長野県中東部にある高原都市。1955年(昭和30)ちの町と宮川、米沢(よねざわ)、豊平(とよひら)、玉川、泉野(いずみの)、金沢(かなざわ)、湖東(こひがし)、北山の8村が合併して茅野町となり、1958年市制施行。蓼科火山(たてしなかざん)南西麓(ろく)の広大な裾野(すその)一帯を占めるが、ちの・宮川地区は諏訪盆地(すわぼんち)にあり、ちの地区に商店街が形成されている。中心部をJR中央本線、国道20号、中央自動車道が通り、隣接する諏訪市に諏訪インターチェンジがある。また蓼科高原や霧ヶ峰方面へはビーナスラインが走り、佐久地方へは国道299号、伊那(いな)市方面へは杖突(つえつき)峠を越えて国道152号が通じている。盆地部は、中世には諏訪大社上社前宮神殿(まえのみやごうどの)の門前集落や、諏訪氏の山城(やまじろ)、豪族集落があったが、近世は甲州街道の通過地にすぎなかった。明治以降も昭和10年代までは周辺の買い物町にとどまり、蓼科山麓の村々も高冷地の山村であったが、昭和30年代に入り、蓼科高原、白樺(しらかば)湖、蓼科温泉郷などが開発され、県下有数の観光地になった。縄文時代中期の住居跡の尖石遺跡(とがりいしいせき)(特別史跡)、上之段遺跡(うえのだんいせき)(国の史跡)、甲州街道青柳宿(あおやぎしゅく)(金沢宿)跡などの文化財・史跡もある。1986年(昭和61)に棚畑遺跡(たなばたけいせき)から発掘された縄文時代中期の女性土偶は「縄文のビーナス」と呼ばれ、考古遺物として初の国宝指定をうけている。宮川の水田は冬季寒天の生産が盛んで、蓼科山麓ではパセリ、セロリ、キクなど冷涼な気候を利用した農産物がつくられている。御座石神社(ございしじんじゃ)のどぶろく祭りは4月下旬に行われ、諏訪社にまつわる祭りとして名高い。面積266.59平方キロメートル(一部境界未定)、人口5万6400(2020)。
[小林寛義]
長野県中東部,諏訪地方東部にある市。1958年市制。人口5万6391(2010)。中世に諏訪氏の居城が西部の上原に築かれ,近世には甲州道中の宿駅が南部の金沢に置かれた。市域は八ヶ岳,蓼科(たてしな)山の西麓(山浦地方と呼ぶ)の大部分を占め,この地方の中心であり,市役所の標高が801mで全国で最も高いことに示されるように高原の町である。JR中央本線,中央自動車道が通じる。諏訪の内陸工業地帯の一部として電子,精密などの機械工業が発達するが,またのこぎりや寒天などの地場産業もあり,冬の寒さと晴天を利用した天然の角寒天の製造は全国生産の大半を占めている。農業ではセロリやレタスなどの高原野菜,リンドウ,キク,アスターなどの花の栽培が盛んである。白樺湖,蓼科高原,八ヶ岳などの観光地が市域にあり,観光産業も地域経済に大きな比重をもっている。八ヶ岳山麓に位置する尖石(とがりいし)遺跡は日本の縄文中期を代表する遺跡である。
執筆者:市川 健夫
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