韓国,慶尚南道の日本海沿岸の都市。人口101万4428(2000)。1997年広域市に指定された。太和江が形成した沖積平野に位置し,稲作を中心とする農業と,蔚山湾の方魚津港などを基地とする漁業に従事する農漁村であったが,1961年に登場した朴正熙政権が韓国工業化のモデルとしてここに工業団地を建設したため,地域の様相が一変した。天然の良港の存在,広い敷地を相対的に安く確保できること,釜山から自動車で1時間の距離にあることなどが立地の有力な理由となった。市域の23%ほどにあたる24km2が工業団地として指定され,工場地区,住宅地区,商業地区が整然と区画されたうえに緑地帯も設けられるなど,計画的な都市造りが進められた。62年に着工された工業団地には今日,発電所,石油精製などのエネルギー部門をはじめとして,石油化学コンビナート,造船,自動車,化学肥料など韓国屈指の重化学工業が集中している。市の人口も62年の市昇格当時の8万5000人から80年に40万人,95年には96万人をこす急成長をとげた。蔚山湾の方魚津,長生浦港を基地とする漁業も盛んだが,重化学工業の集中による産業公害の発生もはなはだしく,周囲の農業と同様,年々被害が大きくなっている。なお,市内の蔚山城趾は,豊臣秀吉の朝鮮出兵の際加藤清正が築いた城郭の跡地で,清正軍が明と朝鮮連合軍の包囲をうけた蔚山籠城の地として有名である。現在は市民公園となっている。
執筆者:谷浦 孝雄
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韓国(大韓民国)南東海岸にある工業都市。1962年、市に昇格。98年広域市となった。面積1056.29平方キロメートル、人口101万2110(2000)。蔚山湾頭に位置し、兄山江地溝帯の南端を占めている。市の中央を太和江が東流して蔚山湾に注ぐ。暖流の影響で気候は温和、多雨地域でもある。1960年代初めまでは第一次産業人口が76%、第二次産業人口が4.5%であったが、69年、経済総合開発計画による大工業団地の完工により、80年には第二次産業人口45.1%、第三次産業人口35.6%の一大工業都市に変貌(へんぼう)した。古くから農産物、魚類の集産地であるが、製鉄、重化学、造船、自動車など近代化の拠点として重要な都市となっている。
[森 聖雨]
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