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言語年代学 げんごねんだいがくglottochronology

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

言語年代学
げんごねんだいがく
glottochronology

言語における基礎語彙が,一定の意味の枠からとらえた場合,どの言語でも一般にほぼ一定の速度で入替るということが,経験的に明らかになりつつあるので,逆に基礎語彙を統計学的かつ言語学的に研究することにより,同系語が祖語から分裂した年代を探ったり,親族関係の解明の一つの手掛りにしたりしようとする学問。 M.スワデシュの提唱した説 (1952) で,それによれば変化率 (消失率) は 1000年で約 19%であるという。この理論には,そもそも基礎語彙とは何か,どれだけ認めるか,統計計算の係数はどうするか,などの問題が残っているが,不定とされていた語彙変化の速度に一定性のあること,どの言語間でも5~10%ぐらいの「類似」がみられるから,逆にその程度の「類似」では親族関係および歴史的関係の証明とはならないこと,言語の歴史における絶対年代の少くとも最下限が一応推定できること,などが明らかにされつつあり,孤立語の比較研究にも新たな光を投じることとなる。なお,この方法は音韻法則を無視したり,それと矛盾したりするものではない。基礎語彙統計学 lexicostatisticsともいうが,これは言語年代学以外の方法も含みうる広い概念である。

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百科事典マイペディアの解説

言語年代学【げんごねんだいがく】

語彙(ごい)統計学とも。米国のスウォデシュM.Swadeshらが1950年前後から提唱している言語の親族関係確認法。人間生活に最も基本的と思われる語彙200余を選び,これが1000年の間に平均19%失われるという事実を英語などによって確かめ,共通語彙の残存率から同系諸言語が祖語から分裂した年代を算定しようとする。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

言語年代学
げんごねんだいがく

放射性炭素14(14C)の残存放射能の測定による年代算定法にヒントを得て、アメリカの言語学者スワデシュが、1950年代に発表して有名になった方法。語彙(ごい)統計学ともいう。二つの言語が分裂してから経過した年代を測定する方法で、次のような公式による。

tは二つの言語が分裂してから経過した年代、cは比べられた二つの言語が共通に保存する語彙数のパーセンテージ、rは言語一般に認められる1000年単位に換算した語彙の平均保持率とする。
 このうち重要なのはrで、スワデシュは、過去の文献をもつ12の言語(うちインド・ヨーロッパ語族から10言語)につき、215項目の基礎語彙が1000年間に平均して81%保持されるという結果を得、rを定数とした。もし100項目の基礎語彙表を用いるならば、rは上昇して85%となる。たとえば、ゲルマン語派の現代英語と現代ドイツ語との分裂年代は、1952年から1236年前、すなわち西暦716年と出る。しかしこの数字は、5世紀ごろからのゲルマン人のイギリス侵入という歴史的事実にあわない。これは、式のうえでは、分裂した直後から2言語間にまったく語彙的交渉があってはならないことを前提としているためで、その後、経験的方面からのいくつかの修正式も提案されている。またrの定数的性格についてもいろいろの言語の調査から疑問が提出された。さらに、比べられる2言語は、同じ語族に属することが前もって比較言語学的に証明されていなければ、この方法を用いて得られた答えも無意味になる。[崎山 理]

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世界大百科事典内の言語年代学の言及

【基礎語彙】より

…これにならい日本では英文学者の土居光知が1933年,《基礎日本語》(1000語,のち100語追加)を発表した。 これとは別に,アメリカの言語学者スワデシュMorris Swadesh(1909‐67)は1950年に〈基礎語彙〉の名を用いて,彼のいわゆる〈言語年代学glottochronology〉における核心的語彙,すなわち,社会的激変によってもあまり変動しない部分をさし,これは言語の差異にもかかわらず変化の速度が一定であるとの仮説を立てた。これは日本語などについても応用・検証されたが,なにを基礎語彙とみなすか,また比較言語学で同系性が証明されない言語間に,この方法を応用してよいかどうか疑問がもたれている。…

※「言語年代学」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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