説経節の曲名。中世末期ころ成立した古説経の一つで,上中下の3巻から成る。善光寺の如来堂の脇に祭られている親子地蔵の由来を語る本地物の形式をとる。中世的な宗教性が濃く,俗生活に背を向けた苅萱が,家族の執拗な追跡を逃れて高野山にこもり,かたくなに道心を貫いた一生を描いている。この話は最初,高野山の蓮華谷や往生院谷にあった萱堂(かやんどう)に住まう高野聖(ひじり)の間で醸成されたもので,のちに旅を生活の場とする説経師の手に渡り,今日に伝わる形に成長した。主人公苅萱とその子石童丸の別れ,妻や姉娘千代鶴の死など,家族の崩壊と離散を語る内容は,ひとしお哀切の思いが強い。生涯を旅に生きねばならなかった漂泊民の内面の決意が,苅萱に託され,家や家族への愛の断念という姿をとって表現されているといえよう。謡曲にも《苅萱》があり,浄瑠璃に宇治加賀掾の《苅萱道心物語》,並木宗輔・丈輔の《苅萱桑門筑紫𨏍(かるかやどうしんつくしのいえづと)》などがある。
執筆者:岩崎 武夫
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…和歌山県の高野山往生院谷にあり,密厳院に属する。いまも苅萱道心と石童丸の唱導をするので知られ,その旧跡とされている。密厳院は新義真言宗の開祖,覚鑁(かくばん)(興教大師)の念仏堂であったが,そのまわりに念仏の高野聖(ひじり)があつまり,その中心に萱堂(かやんどう)ができて萱堂聖と称せられた。…
…説経《苅萱(かるかや)》に出てくる幼い主人公の名。《苅萱》のもとになる話は,中世の高野山の蓮華谷や往生院谷あたりの〈萱堂(かやんどう)〉に住む聖(ひじり)の間に生まれたもので,それが後に謡曲の《苅萱》と説経に分かれて展開したものである。…
※「苅萱」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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