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多体問題 たたいもんだいmany-body problem

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

多体問題
たたいもんだい
many-body problem

互いに作用を及ぼし合う多数の粒子の運動状態を論じる力学の問題。数学的に正確な解は求められず,近似的に解けるだけである。各分野で種々の近似法が用いられ,計算機による計算がなされている。ニュートン力学二体問題は解けるので,多体問題といえるのは三体以上の問題であって,天体力学において互いに万有引力を及ぼし合う3個または4個の天体の軌道を論じるのがその例である。量子力学では2個以上の電子を含む原子や分子波動方程式が多体問題として論じられる。多数の原子や分子の集団である物質の性質を論じる物性論では統計力学が用いられる。原子核核力を及ぼし合う多数の核子から構成された多体系で,種々の核模型によって論じられる。素粒子の問題は相互転換や生成消滅を扱う本質的な多体問題で,第二量子化の方法を用いた場の量子論で論じられる。

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百科事典マイペディアの解説

多体問題【たたいもんだい】

互いに力を及ぼし合いながら動く多数の質点からなる系の運動を調べる問題。多体問題を数学的に正確に解くことは少数の例を除いて不可能で,数学的に解けるのは2体問題まで。

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世界大百科事典 第2版の解説

たたいもんだい【多体問題 many‐body problem】

互いに力を及ぼし合いながら動く複数の質点からできている系の運動を調べる問題。惑星の運動でニュートンの力学が成功したのは,惑星相互の間に働く力が弱く,太陽を不動の中心としてそれによる万有引力で各惑星が独立に運動していると考え,一体問題を解いて十分な精度が得られたためである。精度を上げるために惑星間の引力や衛星の影響を考慮すると,多体問題を扱わなければならなくなるが,特殊の例外的な場合を除いて,多体問題を正確に解析的に解くことは不可能であることが証明されており,何らかの近似を用いることが必要である。

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大辞林 第三版の解説

たたいもんだい【多体問題】

〘物〙 相互作用し合う多数の粒子の系の運動を規定する問題。二体問題は一体化して扱うことができるが、三体以上の系、例えば原子・分子内の多電子系、原子核における核子の系、結晶内の電子・原子の集合などでは、それぞれの系に適切な近似法を用い、特徴的な振る舞いを見出すことが課題である。また、素粒子は生成・消滅を絶えず行うので、それを扱うのも多体問題となる。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

多体問題
たたいもんだい

粒子または粒子とみなすことのできる物体(力学でいう質点)が複数個互いに力を及ぼし合いながら運動している系を扱う問題。物理学で扱う問題の大部分は多体問題であるともいえるが、粒子数が3個以上のときには、古典力学でも量子力学でも、解を解析的に求めることはできないので、問題に応じたさまざまな近似法を用いなければならない。つり合いの位置から各粒子がすこしだけ変位したとき、粒子を元に戻そうとする力が変位に比例する場合には、この粒子系は連成振動として解析することができる。分子の振動や固体結晶の熱振動がこの例である。さらに、多粒子の系では波動(多くの場合は定常波)の形をもつ。微小粒子が密に分布した極限に近似のものが、連続体の弾性波や定常振動である。また、金属中の電子や原子核中の核子(陽子と中性子)の状態を量子力学的に解析することも多体問題とよばれる。これらの場合、多数の粒子が同時に動く集団振動はかなり一般的に存在し、音波に類似の波や、荷電粒子系でおこるプラズマ振動、液滴状の原子核の振動などがある。そのような波の、波長と振動数の関係などを求めることも多体問題の研究課題である。[小出昭一郎・小形正男]

天文学における多体問題

天文学における多体問題とは、ニュートンの万有引力のもとに運動している複数の天体の運動を求めることをいう。3個の質点の場合(三体問題)ですら、一般的に解くことができないので、一般の多体問題を解くことは不可能である。三体問題の特殊解である正三角形解に対応する中心図形解は多体問題に存在するが、現実の太陽系内に、その例は存在しない。太陽系は、太陽の質量の1000分の1以下である惑星、その惑星の質量のさらに数十分の1以下の衛星というように階層構造をなしている。したがって、惑星は太陽との、衛星は惑星との二体問題として近似することができ、他の天体の引力は摂動(せつどう)として取り扱い、短期間(数百万年)の運動は摂動論を用いて詳しく求めることができる。[木下 宙]
『西山敏之著『多体問題入門』(1975・共立出版) ▽荒船次郎・江沢洋・中村孔一・米沢富美子編、高田康民著『多体問題――電子ガス模型からのアプローチ』(1999・朝倉書店) ▽戸田盛和著『物性物理30講』(2000・朝倉書店) ▽江沢洋編『数理物理への誘い3 最新の動向をめぐって』(2000・遊星社) ▽岡崎誠著『固体物理学――工学のために』(2002・裳華房) ▽吉田春夫著『岩波講座 物理の世界 力学〈4〉――力学の解ける問題と解けない問題』(2005・岩波書店) ▽住明正・寺沢敏夫・岩崎俊樹・遠藤昌宏・小河正基・戎崎俊一著『地球惑星科学〈7〉――数値地球科学』(新装版)(2010・岩波書店)』

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