訪問看護ステーション(読み)ホウモンカンゴステーション

デジタル大辞泉 「訪問看護ステーション」の意味・読み・例文・類語

ほうもんかんご‐ステーション〔ハウモンカンゴ‐〕【訪問看護ステーション】

自宅療養する人に対して訪問看護を行う目的で運営される事業所看護師保健師助産師理学療法士などが所属し、医師や関係機関と連携して在宅ケアを行う。訪問看護事業所

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百科事典マイペディア 「訪問看護ステーション」の意味・わかりやすい解説

訪問看護ステーション【ほうもんかんごステーション】

1992年4月,老人保健法に基づいて始められた制度。在宅寝たきり状態となった患者をまず医師が訪問診察し,その指示によって看護婦たちが家庭に出向いて看護などの在宅ケアを行うシステム。 当初は高齢者を対象としたものであったが,1994年10月の健康保険法改正によって,在宅の難病患者や障害者にも対象が広がった。利用できるのは,病気やケガ等で寝たきりまたはそれに準ずる人のうち,かかりつけ医が訪問看護を必要と認めた人,認知症(痴呆性)老人や寝たきりに陥る恐れのある人のうち,かかりつけ医が,理学療法や作業療法を必要と認めた人,病気やケガ等で家庭において継続して療養を受ける状態の人のうち,かかりつけ医が訪問看護,理学療法,作業療法を必要と認めた人とされている。 1990年代のゴールドプランなどによる在宅福祉政策の推進によって注目を集めている〈在宅ケア〉の中核を担うものとして,その果たす役割も増大している。 具体的なサービスの内容は,病状観察,医療的処置および相談(酸素吸入,床ずれ処置等),看護・介護技術の実施と相談(洗髪,排泄等),栄養・食事療法に関する相談など,リハビリテーションの実施と相談,かかりつけ医への連絡,生活環境の調節等,多岐にわたる。 また,医療保険制度の改正により,訪問看護ステーションは,こうした看護や介護サービスのほかに,在宅酸素療法や自己腹膜灌流法(CAPD),中心静脈栄養法(IVH)など,在宅医療の中核的役割を担うようになり,それに伴って,メンバーも,看護婦のほか,保健婦,理学療法士,作業療法士など多彩になった。これらはすべて,医師の指示のもとに活動している。 訪問看護利用料は老人保健対象者は1回につき250円,その他の利用者には健康保険が適用される。ただし,医師や看護婦などの交通費やカテーテルなどの保険適用範囲外の材料費等は,患者の実費負担となる。 ステーションを開設している事業者は,医療法人,社会福祉法人,医師会,看護協会,地方公共団体などで,1997年7月1日現在,都道府県知事の指定を受けて稼動している訪問看護ステーションは,全国に2048施設ある。1998年6月に発表された1997年の〈訪問看護統計調査〉では,訪問看護ステーションの利用者は,前年度(1996年)に比べて約1.5倍に増えているという。
→関連項目在宅福祉

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「訪問看護ステーション」の意味・わかりやすい解説

訪問看護ステーション
ほうもんかんごすてーしょん
home-visit nursing station
visiting nursing station

自宅等で暮らしている対象者に対して訪問看護サービスを提供する機関。

 日本においては、超高齢化、慢性疾患罹患(りかん)者の増加を背景として、1991年(平成3)に老人保健法のもとで老人訪問看護制度が設けられ、1992年に看護職(看護師または保健師)を管理者とする訪問看護ステーションが誕生した。1994年からは高齢者以外の年齢層にも対象が拡大され、2000年(平成12)には介護保険導入に伴い、医療保険、介護保険双方の制度によるサービスが提供されている。

 サービス内容は、看護職による訪問看護として対象者の状態に応じた日常生活援助(食事や排泄(はいせつ)、清潔等の援助)、膀胱(ぼうこう)カテーテルや気管切開などに伴う感染予防、医師の指示による診療の補助業務(注射など)、終末期のターミナルケア、対象者や家族への指導等がある。さらに理学療法士、作業療法士による訪問リハビリテーション、薬剤師や栄養士らとの協働も行われる。

 全国の訪問看護ステーション数は、制度開始翌年の1993年には277か所、10年後の2002年には4991か所と急増してきたが、その後はほぼ横ばい状態が続いた。2012年からはふたたび増加がみられ、2017年では1万0305か所、2020年(令和2)では1万1931か所の訪問看護ステーションが設置されている。国が推進している「地域包括ケアシステム」の構築のためには、さまざまな在宅介護サービス事業所に加え訪問看護ステーションの充実がますます望まれている。

[横山美樹 2021年5月21日]

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