幕末期に薩摩藩と土佐藩とが締結した,幕藩制に代わる国家を構想しようとした政治同盟。この構想は,1867年(慶応3)5月の四侯会議解体後の政局のなかで,討幕挙兵論に対応して成立したもので,大政奉還論にもとづく。この四侯会議とは,島津久光・松平慶永・山内豊信・伊達宗城が,兵庫開港の勅許および長州処分の問題について朝廷から諮問をうけるため京都に会同したもので,そのことにより将軍に代わって雄藩諸侯に政権を委任させようとする薩摩藩指導部の考え方もあった。しかしその内部分裂によって解体したことは,雄藩連合による幕府否定が困難なことを薩摩藩指導部に認識させ,さらに同藩に討幕挙兵の具体策を講じさせることになる。ところが土佐藩の藩論は,5月21日に薩摩藩と討幕挙兵の密約をむすんだ中岡慎太郎や板垣退助らの挙兵論と,幕府に同調しようとする山内豊信を中心とする挙兵反対論とに分裂していた。この土佐の藩論をまとめたのが,坂本竜馬の〈船中八策〉に影響されて成立した同藩の後藤象二郎の大政奉還論である。この武力行使を伴わない列侯会議による幕府否定の構想が,藩内両派に受容されたのであった。他方薩摩藩は土佐藩からこの構想による協力の申入れをうける。四侯会議による雄藩連合政権構想からいち早く脱落した土佐藩がこのような構想を申し入れてきたので,薩摩藩は早速これに同調する。その理由は,たとえ挙兵準備をすすめていたとしても薩摩藩の国家構想が雄藩連合政権をこえていなかったからであり,さらにその構想に土佐藩の積極的参加が期待できたからである。こうして67年6月22日,土佐藩の後藤象二郎・福岡孝弟・坂本竜馬・中岡慎太郎らが薩摩藩の小松帯刀・西郷隆盛・大久保利通らと会合し,土佐藩の主張を骨子とする盟約が成立した。その内容は,幕府が朝廷に政権を返上し,将軍は諸侯の列に下り,議事院を設けて雄藩連合の全国政権樹立のため両藩が協力することであった。しかし薩摩藩が討幕の密勅を手に入れ,討幕挙兵の名分を確保するとともに,この盟約は破棄される。
執筆者:池田 敬正
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幕末維新期に、薩摩藩と土佐藩との間に締結された大政奉還・公議政体を目ざした盟約。1867年(慶応3)6月22日、土佐藩の後藤象二郎(しょうじろう)・福岡孝弟(たかちか)・坂本龍馬(りょうま)と、薩摩藩の小松帯刀(たてわき)・西郷隆盛(たかもり)・大久保利通(としみち)らとの間で京都で成約された。内容は、将軍の政権奉還と朝廷のもとに諸侯会議を基軸として政治を運営するというもの。薩長連合による倒幕の動きを察知した後藤らは、坂本のいわゆる「船中八策(せんちゅうはっさく)」の構想をも一部取り入れ、平和的な政権移行を図るこの路線で藩論をまとめて薩摩側に働きかけた。薩摩側もまた、倒幕準備のための時間かせぎ、予想される幕府の大政奉還拒否による倒幕の名分獲得などの思惑で、この構想をいれたと考えられる。
[芝原拓自]
『維新史料編纂事務局編『維新史』全6冊(1939~41・明治書院)』▽『田中彰著『明治維新政治史研究』(1963・青木書店)』
1867年(慶応3)に結ばれた薩摩国鹿児島藩と土佐国高知藩の協約。幕府は第2次長州戦争開戦や兵庫開港問題で強引な政策をとったため,諸藩の反発を招いた。とくに雄藩は旧来とは異なる結集方法を模索し始めた。その先駆けが66年の薩長連合で,その後,鹿児島藩・高知藩・福井藩・宇和島藩による協商がめざされた。高知藩の後藤象二郎は坂本竜馬の「船中八策」をもとに大政奉還・公議政体を構想し,67年6月竜馬とともに京都に上り,鹿児島藩の小松帯刀(たてわき)・西郷隆盛・大久保利通と会談,盟約を結んだ。内容は幕政返上の実現のための協力を約するものであった。以後,高知藩の大政奉還路線が定着。
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…こうした公議政体論は,肥後藩士横井小楠,薩摩藩士五代友厚や幕臣大久保忠寛(一翁)らにもみられ,坂本竜馬はこの大久保の影響をうけたといわれている。 1867年6月22日,後藤は,薩摩藩に働きかけて薩土盟約を結んだ。これは後藤のほかに,土佐藩の寺村左膳,福岡孝弟,真辺栄三郎,中岡慎太郎らが加わり,薩摩藩の小松帯刀(たてわき),西郷隆盛,大久保利通らとの協議によって成ったもので,公議政体路線と討幕派路線とが微妙にからみ合っていた。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
各省の長である大臣,および内閣官房長官,特命大臣を助け,特定の政策や企画に参画し,政務を処理する国家公務員法上の特別職。政務官ともいう。2001年1月の中央省庁再編により政務次官が廃止されたのに伴い,...
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