荒い(読み)アライ

デジタル大辞泉 「荒い」の意味・読み・例文・類語

あら・い【荒い】

[形][文]あら・し[ク]《「粗い」と同語源》
動きが大きく激しい。「波が―・い」「呼吸が―・い」
性格言動にやさしさがなく粗暴である。激しい。「気性の―・い馬」「言葉が―・い」
けじめがない。度をこしている。「金遣いが―・い」「人使いが―・い」
荒れはてている。ととのえられないままになっている。
「岩が根の―・き島根に宿する君」〈・三六八八〉
[派生]あらさ[名]
[類語]荒っぽい荒荒しい乱暴がさつ野蛮手荒手荒い粗野粗暴蛮カラ野性的がらっぱち荒気ない

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精選版 日本国語大辞典 「荒い」の意味・読み・例文・類語

あら・い【荒・粗】

  1. 〘 形容詞口語形活用 〙
    [ 文語形 ]あら・し 〘 形容詞ク活用 〙 整った、あるいは整えられた状態になく、調和のとれた理想的状態になっていない。緻密(ちみつ)でない。
  2. [ 一 ] ( 荒 )
    1. 物事の勢いが強くはげしいさまにいう。
      1. (イ) 風や波などの自然現象や、呼吸、物音などがはげしい。猛烈である。
        1. [初出の実例]「忽に暴(アラキ)風に逢ひて海の中に漂(ただよ)ふ」(出典:日本書紀(720)推古一七年四月(岩崎本訓))
        2. 「ぜいぜい荒い呼吸をしながら峠をのぼり」(出典:走れメロス(1940)〈太宰治〉)
      2. (ロ) 心、言葉遣いなど、心理状態や性格がおだやかでない。態度・行動・動作があらあらしい。乱暴である。
        1. [初出の実例]「狼(おほかみ)の子の野心(アラキこころ)ありて、飽(あ)いては飛(さ)り、飢ゑては附(つ)く」(出典:日本書紀(720)雄略九年三月(前田本訓))
        2. 「あらく仰せられんもさすがにいとほしくて」(出典:大鏡(12C前)二)
      3. (ハ) やり方が適度でない。処理のしかたがひどい。「人使いが荒い」
        1. [初出の実例]「孔方(おあし)の遣ひ方が荒(アラ)うございます」(出典:滑稽本・浮世風呂(1809‐13)三)
      4. (ニ) 程度がはなはだしい。
        1. [初出の実例]「ムムあらくいい汁だ」(出典:洒落本・真女意題(1781))
      5. (ホ) 労力がいる。力を使う必要がある。
        1. [初出の実例]「余り楽を為過(しすぎ)ました処から荒い仕事は出来ません」(出典:落語西京土産(1892)〈三代目三遊亭円遊〉)
    2. 荒れはてている。ととのえられないままになっている。また、道などがけわしい。
      1. [初出の実例]「やまとをも 遠くさかりて いはがねの 安良伎(アラキ)島根に やどりする君」(出典:万葉集(8C後)一五・三六八八)
  3. [ 二 ] ( 粗 )
    1. 織物、編み物、縞模様などの目が大きい。
      1. [初出の実例]「疏(アラク)織り短く裁(た)ちて、疋の数に充(あ)つ」(出典:白氏文集天永四年点(1113)四)
      2. 「白茶地に疎(アラ)い飛形のシォールを着た」(出典:多情多恨(1896)〈尾崎紅葉〉前)
    2. 粒などが大きい。まばらである。また、そのためにざらざらしている。なめらかでない。
      1. [初出の実例]「庶民(おほむたから)(し)なむ時には地に収埋めよ。其の帷帳等には麁(アラキ)布を用ゐるべし」(出典:日本書紀(720)大化二年三月(北野本訓))
      2. 「諸君は茶碗、徳利の底を見しならん。〈略〉これを撫づれば粗きを覚ゆ」(出典:日本読本(1887)〈新保磐次〉四)
    3. 表現、つくり方などがおおざっぱである。洗練、精製されていない。粗末である。
      1. [初出の実例]「此の蕪(アラキ)(ことば)を截(す)てて其の実録を採(と)らむ」(出典:大唐三蔵玄奘法師表啓平安初期点(850頃))
      2. 「時によりて詩があらいと云ことあり」(出典:中華若木詩抄(1520頃)上)
    4. ウナギ蒲焼で)身が大きめである。
      1. [初出の実例]「宮下の藤屋へでもいって、荒(アレ)え所を焼かして来てくれ」(出典:歌舞伎・音聞浅間幻燈画(1888)四幕)

荒いの派生語

あら‐げ
  1. 〘 形容動詞ナリ活用 〙

荒いの派生語

あら‐さ
  1. 〘 名詞 〙

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