)三)
      3. (ハ) まぶたを閉じ合わせて涙を出す。
        1. [初出の実例]「目をおししぼりつつ見給ふを」(出典:源氏物語(1001‐14頃)葵)
      4. (ニ) 相撲で、相手がはず押しにしている手、または下手に差している手の関節を上手から強く握りつけ、内側に圧力を加えるようにして相手を無力化する。
    2. むりに出すようにする。
      1. (イ) 取れるだけのものをむりに取り立てる。搾取する。
        1. [初出の実例]「いわれぬことを云て、民をしぼりかがめて」(出典:玉塵抄(1563)二五)
        2. 「労働者は働けば働くほど、自分を搾る資本に、それだけ多くの余剰労働は搾取され」(出典:海に生くる人々(1926)〈葉山嘉樹〉)
      2. (ロ) 能力などをむりして出す。
        1. [初出の実例]「身を揉んで智慧を絞りけるが」(出典:新浦島(1895)〈幸田露伴〉二一)
      3. (ハ) 出にくい声などをむりに出す。→しぼりいだすしぼりだす
        1. [初出の実例]「しぼるとは、竹などをたはめたるやうに、筒よりしぼる也。〈略〉名人八郎殿の謡はさはなかりし」(出典:わらんべ草(1660)二)
    3. ( 「油をしぼる」の略 ) 失敗や悪事などを指摘して油汗が出るような思いをさせる。苦しめ困らせる。
      1. [初出の実例]「教師にしぼられた餓鬼大将たちが」(出典:街道の際(1972)〈古井由吉〉)
    4. まわりから中心に向かって一様に圧力を加える。
      1. (イ) きつく締めくくる。
      2. (ロ) 布などをひきまとめてくくる。
        1. [初出の実例]「御だい所の花見の酒えん、すみれかた敷く花莚〈略〉幕しぼらせて御だい所」(出典:浄瑠璃・天神記(1714)一)
    5. 絞り染めをする。
      1. [初出の実例]「赤根にも染べし。〈略〉梅にしほるもあり」(出典:京極大草紙(室町後)馬に付て式法之事)
    6. (つる)を引いて弓を強くたわめる。
      1. [初出の実例]「二の矢をつがひ、しぼり返して」(出典:曾我物語(南北朝頃)一)
    7. 小さくする。
      1. (イ) カメラのレンズの開口面を小さくする。
      2. (ロ) スピーカーの音量を小さくする。
        1. [初出の実例]「遠慮深く音量をしぼっているのだが」(出典:妻隠(1970)〈古井由吉〉)
      3. (ハ) 問題として取り上げる範囲を小さく限定する。「的をしぼる」
        1. [初出の実例]「戦後、国文学者たちの『源氏物語』研究は、その成立論にしぼられて来ているらしい」(出典:古典と現代文学(1955)〈山本健吉〉源氏物語)
  2. [ 2 ] 〘 自動詞 ラ行四段活用 〙
    1. 激しく便意を催しながら大便が通じないでいる。
      1. [初出の実例]「ハラガ xiboru(シボル)」(出典:日葡辞書(1603‐04))
    2. きつく締めつけられる。
      1. [初出の実例]「寝汗が出て居て胸がしぼる様な心持であった」(出典:花物語(1908)〈寺田寅彦〉二)

絞るの補助注記

( 1 )[ 一 ]の「袖・袂をしぼる」の用例と見なされてきたものの中に、「しぼる」ではなく「しほる(霑)」(涙で袖・袂を濡らす)の用例であると指摘されるものがある。たとえば「泰時も鎧の袖をしほる」〔増鏡‐二〕は、「鎧の袖」であるから「しぼる」と見るのは難しい。
( 2 )[ 一 ]について、「運歩色葉集」(一五四八)には「彎絞」を「ヒキシヲル」と訓んだ例があり、従来「(弓を)ひきしぼる(絞)」と見られてきたものの中に「引きしほる」の例が含まれている可能性がある。


しも・る【絞・搾】

  1. 〘 他動詞 ラ行四段活用 〙しぼる(絞)
    1. [初出の実例]「熱鉄の臼の中に搗きて之を砕けしむること、蒲陶を迮(シモル)がごとく、亦油を圧(シモる)がごとく」(出典:大智度論平安初期点(850頃か)一六)

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