(読み)なまり

日本大百科全書(ニッポニカ)「訛」の解説


なまり

標準語とあわない発音をいうが、内容はさまざまである。(1)関西のケツネ(狐)のような、個々の単語の発音のずれ、(2)下町ことばのの混同のような、関係する音節をもつ単語すべてに及ぶもの、(3)母音の音声のずれや単語のアクセントの違いのように、文字に表されないが、朗読すると出るようなもの、などである。(1)については、語源や発想の違うものを俚言(りげん)とよび、発音のずれである訛(訛語(かご))と区別する考えもあるが、実際には境界を引きにくい。(2)や(3)のような訛によって出身地がわかることがある。一方、訛のあることばは社会的に低くみられることがあり、訛を笑われて「方言コンプレックス」に陥ることもある。

[井上史雄]

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デジタル大辞泉「訛」の解説

か【訛】[漢字項目]

[音]カ(クヮ)(慣) [訓]なまり
本来の話や考えなどの内容がいつのまにか変わる。「訛伝
正式の発音・文字からずれる。なまる。なまり。「訛音訛言・訛字/転訛
[補説]「譌」は異体字。
[難読]訛声(だみごえ)

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精選版 日本国語大辞典「訛」の解説

なま・る【訛】

〘自ラ五(四)〙 言葉や発音がくずれる。また、そのような言い方をする。標準的でない言い方をする。よこなまる。
※金葉(1124‐27)連歌・六四〇・詞書「ゐたりける所の北のかたに声なまりたる人のものいひけるを聞きて」
※助左衛門四代記(1963)〈有吉佐和子〉「垣内家をしょうくいと呼んでいるのは、正福院が訛(ナマ)ったものである」
[語誌]「訛」について、「書紀‐神武即位前」に「訛、此をば与許奈磨盧(ヨコナマル)と云ふ」とある。平安後期以降「なまる」が多く用いられるようになるが、一方、「色葉字類抄」に「訛 タミタリ」とあり、「だぶ」「だむ」もほぼ同じ意味で使われた。現代ではもっぱら「なまる」が用いられ、「だむ」は「だみ声」などに残っている。

なまり【訛】

〘名〙 (動詞「なまる(訛)」の連用形の名詞化) ある地方にみられる、標準語・共通語とは異なった発音。
※頼政集(1178‐80頃)下「みちのくのかねをばこひて掘なましいもなまりのわすられぬかな」
※生(1908)〈田山花袋〉三九「弘前なまりが容易に取れぬので」

クヮ【訛】

〘名〙
① ある地域、または個人が標準とちがう発音、アクセントなどをもつこと。また、その言い方。なまり。〔旧唐書‐地理志・三・河西道〕
② ことばや文字のあやまり。
※読本・椿説弓張月(1807‐11)拾遺「爰細加釐定、訂訛正舛、寿諸梨棗

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世界大百科事典内のの言及

【方言】より

…普通は場所による違い(地域方言)を指すが,欧米では社会階層,職業による違い(社会方言)をも〈方言〉ということがある。
【方言の概念とその周辺】

[方言と俚言・訛]
 学問的には〈方言〉を,ある地域で使われる言葉の全体を指す用語として使う。しかし一般に〈方言〉というと,個々の単語,しかも共通語と語形の違うものを指していうことも多い。…

※「訛」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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