胎児治療(読み)たいじちりょう

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

胎児治療
たいじちりょう

放置すれば死産したり,生後間もなく死んでしまう重い病気を,胎児のうちに治そうという治療法。母体外から子宮内に器具や注射針を入れて手術をしたり,薬物投与や輸血を行う胎内治療と,胎児を一時的に母体外に取出し,本格的な手術をして再び戻す母体外治療がある。胎児治療の適応となるのは,胎児の体内に水がたまる胎児水腫や尿路閉塞,横隔膜ヘルニアなどの病気を中心に,年間数千人とみられている。超音波診断や羊水,胎児血液の診断技術の発達によって可能になった技術だが,母体や胎児に与える影響については未解明である。

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デジタル大辞泉の解説

たいじ‐ちりょう〔‐チレウ〕【胎児治療】

子宮内の胎児に対して行う治療。母体を介した内科的治療と、外科的操作を加えるものとがある。放置すると胎児が死亡するおそれがあるときや、生後の治療では助けることが困難な病気の場合に行われる。

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百科事典マイペディアの解説

胎児治療【たいじちりょう】

生まれてからの治療では手遅れになる恐れのある病気の胎児を,妊婦の子宮にいる状態のまま直接治療し,救命するための治療。米国で積極的に行われ,とくにカリフォルニア大学サンフランシスコ校がもっとも進んでいるといわれる。 日本では1986年,九州大学医学部産婦人科の中野仁雄教授,下川浩講師らが,非免疫性胎児水腫の胎児に行ったのが最初。1980年代末から本格化し,日本産科婦人科学会周産期委員会の調べによると,1998年現在,約140の医療機関で実施され,1996年〜1997年の2年間の実施件数は350件となっている。 しかし,胎児治療が定着する一方で,成功率の低さや,出産後の治療のほうが安全性が高いケースなどもあり,同委員会では1994年,臨床効果が認められる治療法として,(1)胎児貧血に対する輸血,(2)頻拍型不整脈に対する薬剤注射,(3)尿路が詰まって膀胱が膨らむ尿路閉鎖症のバイパス術(シャント術)の3種類を認定,今後,新基準案をまとめる方針。 胎児水腫の治療は,まず,超音波断層撮影装置で胎児の位置を確認し,妊婦に局所麻酔をした後,妊婦の腹部から胎児の腹部または胸などの水のたまっている部分に注射針を刺し,水を抜く。その後,この水に含まれているタンパク質アルブミン量を測定,その量よりも多めのアルブミンを同じ注射針で注入する。 こうした治療が可能になった背景には,画像診断などの発達により,出生前に胎児の発育をとらえることができるようになったことがある。 ただし,現在の医療制度において,胎児は患者とはみなされないため,健康保険の対象とはならず,治療における医療費は,ほとんどが病院もしくは妊婦の自己負担になる。今後,胎児治療が普及するためには,こうした問題の解決も求められる。→出生前診断胎児診断法

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

胎児治療
たいじちりょう

胎児期でわかった障害や病気を出産前に治療すること。1960年代から欧米では貧血胎児への輸血や、母親に酸素や薬を与えて胎盤からの血液を通じて胎児に送る間接的な治療も行われた。胎児への外科治療が行われるようになったのは1980年代からで、1981年にアメリカで水頭症の胎児の頭に母体から針を刺して髄液を抜くのに成功している。以来、血液交換や尿路閉塞(へいそく)、心臓弁膜症、横隔膜ヘルニアの手術などが行われている。日本では、1983年(昭和58)九州大学が非免疫性胎児水腫(すいしゅ)患者から注射で液を抜いた手術が最初で、1990年(平成2)には国立循環器病センターで尿路閉塞の胎児を体外に出して人工尿路をつくり、ふたたび子宮に戻して出産させるのに成功した。これらの治療が可能になった背景には、超音波診断や血液分析で早く診断がつくようになったことがあげられる。現在までのところ、いずれも比較的単純な病気に限られてはいるが、日本では胎児治療が必要な新生児は年間6000人ともいわれている。しかし、実際に行われているのは、おもに双子の胎児の血管が胎盤の中でつながっている双胎間輸血症候群(TTTS)などの場合で、年間百数十件にとどまっている。[田辺 功]

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