翻訳|hearing
行政決定の手続過程において利害関係人等に主張・立証の機会を与えることによって,公正妥当な行政決定を導き出す行政手続をいう。アメリカ合衆国憲法修正5条に定める適正手続原則およびイギリスの判例法上形成された自然的正義原則に基づく行政手続法上の考え方を,戦後,日本の行政法に導入したものである。
聴聞は,その目的および手続内容により,事実審型聴聞と陳述型聴聞とに区別することができる。事実審型聴聞は,不利益処分に際して,処分の相手方に自己の権利利益を防御するために,主張・立証の機会を与え,行政庁が独断と偏見のない手続を踏んで処分を決定することを求める手続である。行政庁の裁量権行使の妥当性を確保するうえで有効と考えられている(行政裁量)。陳述型聴聞は,行政計画等の決定に際して,利害関係をもつ各層から政策的意見,資料等の提供を受け,行政の意思形成をする手続であり,都市計画法が定める公聴会がその例である。1993年に制定された行政手続法は,不利益処分をしようとする場合の聴聞および弁明の機会について定めている(第3章)。聴聞は口頭主義の手続であるのに対して弁明の機会は書面主義の手続であることに違いはあるが,いずれも略式の事実審型聴聞である。日本では正式の事実審型聴聞は公正取引委員会の審判手続等にみられるのみである。聴聞手続では,処分の相手方の手続的権利の保障をはかって,代理人,文書の閲覧,聴聞の主宰,審理の方式,聴聞調書および報告書などの手続について詳細に定めている。
→行政手続法
執筆者:小高 剛
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…しかし,行政手続の意義を認める最高裁判所判決など判例が形成されてきたことや,近年,日本の許認可行政などの行政決定過程の公正性と透明性を求める声が高まってきたことなどの社会状況を背景にして,1993年に日本の行政法の歴史上はじめて行政手続法が制定された。 行政手続は,大別すると公正取引委員会の審判手続のように司法手続に近い慎重な手続を求める事実審型聴聞と都市計画法が定める公聴会のような陳述型聴聞があるが,行政手続法は事前行政手続のすべてを定めるのではなく,さまざまな経緯から,行政決定過程の現状において行政の公正性,透明性について問題の多い許認可等の申請に対する処分,不利益処分および行政指導について,それぞれ共通的な手続を定めるにとどめている。その内容は,申請に対する処分については審査基準の作成とその公表,標準的処理期間の決定とその公表,申請を拒否する処分をする場合の理由の提示等を定め,不利益処分については処分基準の作成,処分手続として聴聞または弁明の機会等を定めている。…
…審問および審尋は,当事者等の利害関係人に簡易迅速な陳述の機会を与え,裁判所ないし裁判官が口頭弁論のような厳格な方式によらずに利害関係人の主張を聞くための手続である。なお,行政機関が処分等の行為を行うに際して,利害関係人に陳述の機会を与え,その意見を聴取する手続(一般には聴聞と呼ばれる)をさして審問と呼ぶことがある(証券取引法36条,労働組合法27条1項)。審尋【太田 勝造】。…
※「聴聞」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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