(上田さち子)
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鎌倉初期の法相宗の僧。解脱上人と号する。藤原貞憲の子で,保元の乱の立役者信西の孫にあたる。1162年(応保2)8歳で南都に下向,11歳で出家して以来,82年(寿永1)28歳で維摩会の研学竪義,86年(文治2)32歳で維摩会講師を務めるなど,興福寺学侶としての栄達の道を進んだ。この間,九条兼実をはじめとする貴族の帰依も得たが,92年(建久3)生涯の転機となる笠置寺への隠遁を行った。この笠置隠遁の理由についてはこれまでも諸説があげられているが,弥勒浄土とされた笠置寺を拠点として弥勒信仰を広めることで,顕密仏教改革派の立場から法然の浄土教学に対抗せんとしたことがその一つの理由であろう。1205年(元久2)の著述になる,法然を批判した《興福寺奏状》がある。08年(承元2)海住山寺に移り,観音信仰を修め,同時に戒律興行を図った。著書に《愚迷発心集》がある。
執筆者:細川 涼一
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鎌倉初期の法相(ほっそう)宗の学僧。解脱房(げだつぼう)と号する。京都の人。藤原貞憲(ふじわらのさだのり)の子で藤原通憲(みちのり)の孫。南都仏教復興の先駆者である興福寺の覚憲(かくけん)(1131―1213。藤原通憲の子)に師事し、法相、戒律を学ぶ。若くして維摩会(ゆいまえ)、最勝会(さいしょうえ)の講師となったが、宗教界の堕落を憤り、笠置寺(かさぎでら)に隠遁(いんとん)し、弥勒(みろく)の兜率往生(とそつおうじょう)を願い求めて、戒律の再興を図った。1208年(承元2)海住山寺(かいじゅうせんじ)に移って学徒を指導し、「興福寺奏状」を起草し、法然(ほうねん)(源空)の専修念仏(せんじゅねんぶつ)を非難した。『唯識論同学鈔(ゆいしきろんどうがくしょう)』『心要鈔(しんようしょう)』『愚迷発心集(ぐめいほっしんしゅう)』などの著書がある。建暦(けんりゃく)3年2月3日、59歳で没する。
[納冨常天 2017年8月21日]
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1155.5.21~1213.2.3
鎌倉前期の法相(ほっそう)宗の僧。京都生れ。号は解脱房(げだつぼう)。笠置(かさぎ)寺上人とよばれた。藤原通憲(信西(しんぜい))の孫で同貞憲の子。興福寺に入り叔父覚憲について法相・律などを学ぶ。1182年(寿永元)維摩会竪義(ゆいまえりゅうぎ)を遂げ,御斎会(ごさいえ)・季御読経(きのみどきょう)などの大会に奉仕し,学僧として将来を嘱望されたが,名聞をきらい93年(建久4)かねて弥勒信仰を媒介にして信仰を寄せていた笠置寺に隠遁した。以後般若台や十三重塔を建立して寺観を整える一方,竜華会を創始し弥勒講式を作るなど弥勒信仰を深めていったが,1208年(承元2)海住山寺に移住し観音信仰にも関心を示した。1205年(元久2)興福寺奏状を起草し,法然(ほうねん)の専修(せんじゅ)念仏を批判した。法相・律・弥勒関係や「愚迷発心集」など著書多数。
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出典 日外アソシエーツ「367日誕生日大事典」367日誕生日大事典について 情報
…重源は荘内に播磨別所としての浄土寺を建立し,甥の観阿を住まわせた。浄土寺浄土堂は94年10月上棟,97年8月に解脱(げだつ)上人貞慶(じようけい)を導師に迎えて落慶供養をしたもので,天竺様建築の遺構として有名,安置する本尊阿弥陀三尊像は快慶作,ともに国宝。東大寺大仏の再興が完成したのちも陳和卿は当荘を私領化して寺家と対立して解任された。…
…開創は735年(天平7)東大寺良弁と伝える。1207年(承元1)解脱坊貞慶が笠置から移り中興した。現存する五重塔(国宝)は,14年(建保2)に塔内に仏舎利を安置した記録があるので,このころに完成したものとみられる。…
…1205年(元久2)10月,興福寺僧綱大法師らが提出した,法然の専修念仏を批判した奏状。実際の起草者は南都の碩学として聞こえた貞慶(じようけい)である。〈新宗を立つる失(誤り)〉以下,法然の教義を9ヵ条にわたって批判しているが,その内容は,王法と仏法とがあいよりあう下で,顕密八宗は共存すべきであるとの正統主義の立場から,法然の専修性を国土を乱す異端として排撃するものである。…
…弥勒のもとに生まれその化導を受けようとする兜率往生の信仰は古く,阿弥陀仏の浄土への往生との優劣が争われたこともある。兜率往生は,日本では鎌倉時代,貞慶(じようけい),明恵(みようえ)らによって説かれ,〈兜率天曼荼羅〉などの制作もなされた。【定方 晟】。…
※「貞慶」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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