舞の本(読み)マイノホン

デジタル大辞泉 「舞の本」の意味・読み・例文・類語

まいのほん〔まひのホン〕【舞の本】

幸若舞こうわかまい詞章を記した本。今日、五十数番の曲を伝え、平家物語義経記曽我物語などと同素材のものが多い。古浄瑠璃に大きな影響を与えた。

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精選版 日本国語大辞典 「舞の本」の意味・読み・例文・類語

まいのほんまひのホン【舞の本】

  1. 幸若舞の詞章集。奈良絵本を含む写本版本がある。正本台本)と異なり、読物として刊行されたもので墨譜(ぼくふ)はついていない。安土桃山時代から江戸初期に多く刊行された。詞章として現在、五〇番が知られている。「平家物語」「義経記」など軍記物に取材したものが多い。幸若舞の本。舞。小舞本。曲節集。舞三十六番。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「舞の本」の意味・わかりやすい解説

舞の本
まいのほん

幸若舞(こうわかまい)の詞章を記した本。厳密には江戸初中期に読み物として流布した絵入りの板本(はんぽん)をいうが、一般には台本として書写された正本(しょうほん)も含む。番数は幸若諸家の系図をはじめ、寛文(かんぶん)、貞享(じょうきょう)、元禄(げんろく)の『書籍目録』、あるいは『群書一覧』ともに36番としているが、正本の番数をあわせると50番の曲目が知られている。大部分が軍記物語に材をとり、『那須与一(なすのよいち)』『敦盛(あつもり)』『景清(かげきよ)』など源平(げんぺい)合戦を描いたもの、『八嶋(やしま)』『烏帽子折(えぼしおり)』などいわゆる義経(よしつね)物、『夜討曽我(ようちそが)』『元服(げんぷく)曽我』など『曽我物語』を典拠とするもののほかに説話的なものもある。謡曲と同一内容の曲も多いが、叙述的な語物として構成されており、近世初期の古浄瑠璃(こじょうるり)に影響を与えた。

高山 茂]

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改訂新版 世界大百科事典 「舞の本」の意味・わかりやすい解説

舞の本 (まいのほん)

広義には幸若舞(こうわかまい)の詞章を記した冊子のすべてをいうが,狭義にはそのうち,読み物として享受されるもののみをいう。演唱するための台本は正本(しようほん)といわれ,墨譜(ぼくふ)を付したものもある。狭義の舞の本は,奈良絵本の形態のものがあり,版本として36番をセットとして刊行されたものもある。36の数は始祖幸若丸(桃井直詮(もものいなおあきら))が禁裏の草紙36冊に節をつけて語ったとする伝承にもとづいていると考えられるが,セットによっては,曲目に出入りがある。
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百科事典マイペディア 「舞の本」の意味・わかりやすい解説

舞の本【まいのほん】

幸若舞の詞章をおさめた本。《平家物語》や《義経記》,《曾我物語》等と共通の素材が多く,ことに《鞍馬出》《堀河夜討》《富樫》《腰越》等義経物が十数種に及ぶ。

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世界大百科事典(旧版)内の舞の本の言及

【幸若舞】より

…曲舞(くせまい)の一流派であったので,幸若舞を曲舞ということもあり,舞,舞々(まいまい)という場合もある。曲舞の本流が室町時代の中期におとろえるが,その系統から,長い叙事的な語り物に簡単な動作の舞をともなった芸能があらたに起こり,唱門師(しようもんじ)などによって盛んに行われるようになった。この後期の曲舞の一流派が幸若流であるが,幸若舞という名称は,〈幸若系図〉などの伝承によると,その大成者桃井直詮(もものいなおあきら)の幼名幸若丸にちなんだものとされる。…

※「舞の本」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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