読師(読み)ドクシ

デジタル大辞泉 「読師」の意味・読み・例文・類語

どく‐し【読師】

《「とくし」「とくじ」「どくじ」とも》
古代諸国国分寺講師とともに一人置かれた僧官。講師より1階級低い。
維摩会ゆいまえ最勝会などのとき、講師と相対して仏前高座に上り、経題経文を読み上げる役目の僧。
歌会などで、懐紙短冊たんざくなどを整理して講師に渡し、また講師に誤読のあった場合などには読み改める役。とうし。

とう‐し【読師】

どくし(読師)

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精選版 日本国語大辞典 「読師」の意味・読み・例文・類語

どく‐し【読師】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「とくし」「とくじ」「とうじ」「どくじ」とも )
  2. 仏語。上代・中古、諸国の国分寺に講師とともに一人置かれた僧官。講師より一階級低い。任期六年。〔三代格‐三・延暦二四年(805)一二月二五日〕
  3. 仏語。維摩会・最勝会などの法会の時、講師と相対して仏前の高座にのぼり、経題・経文を読み上げる役目の僧。
    1. [初出の実例]「講金光明最勝王経于大極殿〈略〉請律師道慈講師、堅蔵為読師」(出典:続日本紀‐天平九年(737)一〇月丙寅)
  4. 歌合わせや作文(さくもん)の会で、懐紙や短冊を整理して上下を定め、また番の次第に従って講師に渡す役。講師がその歌を読み得なかった時、読んで教えるところから起こった名という。
    1. [初出の実例]「匡衡朝臣依召参進読詩。左大臣為読師」(出典:権記‐長保二年(1000)一二月二日)

とう‐し【読師】

  1. 〘 名詞 〙どくし(読師)
    1. [初出の実例]「御歌所長を始め読師(トウシ)、講師、発声講頌等の所役奉行参侯寄人并びに拝観員参列」(出典:東京年中行事(1911)〈若月紫蘭〉一月暦)

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改訂新版 世界大百科事典 「読師」の意味・わかりやすい解説

読師 (どくし)

仏教儀式における僧の役名。とくじ,どくじともいう。講問論義法要では講師こうじ)と一対になって,本尊両脇に設けた講座に昇り,読師が論義の対象となる経典の名を読み上げ,講師がその解釈を披瀝(ひれき)していく。地味な役割であるが,大規模な法要では講師と同様に輿(こし)で入場するほど重視されている。また宮中における歌会始の歌披講(うたひこう)の読師は式の進行役を務め,講師が和歌を詠ずる。
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世界大百科事典(旧版)内の読師の言及

【歌合】より

…また当座歌合,兼日歌合,撰歌合,時代不同歌合,自歌合,擬人歌合など,歌人関与のあり方を規準として区分することもあって,歌合の分類は多岐複雑である。 またその構成は,人的構成にのみ限っていうと,王朝晴儀の典型的な歌合にあっては,方人(かたうど)(左右の競技者),念人(おもいびと)(左右の応援者),方人の頭(とう)(左右の指導者),読師(とくし)(左右に属し,各番の歌を順次講師に渡す者),講師(こうじ)(左右に属し,各番の歌を朗読する者),員刺(かずさし)(左右に属し,勝点を数える少年),歌人(うたよみ)(和歌の作者),判者(はんじや)(左右の歌の優劣を判定する者。当代歌壇の権威者または地位の高い者が任じる)などのほか,主催者や和歌の清書人,歌題の撰者などが含まれる。…

【講讃】より

…これに開経(導入)の無量義経,結経(補足)の観普賢経(かんふげんきよう)を加えて10座とした講讃が〈法華十講〉,法華経28品に開結2経を加えて30日間に講ずる講讃が〈法華三十講〉である。講讃の道場には,正面の左右に一段高い講座が据えられ,向かって左に講師(こうじ),右に読師(どくし)が登る。読師という名は経・論の本文を読み上げる役という意味で,講師につぐ重い役だが,実際には経・論の題名だけを読み上げ,あとは黙読する。…

※「読師」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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