幸若舞(こうわかまい)の詞章を記した本。厳密には江戸初中期に読み物として流布した絵入りの板本(はんぽん)をいうが、一般には台本として書写された正本(しょうほん)も含む。番数は幸若諸家の系図をはじめ、寛文(かんぶん)、貞享(じょうきょう)、元禄(げんろく)の『書籍目録』、あるいは『群書一覧』ともに36番としているが、正本の番数をあわせると50番の曲目が知られている。大部分が軍記物語に材をとり、『那須与一(なすのよいち)』『敦盛(あつもり)』『景清(かげきよ)』など源平(げんぺい)合戦を描いたもの、『八嶋(やしま)』『烏帽子折(えぼしおり)』などいわゆる義経(よしつね)物、『夜討曽我(ようちそが)』『元服(げんぷく)曽我』など『曽我物語』を典拠とするもののほかに説話的なものもある。謡曲と同一内容の曲も多いが、叙述的な語物として構成されており、近世初期の古浄瑠璃(こじょうるり)に影響を与えた。
[高山 茂]
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…曲舞(くせまい)の一流派であったので,幸若舞を曲舞ということもあり,舞,舞々(まいまい)という場合もある。曲舞の本流が室町時代の中期におとろえるが,その系統から,長い叙事的な語り物に簡単な動作の舞をともなった芸能があらたに起こり,唱門師(しようもんじ)などによって盛んに行われるようになった。この後期の曲舞の一流派が幸若流であるが,幸若舞という名称は,〈幸若系図〉などの伝承によると,その大成者桃井直詮(もものいなおあきら)の幼名幸若丸にちなんだものとされる。…
※「舞の本」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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