最高裁判所,高等裁判所および地方裁判所に置かれ,裁判官の命を受けて,事件の審理および裁判に関し,必要な調査をして報告することがその職務内容である(裁判所法57条)。その任免は最高裁判所が行う。ただし,地方裁判所の調査官は工業所有権事件および租税事件のためのものに限られている。最高裁の調査官は判事の資格を有する者がこれにあてられており,最高裁判事の数が長官も含め15名と比較的少数であるのを補佐して,とりわけ法律の解釈,適用に関して重要なはたらきをしている。しかし審理および裁判はつねに裁判官の責任において行われるのであり,裁判所調査官はどのような場合でもそこまで代行するものではなく,法廷に立ち会ったり証拠調べにあたったりすることもない。
訴訟とりわけ民事訴訟は,対等の立場に置かれた対立当事者(原告と被告)の主張,立証するところを,中立の位置を占める裁判所が受動的に聴取して,事件についての裁断である終局判決を下すしくみになっている。したがって裁判所側が積極的に事件の事実内容に立ち入って調査することはないが,適用すべき法規の確定と解釈は当事者の主張に依存することなく,裁判所の責任にゆだねられている。また当事者の事実主張を理解するために専門学識が必要となることも少なくない。裁判所調査官はこれらの局面で裁判官のすべき調査活動を補佐するのである。
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最高裁判所、各高等裁判所および地方裁判所に置かれる職員であって、裁判官の命を受けて、事件(地方裁判所では、知的財産または租税に関する事件に限る)の審理および裁判に関して必要な調査を担当する者をいう(裁判所法57条)。最高裁判所は、当分の間、とくに必要があるときは、裁判官をもって裁判所調査官にあてることができる。現実には、最高裁判所調査官には、実務経験の豊富な下級裁判所の裁判官が任命されている。最高裁判所調査官はその個人的意見に基づいて、最高裁判所の判例解説を行っている。なお、各家庭裁判所および各高等裁判所には、家庭裁判所調査官(裁判所法61条の2)が置かれている。
[内田一郎]
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…裁判所法は最高裁判所に関しさらにくわしく定めるとともに,下級裁判所として高等裁判所,地方裁判所,家庭裁判所および簡易裁判所の4種を設けること,およびそれらの構成,権限,裁判所要員などの事項に関し詳しい規定を設けている。 裁判所の職員には,裁判官のほか裁判所書記官,裁判所調査官,裁判所事務官,執行官,裁判所技官などがある。裁判所書記官は,訴訟を含め裁判所のすべての手続を記録した調書の作成,管理を中心とした重要な職務を担う。…
※「裁判所調査官」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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