鎌倉・南北朝時代の臨済(りんざい)宗聖一(しょういち)派の僧。京都の人。8歳のとき山城(やましろ)(京都府)三聖寺の東山湛照(とうざんたんしょう)(1231―1291)のもとで出家し、東山の寂後は南禅寺の規庵祖円(きあんそえん)(1261―1313)に学んだ。ついで鎌倉に行き、桃渓徳悟(とうけいとくご)(1240―1307)、蔵山順空(ぞうざんじゅんくう)(1233―1308)、無為昭元(むいしょうげん)(1245―1311)、一山一寧(いっさんいちねい)などに師事し、仏典や禅籍、儒書、詩文を学んで南宋士大夫(なんそうしたいふ)の学芸を身につけ、初期の代表的五山文学僧として唐宋八家に比された。また一山の啓発により日本最初の総合仏教史の編纂(へんさん)を企て、1322年(元亨2)『元亨釈書(げんこうしゃくしょ)』30巻を完成した。さらに東密(とうみつ)や台密(たいみつ)の相承(そうじょう)も受け、自らも密法を修する兼習禅者でもあった。初め京都・河東の歓喜光寺(かんぎこうじ)、白河の済北庵(さいほくあん)、伊賀の本覚寺を兼帯したが、1332年(元弘2)東福寺に入院、1339年(延元4・暦応2)南禅寺に昇住、1341年に東福寺海蔵院に退居したので海蔵和尚(おしょう)とよばれる。翌1342年本覚国師の号を特賜された。1346年7月23日示寂。著書はほかに、『禅儀外文(げもん)集』『聚分韻略(しゅうぶんいんりゃく)』のような四六文の作法や韻書、『済北(さいほく)集』『十禅支録(じゅうぜんしろく)』などの詩文集や語録のほか、『仏語心論』『禅余或問(わくもん)』など多数ある。
[石川力山 2017年7月19日]
鎌倉末・南北朝初期の臨済宗の僧。五山文学,学問興隆の先駆者。京都に生まれ幼少より禅を修め,また儒学や密教をも学んだ。30歳のころ鎌倉で一山一寧(いつさんいちねい)に学び,帰京後1322年(元亨2)に僧伝を中心にした仏教書《元亨釈書(げんこうしやくしよ)》を著した。東福寺,南禅寺等の住持を経て,42年(興国3・康永1)に国師号を与えられた。漢詩文集に《済北集》がある。
執筆者:飯田 悠紀子
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1278~1346.7.24
鎌倉後期~南北朝期の臨済宗の僧。諡号は本覚国師。京都生れ。父は藤原左金吾校尉。8歳で臨済宗聖一派東山湛照(とうざんたんしょう)のもとに参禅,東山の没後,規庵祖円・桃渓徳悟らに従い修行。1307年(徳治2)建長寺の一山一寧(いっさんいちねい)を訪ねたのを機に,22年(元亨2)「元亨釈書」を著す。また鎌倉の無為昭元(むいしょうげん)・約翁徳倹(やくおうとっけん)の会下(えげ)に入る一方,仁和寺・醍醐寺で密教を学ぶ。39年(暦応2・延元4)南禅寺の住持となり,41年(暦応4・興国2)東福寺海蔵院に退き,翌年後村上天皇から国師号をえた。菅原在輔から「文選」を,六条有房から「易」を学ぶなど研鑽に努め,該博な知識をえた。「聚分韻略(しゅうぶんいんりゃく)」「済北(さいほく)集」など著作多数。
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…【川口 久雄】
【中世】
中世の漢文学の主流は,何といっても五山禅僧の作品である。鎌倉時代の作者には虎関師錬(こかんしれん),雪村友梅(せつそんゆうばい),中巌円月(ちゆうがんえんげつ)がある。虎関師錬は一山一寧(いつさんいちねい)より学んだので,やや古風な作風を有するが,雪村は在元22年の長きにわたり,中国人の文脈句法を体得した人であり,中巌円月は在元の期間は雪村友梅ほど長くないが,その文脈句法の体得は雪村以上で,とくに四六文の学習に力を注いだ人である。…
…30巻。虎関師錬著。師錬は初期の五山文学を代表する詩僧で,東福寺,南禅寺などの住持をつとめた。…
…漢字1字ごとに,片仮名で音訓を示した平易なもので,以後広く行われた。 韻引きのものでは,虎関師錬(こかんしれん)が《聚分韻略》を著した。嘉元4年(1306)と記した序があり,まもなく開板流布したものとみられる。…
…室町時代になると,数学遊戯に類する問題がよく行われた。虎関師錬の《異制庭訓往来》には,〈十不足〉〈百五減〉〈盗人隠〉〈左々立(ささだて)〉などの碁石を使って遊べる遊戯が並べられている。《簾中抄(れんちゆうしよう)》には,〈継子立〉と〈目付字(めつけじ)〉の記事がある。…
※「虎関師錬」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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